12月末の期限に向けて、ふるさと納税の検討や寄附が本格化する10月後半を迎えました。
2026年7月31日に総務省が公表した「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和8年度実施)」によると、令和8年度課税で住民税の控除を受けた人は全国で約1151万人となり、前年度の約1081万人を上回って過去最多を更新しています。
ふるさと納税の利用者が増えるほど、住民が暮らす自治体に入る住民税が少なくなる、いわゆる流出が進む仕組みです。東京都の控除額は約2351億円で、都道府県別で最多でした。
この記事では総務省のデータを使い、東京都の全体像と、あなたの住む区・市の状況を見ていきます。
1. ふるさと納税の「住民税控除額」とは?全国で約9524億円、利用者は約1151万人
ふるさと納税は、自分で選んだ自治体に寄附をすると、寄附額のうち2000円を超える部分が一定の上限まで所得税と住民税から控除される制度です。総務省の調査でいう「住民税控除額」は、このうち住民税から差し引かれた額で、道府県民税と市町村民税の合計を指します。
同調査は、2025年1月から12月までの寄附について、令和8年度課税での控除の適用状況を2026年6月1日時点でまとめたものです。全国の住民税控除額は約9524億円、控除適用者数は約1151万人でした。前年度と比べると、控除額は約9.0%、適用者数は約6.5%増えています。
- 住民税控除額:約9524億円(前年度は約8741億円)
- 控除適用者数:約1151万人(前年度は約1081万人)
- ふるさと納税の受入額(令和7年度の決算見込):約1兆3314億円
2. 東京都の控除額はいくら?全国の約4分の1にあたる約2351億円
東京都の住民税控除額は約2351億円で、全国の約4分の1にあたり、都道府県別で最も多くなりました。控除適用者数は約212万人で、全国の2割弱を占めます。2位の神奈川県は約985億円、3位の大阪府は約749億円と、上位には人口の多い大都市圏が並びました。
たとえば東京都の場合、控除額約2351億円を控除適用者約212万人で割ると、1人あたり約11万1000円です。全国では約8万3000円ですので、東京都は平均を上回っています。
一方、東京都(都と区市町村の合計)が令和7年度に受け入れた寄附額は約162億円でした。控除額との差は約2189億円となりますが、受入額は令和7年4月から令和8年3月までの決算見込、控除額は令和7年中の寄附に対する課税分のため、期間は完全には一致しません。
- 1位 東京都:約2351億円(全国の24.7%、控除適用者2115010人)
- 2位 神奈川県:約985億円(全国の10.3%、控除適用者1106766人)
- 3位 大阪府:約749億円(全国の7.9%、控除適用者945281人)
- 4位 愛知県:約679億円(全国の7.1%、控除適用者820410人)
- 5位 埼玉県:約559億円(全国の5.9%、控除適用者726540人)
- 6位 千葉県:約528億円(全国の5.5%、控除適用者648123人)
- 7位 兵庫県:約446億円(全国の4.7%、控除適用者556810人)
- 8位 福岡県:約317億円(全国の3.3%、控除適用者426902人)
- 9位 北海道:約254億円(全国の2.7%、控除適用者368848人)
- 10位 静岡県:約207億円(全国の2.2%、控除適用者284044人)
3. あなたの住む区・市はいくら減った?東京23区は世田谷区が最多の134.4億円
区市町村ごとに見ると、都内で最も控除額が多いのは世田谷区の約134.4億円で、全国の市区町村でも5位でした。港区が約94.9億円で全国11位、大田区が約71.3億円で13位と続いています。全国で最も多いのは、横浜市の約373.3億円です。
なお、区市町村別の数字は区民税・市町村民税の分で、都民税分は含まれません。
1人あたりに直すと、見え方が変わるのも特徴です。港区は約16.0万円、千代田区は約12.8万円、渋谷区は約12.7万円で、23区の平均約7.1万円を大きく上回ります。所得の高い住民が多い区ほど、1人あたりの額が大きくなる傾向がうかがえる結果です。
23区が令和7年度に受け入れた寄附額は、合計で約119.6億円でした。控除額の合計約1154.7億円の、10分の1程度にとどまっています。
- 1位 世田谷区:134.4億円(控除適用者162769人、1人あたり約8.3万円)
- 2位 港区:94.9億円(控除適用者59486人、1人あたり約16.0万円)
- 3位 大田区:71.3億円(控除適用者122030人、1人あたり約5.8万円)
- 4位 江東区:66.9億円(控除適用者100444人、1人あたり約6.7万円)
- 5位 杉並区:65.1億円(控除適用者98857人、1人あたり約6.6万円)
- 6位 品川区:64.5億円(控除適用者87330人、1人あたり約7.4万円)
- 7位 練馬区:61.8億円(控除適用者111487人、1人あたり約5.5万円)
- 8位 渋谷区:59.6億円(控除適用者46759人、1人あたり約12.7万円)
- 9位 目黒区:52.0億円(控除適用者56456人、1人あたり約9.2万円)
- 10位 中央区:50.0億円(控除適用者49485人、1人あたり約10.1万円)
- 11位 新宿区:49.8億円(控除適用者60156人、1人あたり約8.3万円)
- 12位 文京区:47.6億円(控除適用者52603人、1人あたり約9.1万円)
- 13位 江戸川区:42.1億円(控除適用者84517人、1人あたり約5.0万円)
- 14位 板橋区:40.0億円(控除適用者80702人、1人あたり約5.0万円)
- 15位 足立区:36.7億円(控除適用者79817人、1人あたり約4.6万円)
- 16位 中野区:33.4億円(控除適用者56244人、1人あたり約5.9万円)
- 17位 豊島区:33.0億円(控除適用者49464人、1人あたり約6.7万円)
- 18位 北区:30.6億円(控除適用者57434人、1人あたり約5.3万円)
- 19位 墨田区:27.9億円(控除適用者53990人、1人あたり約5.2万円)
- 20位 葛飾区:26.3億円(控除適用者57108人、1人あたり約4.6万円)
- 21位 台東区:24.9億円(控除適用者40361人、1人あたり約6.2万円)
- 22位 千代田区:23.3億円(控除適用者18232人、1人あたり約12.8万円)
- 23位 荒川区:18.4億円(控除適用者33917人、1人あたり約5.4万円)
3.1 市部の控除額はいくら?八王子市と町田市が25億円前後
市部では、八王子市が約25.2億円、町田市が約24.7億円、調布市が約19.7億円、武蔵野市が約19.5億円の順です。武蔵野市は1人あたり約7.6万円と、市部では最も高くなりました。
- 1位 八王子市:25.2億円(控除適用者52985人、1人あたり約4.8万円)
- 2位 町田市:24.7億円(控除適用者48037人、1人あたり約5.1万円)
- 3位 調布市:19.7億円(控除適用者35452人、1人あたり約5.6万円)
- 4位 武蔵野市:19.5億円(控除適用者25676人、1人あたり約7.6万円)
- 5位 三鷹市:17.9億円(控除適用者28506人、1人あたり約6.3万円)
- 6位 府中市:16.5億円(控除適用者33527人、1人あたり約4.9万円)
- 7位 西東京市:13.5億円(控除適用者26488人、1人あたり約5.1万円)
- 8位 小平市:12.0億円(控除適用者24194人、1人あたり約5.0万円)
- 9位 国分寺市:11.7億円(控除適用者19754人、1人あたり約5.9万円)
- 10位 立川市:11.1億円(控除適用者22048人、1人あたり約5.0万円)
4. 控除額を読むときの注意点が3つあります
4.1 1つ目:控除額は寄附の翌年度に反映されます
総務省の調査では、令和7年中の寄附が、令和8年度課税の控除に反映されています。同じ仕組みでみると、2026年の年末までに行う寄附は、令和9年度の住民税から控除される計算です。
今回の調査結果は、足もとの寄附ではなく、1年前の寄附の結果を示しています。
4.2 2つ目:区市町村別の数字には都民税分が含まれません
東京都の控除額約2351億円の内訳は、区市町村民税の分が約1412億円、都民税の分が約938億円です。区市町村の分は、23区が約1155億円、26市が約256億円、町村が約2億円となっています。
このため、本記事の区市別の控除額を足しても、東京都全体の数字にはなりません。
4.3 3つ目:控除額にはワンストップ特例の分も含まれます
全国の控除額約9524億円のうち、ワンストップ特例制度の適用分は約3768億円で、約4割を占めます。適用者は約614万人で、控除適用者全体の53.3%です。東京都では、特例の適用分が約719億円で、都全体の控除額の約3割にあたります。
この制度を使うと、所得税から控除されるはずの額が、住民税から控除される仕組みです。確定申告をしなくても手続きが済む一方で、住民税側の控除額が大きくなる要因の一つとなっています。
5. 住民税が減ると私たちの生活はどうなる?寄附のお金の行き先も確認
住民税は、ごみの収集、道路や公園の維持、子育て支援や福祉など、暮らしに身近な行政サービスを支える、自治体の収入の一つです。控除額が増えれば、その分だけ自治体に入る住民税は少なくなります。ただし、減収がただちに特定のサービスの縮小につながるとは限りません。
一方、寄附を受けた側では、お金はどのように使われているのでしょうか。同調査によると、令和7年度の受入額約1兆3314億円のうち、自治体の財源として使えるのは約6932億円で、全体の52.1%です。
- 自治体の財源:約6932億円(52.1%)
- 返礼品の調達費:約3528億円(26.5%)
- 事務費等:約1809億円(13.6%)
- 送付・広報・決済費:約1045億円(7.9%)
寄附金の使い道では、選択できる分野のうち受入額が最も多かったのは、「子ども・子育て」の約1948億円でした。「地域・産業振興」が約995億円、「教育・人づくり」が約881億円で続く形です。
制度も見直されています。令和8年度税制改正では、寄附金のうち自治体が活用できる額の割合を60%以上とし、使途を公表することになりました。令和8年の指定から段階的に適用され、52.5%から始まって、令和11年の指定以降は60%となります。同調査では、受入額の実績と活用状況の両方を公表している団体が1521団体(指定団体の85.4%)でした。
6. まとめにかえて|自分の街の数字と寄附先の使い道を両方確認
令和8年度課税の控除適用者は約1151万人と過去最多になり、東京都の控除額は約2351億円に達しました。区別・市別に見ると、世田谷区の約134.4億円をはじめ、23区のすべてで10億円を超えています。
年内の寄附を考える際は、返礼品や控除の上限額に加えて、お住まいの区市の控除額と、寄附先の自治体が公表する使い道を見比べてみてはいかがでしょうか。制度の活用と地域の財政、どちらか一方だけでなく、両方を知っておくと、寄附先を選ぶ判断材料が増えます。