万が一のとき、火葬にどれだけ費用がかかり、どこで行えるのかを知らないまま不安を抱える方は少なくありません。

2026年3月31日に東京都保健医療局が公表した「火葬場の運営等に係る実態調査〈概況〉」によると、2024年度(令和6年度)の東京23区の火葬実績のうち、約84%を民営火葬場が担っていました。

公営と民営では、利用条件や料金の考え方が異なります。

2026年10月14日に開かれた東京都「火葬場に係る検討会」(第2回)の資料2「中間まとめに向けた論点整理案」でも、火葬需要の増加への対応と供給能力の確保が、論点の筆頭に挙げられました。東京都の公表資料などをもとに、事前に確認しておきたい要点を整理していきましょう。

1. 東京23区の火葬場は、公営と民営どちらが多い?

東京23区の火葬実績(2024年度・公営・民営別)1/4

東京23区の火葬実績(2024年度・公営・民営別)

出所:東京都保健医療局「火葬場の運営等に係る実態調査〈概況〉」(2026年3月)をもとにLIMO編集部作成

東京23区内には、現在9か所の火葬場があります。公営は東京都瑞江葬儀所と臨海斎場の2か所で、残る7か所は東京博善が運営する6斎場と戸田葬祭場という民営施設です。

同調査によると、2024年度の23区の火葬実績は10万7329件でした。そのうち民営火葬場が9万100件で全体の約84%を占め、公営火葬場は1万7229件で約16%にとどまります。

都内全体では15万1336件(公営4万9061件、民営10万2275件)で、これと比べても、23区は民営への依存度が高い構造です。

熊谷 良子

背景には歴史的な経緯があります。

2026年6月に設置された「火葬場に係る検討会」の第1回資料「火葬場の経営主体について」によると、民営火葬場は昭和23年の墓地、埋葬等に関する法律の施行以前から存在していました。
すでに旧法令の下で知事の許可を受けて営業していた施設が、同法の附則により許可を受けたものとみなされ、そのまま営業を認められたためです。

江戸時代には、寺院の境内などで火葬が行われていたことも示されています。

東京23区にある9か所の火葬場と、各火葬場の公式サイトに載る大人の火葬料金(2026年10月時点)は次のとおりです。

  • 東京都瑞江葬儀所(江戸川区・都営):東京都が運営。都内住民5万9600円、一般7万1520円
  • 臨海斎場(大田区・一部事務組合):港区・品川区・目黒区・大田区・世田谷区が運営。組合内住民4万4000円、一般8万8000円
  • 町屋斎場(荒川区・民営):東京博善が運営。8万7000円(普通炉)
  • 落合斎場(新宿区・民営):東京博善が運営。8万7000円(普通炉)
  • 代々幡斎場(渋谷区・民営):東京博善が運営。8万7000円(普通炉)
  • 四ツ木斎場(葛飾区・民営):東京博善が運営。8万7000円(普通炉)
  • 桐ヶ谷斎場(品川区・民営):東京博善が運営。8万7000円(普通炉)
  • 堀ノ内斎場(杉並区・民営):東京博善が運営。8万7000円(普通炉)
  • 戸田葬祭場(板橋区・民営):株式会社戸田葬祭場が運営。8万円(一般料金の最上等)

※料金は、2026年10月時点で各火葬場の公式サイトに掲載されている大人の火葬料金(東京博善は普通炉、戸田葬祭場は一般料金の最上等)です。

※東京都の調査(2025年9月末時点)の数値とは、時点の違いにご注意ください。収骨容器や待合室の料金、保管料などは、火葬料金に含まれる場合と含まれない場合があります。実際の利用にあたっては、依頼する葬儀社や各施設から見積もりの内訳を提示してもらい、確認してください。

2. 火葬料金はいくら?公営と民営の差は

火葬にかかる費用は、公営か民営かによって大きく開きがあります。

東京都公園協会の瑞江葬儀所「料金表」(2022年4月1日施行)では、都内住民が5万9600円、一般が7万1520円です。臨海斎場の公式サイト「使用料」(2023年4月1日改定)では、港区や品川区など5区の組合内住民が4万4000円、一般が8万8000円に設定されています。

民営は、東京博善の公式サイト「料金のご案内」で、6斎場とも普通炉の大人料金が8万7000円と表示されており、戸田葬祭場の公式サイト「料金のご案内」では、一般料金の最上等が大人8万円です。

たとえば民営の8万7000円と、瑞江葬儀所の都内住民料金5万9600円を比べると、差額は2万7400円になります。臨海斎場の組合内住民料金4万4000円と比べれば、差額は4万3000円です。

東京博善には、このほか特別室(12万3000円)や特別殯館(16万円)などの区分があり、四ツ木斎場には貴殯館(20万円)も用意されています。

東京都の調査(2025年9月末時点)では、東京博善の6斎場は9万円からとされていました。公式サイトの現在の表示(8万7000円)とは時点が異なります。提示されるプランの内容まで確認しておきましょう。

2.1 料金は上がってきた?

同調査によると、2022年4月から2025年9月までの間に、都内の民営火葬場8か所(23区内の7か所と、府中市の多磨葬祭場)すべてで料金改定が行われました。

戸田葬祭場は2022年4月に5万9000円から8万円へ、2万1000円の引き上げとなっています。東京博善の各斎場も、2024年6月に7万5000円から9万円へ、1万5000円引き上げました。

公営の臨海斎場でも、2023年4月に住民料金が4万円から4万4000円へ改定されています。

個別ヒアリングでは、火葬料金が物価や人件費などのコスト、近隣施設の料金水準を踏まえて設定されていることが示されました。

民営側からは、昨今の経済情勢を踏まえると今後の値上げは避けがたいとの認識の一方で、対応に苦慮しているとの声もあがっています。

3. 待ち時間は?混み具合の目安

東京23区の火葬場の稼働率と回転数(2024年度・公営・民営別)3/4

東京23区の火葬場の稼働率と回転数(2024年度・公営・民営別)

出所:東京都保健医療局「火葬場の運営等に係る実態調査〈概況〉」(2026年3月)、東京都保健医療局「東京の火葬場について」をもとにLIMO編集部作成

火葬場の混み具合を測る目安が、稼働率と回転数です。

働率は各火葬場が定める受入可能数に対する火葬件数の割合であり、回転数は1炉が1日に行う火葬の数を示します。

2024年度の区部の年間稼働率は、公営が87.8%、民営が56.0%という数字です。回転数は、公営が2.6、民営が3.7でした。

東京都保健医療局が公開している「東京の火葬場について」では、稼働率が高くなる冬場の申し込みから火葬までの日数は、2024年度で平均約8日とされています。

個別ヒアリングでは、公営はすでに稼働率が高く、住民以外を受け入れる余力が限られるとの説明がありました。民営は、現状では稼働率に余裕がみられるといいます。ただし、稼働率は受入可能数に対する使用割合であり、待ち日数そのものを示す数値ではない点に注意が必要です。

待つ間は、ご遺体の保管費用がかかる場合があります。瑞江葬儀所の柩保管料は24時間以内で8210円(都民料金)、臨海斎場は24時間ごとに3000円(組合内住民料金)です。

東京博善の各斎場では、一般保棺が1日8800円、冷蔵保棺が1日1万3200円とされています。待ち日数が延びれば、その分の保管費用も見込んでおくことが大切です。ただし、安置の場所や方法は、葬儀社の手配などによって異なります。

熊谷 良子

「公営は安くて民営は高い」という画一的なイメージだけで判断するのは、早計かもしれません。公営でも、指定された地域に住んでいない方が利用すると一般料金が適用され、民営と同じ水準になる場合があります。臨海斎場では、一般料金は住民料金のちょうど2倍にあたる8万8000円です。

実際に、臨海斎場の利用者のうち構成する5区に住んでいた方は、2024年度で88.6%を占めていました。住民料金の枠組みが、日々の利用を支えている様子がうかがえます。

また、火葬料金の額面だけでは、総額は見えてきません。待合室の利用料や収骨容器の代金が含まれるかどうかで、実際の支払いは変わってきます。金額の大小に目を奪われず、必要なサービスがどこまで含まれているのかを確かめてみてください。

 

4. 事前に確認したいポイントが3つあります

1つ目は、火葬料金に含まれる範囲です。同調査によると、待合室の利用料や収骨容器の代金は、火葬料金に含まれる場合と含まれない場合があります。

東京博善の町屋斎場の例では、待合室料が1万9800円から7万4800円、ご遺体の保管費用にあたる保棺料が1日あたり8800円から1万3200円と設定されていました。骨つぼなどの収骨容器も、2530円から59万8000円まで幅広く用意されています。

一方、戸田葬祭場では、一般料金に標準の収骨容器が含まれ、待合室は1席990円です。公営にも違いがあります。臨海斎場の「使用料」では、骨壺などの収骨容器は無料で、待合室は港区・品川区・目黒区・大田区・世田谷区の住民で2万円です。

瑞江葬儀所の「料金表」では、白壺7号の骨壺が8700円、控室が1室1万200円、柩保管が24時間以内で8210円と、都民料金のもとで別に設定されています。

火葬料金の金額だけで総額を判断せず、必要な内訳を事前に確かめておくとよいでしょう。

2つ目は、公営火葬場で住民料金が使えるかどうかです。公営は、対象地域に住んでいるかどうかで料金が大きく変わります。臨海斎場では、構成する5区の住民が4万4000円、それ以外の地域の方は8万8000円という設定でした。

ここで見落としやすいのは、故人本人の住所だけでなく、火葬や葬儀の主宰者の住所で判断される規定があるという点です。

臨海斎場では、主宰者(2親等以内)が組合内の住民であれば、故人が区域外に住んでいても住民料金が認められます。

都営の瑞江葬儀所でも、死亡した方または申請者のどちらかの住所が都内にあれば、都民料金の対象です。施設ごとの条件を事前に確かめておくことが、予期せぬ負担増を防ぐ手立てとなるでしょう。

3つ目は、自治体の助成制度と医療保険の給付です。

東京博善が運営する斎場では、2026年3月31日をもって従来の区民葬儀の取り扱いを終えています。これに伴い、特別区では2026年4月から、指定する民間火葬場(町屋・落合・代々幡・四ツ木・桐ヶ谷・堀ノ内の6斎場)を利用した区民葬儀の利用者を対象に、23区共通の助成制度がスタートしました。

区民葬儀助成金は、区民葬儀の祭壇(棺のみの利用を含む)または霊柩車を1つ以上利用し、最も低廉な火葬料金(8万7000円)を負担するなど、複数の条件を満たすことが必要です。祭壇も霊柩車も利用しない場合や、特別室などの区分を選んだ場合は、対象外となる可能性があります。詳細は事前に、お住まいの区の担当窓口へご確認ください。

あわせて、医療保険から支給される葬祭費や埋葬料も確認しておきたい給付です。

国民健康保険や後期高齢者医療制度の葬祭費は、運営主体ごとに金額や手続きが異なる場合があります。一方、全国健康保険協会の公式サイト「埋葬料・埋葬費」によると、協会けんぽの被保険者が業務外の事由で亡くなった場合、生計を維持されていた方の申請で埋葬料5万円が支給される仕組みです。ご自身が加入する保険の窓口を把握し、申請の手順を整えておきましょう。

5. 東京の火葬、今後どうなる?公的資料で見る見通し

「火葬場の運営等に係る実態調査〈概況〉」によると、都全体の年間死亡者数は2065年頃に約20万人となる見通しです。東京都の「人口の動き(2025年中)」によると、2025年中の死亡数は14万428人で、見通しの数値はその約1.4倍にあたります。

東京都保健医療局の「東京の火葬場について」では、既存の火葬場を現在と同程度に稼働させた場合(年間約16万件)、2035年頃に需給がひっ迫するとの試算です。

亡くなる方が多い冬季は、全施設が最大限稼働しても2040年頃にひっ迫する見込みで、火葬までの待ち日数が今より長くなる可能性も指摘されています。

こうした見通しを受けて、公営施設では増強が進む状況です。

東京都建設局の「東京都瑞江葬儀所 新施設の供用開始について」によると、建て替えられた瑞江葬儀所の新施設は2026年6月1日に供用を開始し、同日から友引日の火葬も受け入れ始めました。受入可能件数は年間1万500件(1日30件)です。

検討会第2回の資料2によると、瑞江葬儀所は友引日の休館見直しや稼働時間の延長により、年間最大稼働数を7500件から1万500件へ約40%拡大しています。臨海斎場も、2030年度に火葬炉を10炉から20炉(うち予備1炉)へ増やし、年間最大稼働数を1万2250件から1万9950件へ引き上げる予定です。

東京都は2026年6月に「火葬場に係る検討会」を設置しました。火葬能力の確保や民間火葬場への行政の関与のあり方などを議論しており、2026年度末を目途に検討結果をまとめる方針です。

6. まとめにかえて|火葬に備えて、今から確認できること

もしものときに慌てず対応できるよう、日頃から確認しておきたい手順を4つに整理しておきましょう。

  • 利用できる公営火葬場を把握する:自宅や親族の住所で住民料金が使える公営施設があるか、確かめておきます。
  • 料金に含まれるサービスの内訳を調べる:待合室や収骨容器、保棺料などの追加費用も見込んでおくと安心です。
  • 自治体の助成制度や申請窓口を調べる:23区共通の助成制度や、医療保険の葬祭費・埋葬料について、区の窓口などで確認しましょう。
  • 葬儀社へ希望する日程や施設を相談する:火葬場の空き状況や搬送の手順については、専門の業者に早めに相談しておくと安心です。

事前に知識を得ておくことが、いざというときの冷静な判断を支える土台となるでしょう。

熊谷 良子

ご家族やご自身の将来について、元気なうちに話し合っておくことが何より大切です。火葬場の仕組みや費用の内訳は複雑に見えますが、概要を知っておくだけでも気持ちにゆとりが生まれます。

今回ご紹介した公営施設の利用条件や自治体の助成制度のように、身近な情報から確かめてみてください。区民葬儀の助成制度は2026年4月に始まったばかりで、案内の細部は区ごとに異なる場合もあります。お住まいの区の窓口や、相談しやすい葬儀社を早めに見つけておくだけでも、心づもりは大きく変わるでしょう。

手続きや費用の話題は、いざというときには切り出しにくいものです。だからこそ、いまのうちに少しずつ情報を集めておくことが、万が一の際に悔いを残さない備えとなるでしょう。

参考資料

【免責事項・記事のご利用にあたって】
本記事は、東京都保健医療局「火葬場の運営等に係る実態調査〈概況〉」(2026年3月公表)および各自治体・各施設の公表資料(2026年10月時点)をもとに作成したものです。火葬料金、各種助成制度の適用条件、空き状況などは変更される場合があります。個別の手続きや実際の費用負担にあたっては、必ずお住まいの自治体窓口、関係施設、または専門の葬祭業者へ直接ご確認ください。