そんな過密スケジュールでは、七五三の主役である娘に疲れがたまってしまうと危惧したS子は全力で阻止。「遠くから来てくれるのに疲れさせるだけ」「娘が体調崩したら七五三自体が延期になる」と説得し、食い下がる旦那さんを何とか説き伏せました。

普段とはまるで別人のような旦那さんの言動の理由を、S子は見つけようとしました。すると、思い当たる出来事が1つだけあったのです。

S子が幼かった頃の七五三の写真を見せ、娘と似ているか比べっこしたことがありました。「俺の七五三よりも豪華だな」と呟いた旦那さんに、S子は「お父さんが仕事で利用している料亭で食事をしたみたい」と何気なく返しました。彼女にその七五三の記憶は全く残っていないそうですが、旦那さんの心にはグサッと刺さったのでしょう。

S子の父は大企業に勤め、それなりのポストに上りつめた人でした。方やS子の旦那さんは、そこまでの有名企業に勤めているわけではありません。「大切な娘と孫がどんな生活をしているのかお父さんは気になるのでは」と勝手に不安を感じ出したのではないかとS子は推測しました。

見栄を張るくらいなら呼ばない方がまし?

いざ両親が来訪すると和やかな雰囲気で過ごしたそうですが、娘一家の生活水準を気にする素振りのない父と、良い暮らしを匂わす旦那さんとの差が滑稽だったとS子は打ち明けてくれました。

旦那さんが張り切って予約をした敷居の高い料亭も、七五三の食事会で利用をしているのはS子一家だけ。小さい子を連れて格式ある店に行くのが冷や汗ものなのはもちろん、借りている着物を汚さないかハラハラしながらの食事では、せっかくの味を堪能することはできなかったそうです。

S子はお母さんと2人だけになったときに、「もう少し子供連れでも大丈夫なお店はなかったの?」と言われ、旦那さんの行動を口にしそうなのを必死に堪えたと教えてくれました。

七五三が無事に終わり、旦那さんが用意した高級和菓子のお土産を手に両親が帰った後、「メインは娘なのだから、子供主体で考えることが大切」とS子は旦那さんに訴えました。すると旦那さんは、「お義父さんとお義母さんに色々と心配かけさせたくないから」「俺もこれぐらいのことはできる」と反論してきたといいます。

旦那さんの見栄で無駄な出費が続いた七五三に呆れてしまったというS子。これを教訓に、孫に会わせるならS子自ら娘と実家に行くことにし、家に招くのをやめたそうです。旦那さんは時折、「泊まりに来てもらったら?」と提案してくるそうですが、七五三の悪夢を思い、S子はその申し出を頑なに拒否しています。

夫の実親への対応次第で楽に過ごせるとは言い切れない

子供のイベントに実親が参加してくれると、妻側は気楽に過ごせるので嬉しいですが、夫が自分の両親に対して過剰な接待をすると、家計にも響くので考えものです。また、両親へのおもてなしに力を入れてしまうと、主役であるはずの子供が置き去りにされてしまいます。

足を運んでくれる両親をもてなすのも大切ですが、孫の成長を一緒に祝う姿勢が何よりも祖父母が喜ぶことではないでしょうか。

中山 まち子