冬のボーナスの時期が近づくと、自分の賞与は多いのか少ないのか、気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。国税庁が2026年9月に公表した「令和7年分民間給与実態統計調査結果について」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の1年間の平均賞与は、正社員(正職員)が102万円、正社員(正職員)以外(パート・アルバイトなど)が12万円でした。

ただし、これは冬のボーナス1回分ではなく、1年間に支払われた賞与の平均です。業種別に見ると、最も高い金融業,保険業と最も低い宿泊業,飲食サービス業とでは約10倍の差があります。賞与の実態をどう読み解くか、国税庁のデータをもとに整理しました。

1. そもそも国税庁の「平均賞与」とは? 冬のボーナス額とは別物です

同調査は、民間の事業所における年間の給与の実態を明らかにする国税庁の統計調査で、サンプル調査(標本調査)として実施されています。官公庁に勤める人は対象に含まれません。

集計の対象は「1年を通じて勤務した給与所得者」で、1月から12月まで引き続き勤務し、給与の支給を受けた月数が12か月の人を指します。ここでいう給与は、1年間の支給総額(給料・手当と賞与の合計)です。賞与も1年間の合計額で集計されており、冬のボーナス1回分の金額とは一致しません。

雇用形態の区分は次の2つです。正社員(正職員)は、役員と青色専従者を除き、就業規則などの雇用管理上で正社員として処遇している人を指します。正社員(正職員)以外(パート・アルバイトなど)は、役員と青色専従者を除き、正社員として処遇していない人が対象です。以下では「正社員以外」と略して表記します。

全体の平均賞与は75万円で、男女別では男性が96万円、女性が47万円でした。

2. 正社員の賞与は102万円、パート・アルバイトなどは12万円 どれだけ違う?

正社員・正社員以外の賞与・給料手当・平均給与(令和7年分)1/4

正社員・正社員以外の賞与・給料手当・平均給与(令和7年分)

出所:国税庁「令和7年分民間給与実態統計調査結果について」をもとにLIMO編集部作成

令和7年分の1人当たり平均を雇用形態別に見ると、正社員の賞与は102万円、正社員以外は12万円という結果です。差は約90万円で、正社員は正社員以外の約8.5倍にあたります(万円単位の数値から計算した編集部試算です)。

  • 正社員(正職員):給料・手当457万円、賞与102万円、平均給与559万円
  • 正社員(正職員)以外:給料・手当198万円、賞与12万円、平均給与210万円

たとえば正社員の場合、平均給与559万円のうち賞与は102万円で、年間給与に占める賞与の割合は約18.2%です。一方、正社員以外では平均給与210万円のうち賞与が12万円で、割合は約5.7%にとどまります(いずれも編集部試算)。

2.1 賞与の推移は? 令和4〜7年分の4年間で見ると

令和4年分から7年分までの4年間で見ると、正社員の賞与は97万円、98万円、101万円、102万円と増えてきました。正社員以外は13万円、12万円、12万円、12万円で、ほぼ横ばいです。令和7年分の正社員の賞与は、前年から1.2%の増加でした(増加率は丸める前の数値によるため、万円単位の表示から計算した値とは一致しない場合があります)。

  • 正社員(正職員):令和4年分97万円→5年分98万円→6年分101万円→7年分102万円
  • 正社員(正職員)以外:令和4年分13万円→5年分12万円→6年分12万円→7年分12万円

3. 業種別の平均賞与は? 最高と最低で約10倍の差があります

業種別の平均賞与(令和7年分)3/4

業種別の平均賞与(令和7年分)

出所:国税庁「令和7年分民間給与実態統計調査結果について」をもとにLIMO編集部作成

令和7年分の業種別(14業種)の平均賞与は、最も高い金融業,保険業が173万1000円、最も低い宿泊業,飲食サービス業が16万8000円です。差は約156万円で、最高は最低の約10倍です(編集部試算)。

  • 金融業,保険業:173万1000円
  • 電気・ガス・熱供給・水道業:163万8000円
  • 情報通信業:124万3000円
  • 製造業:111万9000円
  • 複合サービス事業:100万1000円
  • 学術研究,専門・技術サービス業,教育,学習支援業:99万8000円
  • 建設業:86万8000円
  • 不動産業,物品賃貸業:68万3000円
  • 運輸業,郵便業:59万8000円
  • 卸売業,小売業:57万9000円
  • 農林水産・鉱業:53万7000円
  • 医療,福祉:52万9000円
  • サービス業:45万9000円
  • 宿泊業,飲食サービス業:16万8000円

業種別の数値は、役員や正社員以外を含む全体の平均です。先にみた正社員の102万円とは対象が異なるため、大小を単純に比べることはできません。

参考までに、同じく最高の業種を最低の業種で割ると、令和5年分は約9.2倍、令和6年分は約9.5倍でした。令和7年分は約10.3倍と、差が広がっています。ただし最高の業種は年度によって入れ替わるため、同じ業種どうしの比較ではありません。

監修者
熊谷 良子

平均値という言葉には、「ちょうど真ん中の金額」という印象がつきまといます。ところが実際には、一部に高い金額の人がいれば平均は引き上げられ、賞与が出ていない人が含まれていれば平均は下がる、というしくみです。

平均はあくまで全体をならした目安であり、自分の立ち位置をそのまま示す数字ではありません。

今回の平均賞与も同様です。年間の合計額の平均であって、冬の1回分の金額を表すものではなく、賞与が出る人の相場を示すものでもありません。

同じ業種であっても、会社の規模や雇用契約の内容、評価のしくみによって水準は変わると考えられます。そのため平均賞与は、全体像をつかむための入り口と考えるのがよいでしょう。

統計の数字を見るときは、「何の平均なのか」「誰が含まれているのか」「1年分なのか1回分なのか」の3点を確かめる習慣をつけておくと、数字に振り回されにくくなります。

4. 賞与の平均を読むときの注意点が3つあります

4.1 1. 平均賞与には「賞与が出ていない人」も含まれている可能性があります

国税庁の調査結果報告では、平均給与は給与支給総額を給与所得者数で割った値と定義されています。平均賞与の分母については、確認できた範囲で明記が見つかっていません。賞与が支給されていない人も含めた平均である可能性が高いと考えられますが、断定はできないところです。そのため、102万円や12万円は「賞与をもらえる人の相場」ではありません。

4.2 2. 年間の合計額であり、冬のボーナス1回分ではありません

本調査の賞与は、1年間に支払われた額の平均です。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」などをもとにした冬のボーナスの金額や予測とは、調査の対象や集計の方法が異なります。数字の大小を並べて比べることはできません。

4.3 3. 業種別の数値は、正社員以外や役員を含む全体の平均です

業種別の平均賞与は、正社員以外や役員も含めた全体の平均です。業種ごとに雇用形態の構成が異なれば平均も動くため、業種間の差のすべてが正社員の待遇の違いによるとは言い切れません。業種別の雇用形態の構成比は本調査から確認できていないため、あくまで可能性としてお考えください。

加えて見落としやすいのが、「正社員の102万円」と「業種別の平均賞与」は対象が異なる点です。前者は役員を除いた正社員だけの平均、後者は役員と正社員以外を含む全体の平均のため、「正社員の102万円より高い業種」「低い業種」といった比べ方はできません。

5. 賞与の格差は、給料・手当や平均給与より大きい

正社員と正社員以外の差・業種別の賞与の比重(令和7年分)4/4

正社員と正社員以外の差・業種別の賞与の比重(令和7年分)

出所:国税庁「令和7年分民間給与実態統計調査結果について」をもとにLIMO編集部試算

同じ調査・同じ年・同じ区分で、正社員と正社員以外を比べてみましょう。差の大きさは項目ごとに違います。

  • 給料・手当:457万円÷198万円で約2.3倍
  • 平均給与:559万円÷210万円で約2.7倍
  • 賞与:102万円÷12万円で約8.5倍

賞与は、給料・手当や平均給与に比べて、雇用形態による差が大きい項目です。賞与額の差でも、令和4年分は84万円(97万円−13万円)、令和7年分は90万円(102万円−12万円)と、4年間で6万円広がりました。いずれも万円単位に丸めた数値から計算した概算のため、実際の数値とは多少ずれがあります。

5.1 業種によって、年間給与に占める賞与の割合は大きく異なる

業種別に賞与を平均給与で割ると、金融業,保険業は1731千円÷7256千円で約23.9%、宿泊業,飲食サービス業は168千円÷2758千円で約6.1%でした。金融業,保険業では年間給与の4分の1近くが賞与である一方、宿泊業,飲食サービス業では1割に届きません。

なお、本記事の「年間給与に占める賞与の割合」は賞与を平均給与で割ったもので、賞与を給料・手当で割る方法とは計算が異なります。年収を比べるときは、月々の給料だけでなく賞与の有無や水準まで見ておかないと、実態を取り違えかねません。

6. まとめにかえて|冬のボーナス前に、自分の賞与の条件を確認しましょう

国税庁の令和7年分の調査では、1年間の平均賞与は正社員が102万円、正社員以外が12万円で、業種別でも最高と最低で約10倍の差がありました。ただし、いずれも年間の平均であり、冬のボーナス1回分の額を示す数字ではありません。

賞与の有無や金額、算定の期間、支給の時期は、勤め先によって異なります。雇用契約書や労働条件通知書、就業規則などの書面で確認し、不明な点や規定の解釈については、勤め先の人事・総務などの担当部署にご確認ください。

監修者
熊谷 良子

冬のボーナスの時期は、普段は意識しにくい自分の働き方や収入のしくみを見直す好機でもあります。

金額の大小に一喜一憂するよりも、どんな条件で支給されるのか、いつの期間の働きが対象になるのかを知っておくほうが、これからの家計を考えやすくなるはずです。まずは現状を知ることが、準備の第一歩となるでしょう。

賞与があてにできる場合もそうでない場合も、年間の収入の見通しが立てば、貯蓄や支出の計画に余裕が生まれます。賞与を前提にした支出を決める前に、月々の収入だけで暮らしが成り立つかを確かめておくと、気持ちの面でも安心感が変わってくるでしょう。

無理のない範囲で、できることから始めてみてください。

参考資料

池上 翠