5. 罰則の対象は通帳だけではない。キャッシュカードやネットバンキングのIDとパスワードも
「通帳さえ渡さなければよい」と考えるのは誤りです。警察庁の啓発ポスターは、罰則の対象となる金融サービスの例を次のように挙げています。
5.1 対象になる金融サービスの例は3つ
- 預貯金通帳等:通帳・キャッシュカード、IDやパスワード等
- 暗号資産交換用情報:金融庁・財務局の登録を受けた事業者のウォレットのIDやパスワード等
- その他:高額電子移転可能型前払式支払手段の取引ができるIDやパスワード等、ステーブルコインの取引ができるアカウントのIDやパスワード等
インターネットバンキングのIDとパスワードを教えるだけでも、他人が自分になりすまして口座を使えるようになります。通帳やカードを手渡すのと同じことになると考えておく必要があります。
5.2 家族や知人に頼まれた場合も、口座を使わせる前に立ち止まる
罰則は、知らない人に売る場合だけを想定したものではありません。年次報告書が説明するとおり、無償の譲り渡しも対象になりえます。身近な人に「少しの間だけ口座を貸してほしい」と頼まれても、通帳やカード、IDとパスワードは渡さないのが原則です。
6. 口座を売ると、ほかの金融機関でも口座の開設や利用ができなくなる場合がある
警察庁のポスターは、口座を売った場合について「他の金融機関でも口座の開設や利用ができなくなる場合があります」と注意を促しています。
6.1 給与の受け取りや公共料金の引き落としにも関わる
口座が使えなくなると、給与の受け取りや公共料金・クレジットカードの引き落とし、家賃の振込など、暮らしのお金の流れが止まります。罰則に加えて、その後の生活への影響が大きいことも知っておきたい点です。
6.2 2027年6月までに、警察が「架空名義口座」を使う措置も始まる
改正では、警察が金融機関などの協力を得て「架空名義口座」を開設し、口座売買を勧誘する者に譲渡するなどしたうえで、入金された財産の送金を防ぐ措置も設けられました。入金された財産は原則として被害者などに返還されます。施行は、公布の日(2026年6月10日)から1年を超えない範囲で政令で定める日です。
7. 使わなくなった預金口座は人に渡さず、残高を移して解約しておく
引っ越しや転職のたびに口座が増え、どこに何があるか分からなくなっている方もいるでしょう。使っていない口座は、人に渡す前に自分で整理しておくことが大切です。
7.1 引き落としに使われていないかを確かめてから解約する
解約の前に、通帳の記帳やインターネットバンキングの明細で、公共料金や保険料の引き落とし、給与の振込に使われていないかを確かめます。使われていなければ、残高を普段使う口座に移してから解約の手続きをします。
7.2 誘いを受けたら、口座の金融機関や警察相談専用電話「#9110」に相談する
「口座を売ってほしい」「送金を手伝ってほしい」と誘われたら、応じずに口座のある金融機関や警察に相談します。緊急でない相談は、警察相談専用電話「#9110」につながります。すでに通帳やカードを渡してしまった場合は、すぐに金融機関に連絡して口座を止めてもらうことが先決です。
8. まとめ
改正された犯罪収益移転防止法により、2026年7月10日から、預貯金通帳等を売る・譲る・買う行為の罰則は「3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」に、業として行う場合は「5年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金」に引き上げられました。送金バイトを依頼する側と引き受ける側にも、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科されます。
2025年の検挙件数は4699件と、2021年の約1.9倍に増えています。通帳やキャッシュカードだけでなく、IDやパスワードも人に渡さないこと、使わなくなった口座は自分で整理しておくことが、口座を守ることにつながります。
参考資料
- 警察庁「令和8年犯罪収益移転防止法の改正について」
- 警察庁「犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律案(概要)」
- 警察庁「犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律案(案文・理由)」
- 警察庁「預貯金通帳等の不正譲渡等の罰則引上げ」(ポスター)
- 警察庁「犯罪収益移転防止に関する年次報告書(令和7年)」
- 政府広報オンライン「警察に対する相談は警察相談専用電話「#9110」番へ」
和田 直子