厚生労働省が2026年7月15日に公表した令和7年度の状況では、精神障害の労災請求は4958件で、前年度より1178件増えました。請求が増えるなか、休業補償給付を請求する書類についても、手順を確認しておきたいところです。

仕事中のケガや病気で休むことになったとき、「休業補償給付の請求書を、どう書けばよいのか」と手が止まる方もいるでしょう。請求書には、勤め先や医療機関の証明が必要な欄があり、提出の順番で迷いやすくなります。

この記事では、前半でこの疑問に、厚生労働省と労働局の公式情報(2026年10月時点)で答えます。後半では、請求書の種類、請求のタイミング、事業主の証明が必要な場面、支給額の概算を順に確認します。個別の判断は、労働基準監督署に確認してください。

1. 労災の休業補償、2回目の請求の前に会社を辞めた。会社の証明はまた要る?辞めても請求できる?

「仕事中のケガで休んでいます。1回目の休業補償は、会社が書類を作ってくれました。2回目の請求の前に会社を辞めることになり、また頭を下げて証明をもらうのかと思うと、気が重いです。辞めたあとも請求できますか。書類は、自分でどう書けばよいのでしょうか」。

この疑問は、一人の事情に見えますが、同じ仕組みは、労災で休む人にも当てはまりえます。答えは、次の3点です。

  • 事業主の証明は、初回の請求で必要です。2回目以降で離職後の場合は、請求する期間がすべて離職後なら、原則不要です
  • 請求する期間に離職前を含む場合は、事業主の証明が必要です。「離職後かどうか」だけでなく、「請求する休業期間がいつのものか」で変わります
  • 請求書は、業務災害なら様式第8号、通勤災害なら様式第16号の6です。休業の4日目から対象になり、時効は休業した日ごとにその翌日から2年です

2. 休業補償給付で事業主の証明は必要?初回や離職後など4つの場合を厚生労働省の資料で確認

読者の方が気にしそうな「もし」を、厚生労働省の資料で確認します。いずれも、ご自身の請求が認められるかを予測するものではありません。

  • もし、初めての請求なら:事業主の証明が必要です
  • もし、離職後の2回目以降で、請求する期間がすべて離職後なら:事業主の証明は、原則不要です
  • もし、請求する期間に離職前を含むなら:事業主の証明が必要です
  • もし、一部だけ働いた日があるなら:別紙2を添付します

ここからは、この答えの前提になる手続きを順に確認します。請求書の種類、請求のタイミング、事業主の証明、一部だけ働いた日の扱い、支給額の概算、時効の順です。

3. 休業補償給付の請求書は「様式第8号」と「様式第16号の6」の2種類

休業補償給付の請求書には、災害の種類によって2つの様式があります。業務災害の場合は「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」、通勤災害の場合は「休業給付支給請求書(様式第16号の6)」を使います。

提出先は、所轄の労働基準監督署です。厚生労働省は、業務上または通勤による負傷や疾病による療養のため労働することができず、賃金を受けていない場合に、休業の第4日目から給付が支給されるとしています。

つまり、休業した最初の3日間は労災保険からは支給されず、4日目以降の分から請求の対象になります。請求書に書く休業の期間も、この4日目以降を意識して整理しておくと、書き間違いを防ぎやすくなります。

なお、労災として認められるかどうかは労働基準監督署が判断します。請求書を出せば自動的に支給されるわけではないため、個別の事情については、所轄の労働基準監督署に確認してください。支給要件そのものを詳しく知りたい方は、労災保険「休業補償給付」の支給要件と給付基礎日額の計算方法もあわせてご覧ください。

4. 請求のタイミング:一括でも分割でも、長期なら1か月ごとが便利

和歌山労働局の案内によると、休業した全日数分を一括して請求するか、何回かに分けて請求するかは自由です。ただし、休業が長期にわたる場合は、1か月ごとに請求するのが便利とされています。

1か月ごとの請求が便利とされる理由は、公式資料に明記されていませんが、区切りを短くすれば最初の分から順に請求でき、収入が途絶える期間を短くしやすいためと考えられます。療養が数か月に及ぶ場合、まとめて請求する方法では、最初の分の入金が後ろにずれる可能性があります。

後ほど詳しく見るように、請求権には時効があります。分割して請求する場合は、請求を後回しにした分から順に、期限が近づいていくことになります。

齊藤 慧
療養中は体調が優先で、書類のことまで気が回らない時期だと思います。ただ、請求書は「まとめて書く」より「月ごとに区切る」ほうが、記入する量も、抱える不安も軽くなります。無理のない範囲で、月末を区切りにして進めてみてください。

5. 事業主の証明が必要な請求と、不要になる請求

請求書には、賃金を受けていないことなどについて、事業主(勤め先)の証明を受ける欄があります。和歌山労働局は、初回の請求では事業主による証明が必要としています。

一方、2回目以降の請求が離職後である場合は、原則として事業主による請求書への証明は必要ありません。ただし、その請求で対象とする療養の期間の全部または一部が離職前に係る場合は、離職後であっても証明が必要です。

ここで注意したいのは、「離職後の請求かどうか」だけでなく、「請求する休業期間がいつのものか」も判断に関わる点です。退職後に請求する場合でも、退職前の期間を含むと、事業主の証明が必要になります。

5.1 【請求書への事業主の証明が必要かどうか】

前提条件:和歌山労働局公表の休業(補償)給付支給請求書の取り扱い(2026年9月時点)1/2

前提条件:和歌山労働局公表の休業(補償)給付支給請求書の取り扱い(2026年9月時点)

出所:和歌山労働局「休業(補償)給付支給請求書(8号、16号の6)」などを基にLIMO編集部作成

  • 初回の請求の場合:事業主の証明は必要です
  • 2回目以降で離職後、請求する期間がすべて離職後の場合:事業主の証明は原則として必要ありません
  • 2回目以降で離職後、請求する期間に離職前を含む場合:事業主の証明は必要です

6. 一部だけ働いた日があるときは「別紙2」を添付する

療養中でも、所定労働時間の一部だけ働いた日がある場合があります。和歌山労働局は、賃金を受けなかった日のうちに、業務上の負傷や疾病による療養のため所定労働時間の一部について労働した日が含まれる場合、様式第8号または第16号の6の別紙2を添付するとしています。

この日の給付額は、通常の日とは計算が異なります。厚生労働省のQ&Aによると、その日の給付基礎日額から、実際に働いた分として支払われた賃金の額を差し引いた額の80%が支給されます。

たとえば、半日だけ出勤して賃金が支払われた日は、その分が差し引かれた額を基準に計算されることになります。一部でも働いた日がある場合は、その日を含めて別紙2で申告することが前提です。

月給20万円で給付基礎日額が6522円の人が、ある日に2000円の賃金を受け取った場合を考えます。給付基礎日額から2000円を差し引いた4522円の80%にあたる、3617円がその日の給付額の目安です。

働いた日は給付額が減るため、無理に出勤すると受取額がかえって少なくなる場面もあります。復職の時期や勤務時間は、主治医の意見や職場の事情もふまえて、労働基準監督署に相談しながら判断してください。

7. 請求書を出す前に、支給額を自分で概算しておく

請求書を書く前に、おおよその支給額を知っておくと、生活費の見通しが立てやすくなります。厚生労働省は、休業1日につき、給付基礎日額の60%の保険給付に、休業特別支給金20%が上乗せされ、合計で80%が支給されるとしています。

給付基礎日額は、原則として、事故発生日の直前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った額です。臨時的に支払われた賃金や、3か月を超える期間ごとに支払われる賞与などは含まれません。

端数の処理にも決まりがあります。給付基礎日額の1円未満は1円に切り上げ、保険給付と特別支給金は、それぞれ1円未満を切り捨てます。厚生労働省の計算例は、月給20万円で暦日数92日の場合、給付基礎日額が6522円、保険給付が3913円、特別支給金が1304円、合計で1日あたり5217円です。

8. 月給別の試算:20万円・30万円・40万円で30日間休業した場合

ここでは、厚生労働省の計算例と同じ方法で、月給別の受取額を試算します。直前3か月の賃金が毎月同じ月給で、暦日数が92日、賞与などはなく、30日間連続して休業して賃金を受けなかった月を想定します。

休業の1日目から3日目までは労災保険から支給されないため、4日目から30日目までの27日分が対象です。月給と日数さえ分かれば、おおよその金額は概算できます。

8.1 【月給別の休業補償給付と休業特別支給金の試算】

前提条件:直前3か月の暦日数92日・月給は毎月同額・賞与なし・4日目から30日目までの27日分・厚生労働省Q&Aの端数処理で試算2/2

前提条件:直前3か月の歴日数92日・月給は毎月同額・賞与なし・4日目から30日目までの27日分・厚生労働省Q&Aの端数処理で試算

出所:厚生労働省「休業補償給付・休業特別支給金の計算について」の計算方法を基にLIMO編集部試算

  • 月給20万円の場合:給付基礎日額は6522円、1日の合計額は5217円、対象期間の合計額は14万859円です
  • 月給30万円の場合:給付基礎日額は9783円、1日の合計額は7825円、対象期間の合計額は21万1275円です
  • 月給40万円の場合:給付基礎日額は1万3044円、1日の合計額は1万434円、対象期間の合計額は28万1718円です

月給20万円の場合、27日分は14万859円で、月給の約7割にあたります。3日間の待機期間があるため、休業した月の受取額は、月給の8割にも届きません。

この試算は、あくまで前提を置いた目安です。実際の給付基礎日額は、事業主が証明する賃金の額や、休業の日数、一部労働の有無で変わります。最終的な金額は、労働基準監督署の決定によります。

齊藤 慧
「8割もらえる」と聞くと、休んだ月も月給の8割が入るように感じます。ただ、最初の3日間が対象外なので、初月の受取額は思ったより少なく見えるかもしれません。家計の見通しを立てるときは、この点を織り込んでおくと安心です。

9. 【編集者の視点】

請求書の書き方を調べる人の多くは、記入欄そのものより、「いくら入るのか」「いつ入るのか」に不安を抱えています。書類の書き方と支給額の目安を同時に押さえておくと、提出の順番や生活費の見通しを立てやすくなります。

特に、初月は最初の3日間が対象外になる点と、月ごとに請求すれば収入の空白期間を短くできる点は、請求を始める前に知っておきたい実務上のポイントです。

10. 請求権の時効は「賃金を受けない日ごとに」進む

休業補償給付の請求権には、時効があります。厚生労働省のQ&Aは、賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年で時効になるとしています。

「請求書を出した日」から数えるのではなく、休業した日ごとに数える点が重要です。長期の療養で、最初の休業日の分から順に請求権が発生しているため、請求を先延ばしにすると、古い休業日の分から順に請求できなくなっていきます。

1か月ごとに請求する方法は、この時効の面でも合理的です。毎月請求していれば、古い分が時効にかかるおそれはほとんどありません。まとめて請求する場合は、最も古い休業日の分から2年が経過していないかを、提出前に確認してください。

時効を過ぎた場合の扱いについては、厚生労働省のQ&Aに記載がありません。心当たりがある場合は、所轄の労働基準監督署に個別に確認してください。

11. 2026年9月29日に請求するなら、さかのぼれる休業日はいつからか

時効は休業した日ごとに進むため、いつの分まで請求できるかは、請求する日によって変わります。たとえば2026年9月29日に請求する場合、2024年10月1日以降の休業日の分は、2年の期間内にある目安です。

2024年9月末以前の休業日の分は、期間の境目にかかります。請求できるかどうかは、提出前に労働基準監督署へ確認してください。毎月請求していれば、このような確認自体がほとんど必要になりません。

12. 賃金水準が大きく変わったときは「スライド制」で給付基礎日額が調整される

厚生労働省によると、休業補償給付には「スライド制」があります。賃金水準が、事故発生日の属する四半期を基準として110%を超えて、または90%を下回って変動した場合、給付基礎日額にスライド率を乗じた額を用います。

スライド率は、厚生労働省が四半期ごとに一覧で公表しています。療養が長引いた場合に関わる仕組みのため、ご自身のケースで適用されるかどうかは、事故が起きた時期や療養の期間によって変わります。

適用の有無や、事業主が作成する証明書類の要否は、勤め先の担当部署と所轄の労働基準監督署に確認してください。次のセクションで触れる「平均給与額証明書」も、このスライド制に関わる書類とされています。

13. 記入する前に確認したい、氏名と平均賃金まわりの注意点

厚生労働省の様式第8号の記載要領には、氏名のカタカナ(シメイ)は、姓と名の間を1文字あけて記入し、濁点・半濁点は1文字として記入する、という趣旨の注意書きがあるとされています。

また、常時1000人以上の労働者を使用している事業主で、スライド制の適用を受ける場合は、事業主が「平均給与額証明書(様式第9号)」を作成する必要がある、という案内も確認できます。ご自身の勤め先が該当するかどうかは、勤め先の担当部署に聞くのが確実です。

いずれも様式のPDFに記載された注意書きの内容です。実際の記入にあたっては、最新の様式と記載要領を厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー」で確認するか、労災保険相談ダイヤルや所轄の労働基準監督署に問い合わせてください。

齊藤 慧
請求書の記入で迷ったときは、一人で抱え込まず、労働基準監督署や相談ダイヤルに聞いてみるのが近道です。書類の不備で手続きが止まると、その分だけ収入の空白が長引きます。療養中の身で何度もやり直すのは負担が大きいため、最初に窓口で確認しておく価値は十分にあります。

※本記事は、編集部が厚生労働省・和歌山労働局が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

14. 【編集者の視点】

労災の手続きは、本人だけでなく事業主や医療機関との連携が前提です。請求書のどの欄をだれが書くのかを最初に整理しておくと、療養中の負担がかなり軽くなります。

事業主の証明が必要かどうかは、請求の回数と、離職の前後で変わります。「自分のケースはどれに当たるのか」を、この記事の表で確認したうえで、不明な点は労働基準監督署に確認するのが現実的です。

本記事の内容は、休業補償給付の請求書と手続きを理解するための一般的な目安です。労災の認定や給付の可否・金額は、個別の事情に応じて所轄の労働基準監督署が判断します。実際の手続きは、所轄の労働基準監督署または労災保険相談ダイヤルに確認することをおすすめします。

15. まとめ

休業補償給付の請求書は、業務災害なら様式第8号、通勤災害なら様式第16号の6を使い、所轄の労働基準監督署に提出します。休業の4日目から対象で、全日数を一括でも、分割でも請求できますが、長期の場合は1か月ごとが便利とされています。

事業主の証明は、初回の請求で必要です。2回目以降の請求が離職後の場合は原則不要ですが、請求する期間に離職前を含む場合は必要です。一部だけ働いた日があるときは、別紙2を添付します。

支給額は、給付基礎日額の60%に特別支給金20%が加わった合計80%が目安です。請求権の時効は休業日ごとに進むため、書類が整ったら早めに提出し、迷う点は労働基準監督署に確認してください。

16. よくある質問

16.1 Q. 休業補償給付の請求書は、どこに提出しますか?

所轄の労働基準監督署に提出します。業務災害の場合は様式第8号、通勤災害の場合は様式第16号の6を使います。

16.2 Q. 休業した日数をまとめて請求してもよいですか?

かまいません。休業した全日数分を一括して請求するか、何回かに分けて請求するかは自由です。ただし、長期にわたる場合は、1か月ごとの請求が便利とされています。

16.3 Q. 事業主の証明がもらえない場合はどうなりますか?

事業主の証明が必要な請求で証明が得られない場合の扱いは、確認できた公式資料には記載がありません。所轄の労働基準監督署に事情を伝えて、対応を確認してください。

16.4 Q. 退職後でも、休業補償給付は請求できますか?

和歌山労働局は、2回目以降の請求が離職後の場合の扱いを示しており、退職後の請求も想定されています。ただし、請求する期間に離職前を含む場合は、事業主の証明が必要です。

16.5 Q. 一部だけ働いた日の給付額は、どう計算されますか?

その日の給付基礎日額から、実際に働いた分として支払われた賃金の額を差し引いた額の80%が支給されます。この場合は、別紙2の添付が必要です。

16.6 Q. 休業の最初の3日間は、まったく補償されないのですか?

労災保険からの給付は、休業の第4日目から支給されます。最初の3日間の補償については、勤め先や労働基準監督署に確認してください。

16.7 Q. 請求権の時効は、いつから数えますか?

賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年が時効です。請求書を出した日ではなく、休業した日ごとに数えます。

16.8 Q. 賞与は、給付基礎日額の計算に含まれますか?

含まれません。厚生労働省は、給付基礎日額の算定に、臨時的に支払われた賃金や、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は含まれないとしています。

16.9 Q. 通勤中のケガの場合も、同じ手続きですか?

請求書の様式が異なり、休業給付支給請求書(様式第16号の6)を使います。提出先は同じく所轄の労働基準監督署です。

参考資料

齊藤 慧