親から子へ、土地や家を贈与するときは、「贈与税だけを考えればよい」と思われがちです。ところが、不動産の贈与では、贈与税のほかに、登記にかかる登録免許税と、都道府県に納める不動産取得税の、合わせて3つの税金がかかります。

東京都主税局のQ&Aによると、不動産取得税の軽減税率3%と、宅地の価格を2分の1にする特例は、令和9年3月31日までの取得が対象です。約半年後に、期限を迎えます。

この記事では、国税庁、総務省、東京都主税局の公表資料(2026年10月時点)をもとに、3つの税金の仕組みを整理し、同じ前提で3つの税額を試算します。個別の税額は、税務署、都道府県の税事務所、法務局、税理士などの専門家に確認してください。

1. 不動産の贈与では、3つの税金がかかる

不動産を贈与でもらうと、次の3つの税金が関わります。1つ目は、国税の贈与税です。個人から財産をもらったときにかかり、暦年課税では、1年間にもらった財産の合計額から110万円を引いた額に課税されます。

2つ目は、登録免許税です。所有権を移す登記をするときに、国に納める税金です。国税庁の税額表では、贈与による所有権の移転登記は、土地も建物も、不動産の価額の1000分の20です。

3つ目は、不動産取得税です。総務省によると、土地や家屋の購入、贈与、家屋の建築などで不動産を取得したときに、取得した人に課される都道府県の税金で、相続などの場合は除かれます。

3つとも、納める先と、納めるタイミングが違います。贈与税は、翌年2月1日から3月15日の間に、税務署へ申告と納税をします。登録免許税は登記のときに、不動産取得税は、都道府県から届く通知で納めます。

1.1 【不動産の贈与にかかる3つの税金の違い】

前提条件:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」「No.4602 土地家屋の評価」「No.7191 登録免許税の税額表」、総務省「やさしい地方税 不動産取得税」、東京都主税局「不動産取得税Q&A」(2026年10月時点)による整理1/2

前提条件:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」「No.4602 土地家屋の評価」「No.7191 登録免許税の税額表」、総務省「やさしい地方税 不動産取得税」、東京都主税局「不動産取得税Q&A」(2026年10月時点)による整理

出所:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」、東京都主税局「不動産取得税Q&A」

  • 贈与税:税務署に、翌年2月1日から3月15日に申告と納税をします。土地は路線価方式か倍率方式、家屋は固定資産税評価額で評価し、110万円を引いた額に、特例税率か一般税率を乗じます。
  • 登録免許税:登記のときに納めます。固定資産課税台帳に登録された価格を基に、税率は1000分の20です。
  • 不動産取得税:東京都の場合、取得から30日以内に申告します(期限は都道府県で異なります。登記を申請した場合は原則不要)。納税は都道府県の通知によります。固定資産課税台帳に登録された価格(宅地は2分の1)に、土地・住宅は3%(令和9年3月31日まで)を乗じます。

2. 贈与税:土地は路線価か倍率、家屋は固定資産税評価額で評価する

贈与税を計算するには、まず、もらった不動産を評価します。国税庁の資料によると、土地には、路線価方式と倍率方式があります。路線価が定められている地域は路線価方式、定められていない地域は倍率方式で評価します。

倍率方式は、土地の固定資産税評価額に、一定の倍率を乗じて計算します。路線価図と評価倍率表は、国税庁のホームページで閲覧できます。

家屋は、固定資産税評価額に1.0を乗じた金額で評価します。つまり、家屋の評価額は、固定資産税評価額と同じです。賃貸されている土地や家屋は、権利関係に応じて、評価額が調整されます。

評価額から、暦年課税の基礎控除110万円を引いた額に、税率を乗じます。国税庁の速算表では、親から18歳以上の子への贈与には特例税率、それ以外には一般税率を使います。

齊藤 慧
「家を子どもに渡しておけば安心」という気持ちは、よく分かります。ただ、不動産は金額が大きいぶん、税金も大きくなりがちです。気持ちが先に走る前に、まず3つの税金の合計を、数字で確かめてみてほしいと思います。

3. 登録免許税:贈与は1000分の20、相続は1000分の4

国税庁の登録免許税の税額表(令和8年4月1日現在法令等)によると、土地の所有権の移転登記の税率は、原因によって違います。贈与、交換、収用、競売などは1000分の20です。

相続、法人の合併、共有物の分割は、1000分の4です。売買は1000分の20ですが、令和11年3月31日までの間に登記を受ける場合は、軽減税率の1000分の15になります。贈与には、この軽減はありません。

建物の所有権の移転登記も、同じ構造です。贈与は1000分の20、相続は1000分の4です。住宅用家屋の移転登記には軽減税率がありますが、対象は売買と競落に限られていて、贈与は含まれません。

登録免許税の課税標準は、不動産の価額で、固定資産課税台帳に登録された価格がある場合は、原則としてその価格です。贈与税の評価額とは、別の価格を使う点に注意してください。

4. 【編集者の視点】

登録免許税で見落としやすいのは、「売買には軽減があるのに、贈与にはない」という点です。売買は、令和11年3月31日までの登記で1000分の15に下がります。贈与の1000分の20には、同じ軽減が書かれていません。

住宅用家屋の軽減税率も、対象は売買と競落に限られます。「住宅だから軽減が使えるはず」と思っていても、贈与では対象外になる場合があります。登記を依頼する司法書士に、軽減の適用の可否を確認しておくと、見込み違いを防げます。

登録免許税は、登記の申請のときに納めます。贈与を決める前に、金額を見積もっておくことが大切です。

5. 不動産取得税:贈与でも課税され、贈与税の特例を使っても免除されない

東京都主税局のQ&Aによると、不動産の取得について、有償か無償か、登記の有無、取得原因は問いません。そのため、贈与や等価交換でも課税されます。

ここで、見落とされやすい点があります。贈与税で、夫婦間の居住用不動産の贈与の特例を受けた場合も、不動産取得税は課税されます。贈与税で、相続時精算課税制度を適用した場合も、贈与の時点で不動産取得税が課税されます。

税率は、総務省によると、原則4%ですが、現在、土地と住宅については軽減税率3%が適用されています。東京都主税局は、この税率が令和9年3月31日までの取得に適用されると案内しています。

課税標準は、実際の購入価格ではなく、固定資産課税台帳に登録された価格です。宅地と、宅地に比準して評価された土地は、この価格に2分の1を乗じます(令和9年3月31日まで)。

免税点もあります。東京都主税局によると、令和8年4月1日以降の取得では、土地が16万円未満、家屋(新築・増築・改築)が66万円未満、家屋(その他売買等)が34万円未満のとき、課税されません。

申告は、不動産を取得した日から30日以内に、所在地を所管する都税事務所に行います。ただし、30日以内に登記を申請した場合は、原則として申告は不要です。納付書は、都道府県から後日届きます。

齊藤 慧
不動産取得税は、登記のあとしばらくして、通知が届くことが多い税金です。贈与を受けた人が「もう終わった」と思っていたところに、後から請求が来ると、驚くかもしれません。最初から、3つの税金をセットで考えておくのが安心だと思います。

6. 3つの税金を同じ前提で試算:土地2000万円と家屋800万円の贈与

3つの税金を、同じ前提で並べてみます。親が、18歳以上の子に、土地(評価額2000万円)と家屋(評価額800万円)を、暦年課税で贈与した、という編集部の仮定の試算です。

実際には、贈与税の評価額と、登録免許税・不動産取得税の基になる固定資産税評価額は、別に決まる価格で、通常は違う金額になります。この試算では、わかりやすさのため、同じ金額と仮定しました。

贈与税は、2800万円から110万円を引いた2690万円に、特例税率の45%を乗じて、控除額265万円を引きます。登録免許税は、土地と家屋のそれぞれに1000分の20を乗じます。

6.1 【土地2000万円・家屋800万円を贈与したときの3つの税金(編集部試算)】

前提条件:土地の評価額2000万円、家屋の評価額800万円(3つの税金で同額と仮定)、親から18歳以上の子への暦年課税の贈与。贈与税は特例税率、不動産取得税は土地と住宅の軽減税率3%と宅地の価格の2分の1の特例を適用し、住宅の控除や免税点は考えない。国税庁と総務省、東京都主税局の資料による編集部試算2/2

前提条件:土地の評価額2000万円、家屋の評価額800万円(3つの税金で同額と仮定)、親から18歳以上の子への暦年課税の贈与。贈与税は特例税率、不動産取得税は土地と住宅の軽減税率3%と宅地の価格の2分の1の特例を適用し、住宅の控除や免税点は考えない。国税庁と総務省、東京都主税局の資料による編集部試算

出所:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」、同「No.7191 登録免許税の税額表」、東京都主税局「不動産取得税Q&A」を基にLIMO編集部試算

  • 贈与税:(2800万円-110万円)×45%-265万円で、945万5000円です。
  • 登録免許税:土地2000万円と家屋800万円のそれぞれに1000分の20を乗じて、56万円です。
  • 不動産取得税:土地は2000万円の2分の1に3%、家屋は800万円に3%を乗じて、54万円です。
  • 合計は、945万5000円と56万円と54万円で、1055万5000円です。

この試算で、贈与税が全体の大半を占めることが分かります。ただし、登録免許税と不動産取得税も、合わせて110万円になります。「贈与税だけを見積もっていた」場合、この110万円が、見込みから抜け落ちることになります。

この試算は、贈与税の特別控除、住宅の軽減、免税点、土地の形状による補正などを考えていない、単純化した仮定です。個別の金額は、税務署、都道府県の税事務所、税理士に確認してください。

7. 【編集者の視点】

試算の表を見て、1055万5000円という合計に驚いた方も多いと思います。ただ、この金額は、特例税率を使った暦年課税で、一度に2800万円分を贈与した極端な仮定です。実際は、贈与する時期や方法で、大きく変わります。

不動産の贈与で押さえたいのは、「3つの税金の評価の元が違う」ことです。贈与税の評価額は、路線価や倍率で決まり、登録免許税と不動産取得税は、固定資産課税台帳の価格が基です。1つの不動産でも、3つの税金で、金額の元が違います。

どの税金が、いくらかかるかは、不動産の種類、場所、贈与の方法によって変わります。実行する前に、税理士に試算を依頼するのが、いちばん確実です。

8. 相続で渡す場合との違い:登録免許税は5分の1、不動産取得税は対象外

同じ不動産を、相続で渡す場合は、どうなるでしょうか。登録免許税は、相続なら1000分の4で、贈与の5分の1です。先ほどの試算なら、土地が8万円、家屋が3万2000円で、合計11万2000円です。

不動産取得税は、総務省によると、相続などの場合は課税の対象から除かれます。贈与では54万円かかった試算でも、相続では、この税金が課税されません。

8.1 【同じ土地2000万円・家屋800万円を渡したとき:贈与と相続の違い(編集部試算)】

  • 登録免許税:贈与は56万円(1000分の20)、相続は11万2000円(1000分の4)です。
  • 不動産取得税:贈与は54万円、相続は課税の対象から除かれます。
  • 2つの合計:贈与は110万円、相続は11万2000円です。

ただし、相続税は別にかかる場合があります。この記事では、相続税の計算は扱いません。贈与か相続かの選択は、税金の合計だけでなく、ほかの事情も絡むため、税理士などの専門家に相談してください。

相続による登記には、期限があります。令和6年4月1日から、不動産を相続したことを知った日から3年以内の登記が義務になりました。詳しくは、放置すると最大10万円の過料?【相続登記義務化】過去に相続したものも対象に。猶予期限は約半年《2027年3月31日まで》で確認できます。

9. 贈与の前に確認しておきたい3つの点

1つ目は、評価額の確認です。土地は、路線価図と評価倍率表で、家屋は、市区町村から届く固定資産税の課税明細書で、おおよその金額を確かめられます。

2つ目は、贈与税の特例の確認です。夫婦間の居住用不動産の贈与の特例や、相続時精算課税制度を使っても、不動産取得税は課税されます。贈与税の軽減が、登録免許税や不動産取得税の軽減にはなりません。

3つ目は、期限の確認です。不動産取得税の軽減税率3%と、宅地の価格を2分の1にする特例は、令和9年3月31日までの取得が対象です。贈与の時期の検討には、この期限もあわせて確認してください。

贈与の時期の考え方については、【生前贈与】12月31日ギリギリはNG?年末駆け込み贈与で失敗しないための5つのポイント!「税制改正」持ち戻し期間7年も解説でも説明されています。

齊藤 慧
不動産の贈与は、家族の気持ちが大きく動く話だと思います。「早く渡したい」という思いがあっても、税金の見通しがつかないまま進めると、あとで後悔につながりかねません。まず専門家に試算を依頼し、家族で数字を共有してから決めてください。※本記事は、編集部が国税庁や総務省が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

10. まとめ

不動産を贈与でもらうと、贈与税、登録免許税、不動産取得税の3つがかかります。贈与税の特例(夫婦間の居住用不動産、相続時精算課税)を使っても、不動産取得税は課税されます。

登録免許税は、贈与が1000分の20、相続が1000分の4です。不動産取得税は、相続では課税の対象から除かれます。

編集部の試算では、土地2000万円と家屋800万円を、親から18歳以上の子に贈与した場合、贈与税が945万5000円、登録免許税が56万円、不動産取得税が54万円で、合計は1055万5000円です。

不動産取得税の軽減税率3%と、宅地の価格を2分の1にする特例は、令和9年3月31日までの取得が対象です。個別の税額は、税務署、都道府県の税事務所、税理士に確認してください。

11. よくある質問

11.1 Q. 不動産を贈与でもらうと、どんな税金がかかりますか?

贈与税、登録免許税、不動産取得税の3つです。贈与税は国税庁、登録免許税は法務局での登記のとき、不動産取得税は都道府県が窓口です。

11.2 Q. 贈与による登録免許税の税率は?

土地も建物も、不動産の価額の1000分の20です。相続による移転は1000分の4です(国税庁 No.7191、令和8年4月1日現在法令等)。

11.3 Q. 贈与でも、不動産取得税はかかりますか?

かかります。東京都主税局のQ&Aでは、有償・無償の別、登記の有無、取得原因は問わず、贈与でも課税されます。相続などの場合は、課税の対象から除かれます(総務省)。

11.4 Q. 贈与税の特例を使えば、不動産取得税はかかりませんか?

かかります。夫婦間の居住用不動産の贈与の特例や、相続時精算課税制度を使っても、不動産取得税は課税されると、東京都主税局が案内しています。

11.5 Q. 不動産取得税の税率は、いくらですか?

総務省によると、税率は4%ですが、現在、土地と住宅には軽減税率3%が適用されています。令和9年3月31日までの取得が対象です(東京都主税局)。

11.6 Q. 不動産取得税の申告は、必要ですか?

東京都の場合、不動産を取得した日から30日以内に、所在地を所管する都税事務所などに申告します。30日以内に登記を申請した場合は、原則として申告は不要です。申告の期限は都道府県で異なるため、所在地の都道府県税事務所に確認してください。

11.7 Q. 贈与税の申告期限は、いつですか?

贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。暦年課税の財産の合計額が110万円を超える場合などに、申告と納税が必要です(国税庁 No.4402)。

11.8 Q. 不動産は、どう評価されますか?

贈与税では、土地は路線価方式か倍率方式、家屋は固定資産税評価額で評価します。登録免許税と不動産取得税は、原則として固定資産課税台帳に登録された価格が基になります。

11.9 Q. 贈与と相続では、どちらが税金が安いですか?

一概には言えません。登録免許税は相続が5分の1で、不動産取得税は相続では対象外です。ただし、相続税が別にかかる場合があります。税理士に確認してください。

参考資料

齊藤 慧