4. もし会社員と公務員の期間を合わせて44年ならどうなる?
転職などで、会社員と公務員の両方の期間がある人もいます。
「高校を出て会社に30年勤め、そのあと市役所で14年働きました。合わせて44年になりますが、特例の対象ですか?」
答えは、対象になりません。長期加入者の特例の44年は、会社員と公務員の期間を合わせて数えないためです。
4.1 いずれか1つの期間で44年が必要
日本年金機構によると、44年は、日本年金機構の期間、公務員共済の期間、私学共済の期間のいずれか1つだけで満たす必要があります。会社員として30年、公務員として14年加入した場合は、どちらの期間も44年に届きません。
4.2 共済組合等の分は男性と同じ生年月日で判定
特別支給の老齢厚生年金の要件では、共済組合等から受け取る老齢厚生年金は、女性も男性と同じ生年月日で判定されます。
男性の対象は1961年4月1日以前生まれです。そのため、女性でも1961年4月2日以後に生まれた人は、公務員だった期間の分について特別支給の老齢厚生年金の対象になりません。
5. もし年下の配偶者がいたら長期加入者の特例とあわせて加給年金額が加算される?
定額部分を受け取り始めるときに、家族の分の上乗せがあるかを気にする人もいます。
「私が64歳で退職して定額部分を受け取り始めるとき、夫はまだ62歳です。夫の分も何か付きますか?」
先に答えると、65歳未満の夫を生計維持していると認められれば、加給年金額が付く場合があります。ただし、届出が必要で、夫自身の年金によっては止まります。
5.1 配偶者の加給年金額は年42万3700円
加給年金額は、厚生年金の被保険者期間が20年以上ある人に、65歳到達時や定額部分の支給開始年齢に到達した時点で、生計を維持している配偶者や子がいると加算されます。44年以上加入した人は、この20年の条件を満たしています。
2026年4月からの配偶者の加給年金額は24万3800円です。受給する本人が1943年(昭和18年)4月2日以後生まれなら特別加算17万9900円が付き、合計で年42万3700円になります。
配偶者が65歳未満であることが条件で、配偶者が65歳になると加算は終わります。
5.2 届出が必要で配偶者の年金によっては止まる
対象の配偶者や子がいる場合は、「老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届」を出すと、被保険者でなくなった月の翌月分から加給年金額を受け取れます。年金が決まったときに対象者を登録済みの人は、「老齢厚生年金 加給年金額加算開始事由該当届(生計維持申立書)」を退職日から1か月たってから出します。
もっとも、配偶者が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金などを受け取る権利を持っていると、配偶者の加給年金額は支給停止になります。2022年4月からは、実際に受け取っていなくても権利があれば止まる扱いです。
6. もし44年に数か月足りなかったら?
44年まであと少しという人は、退職の日をいつにするかで迷うかもしれません。
「計算すると、3月で44年ちょうどになりそうです。退職日は3月30日と3月31日のどちらがよいですか?」
結論をいえば、3月31日に退職すれば3月も加入期間に入りますが、3月30日だと3月は数えられません。1日違いで44年に届くかどうかが変わることがあるのです。
6.1 資格を喪失した月は数えない
厚生年金保険法では、被保険者期間は月単位で数え、資格を取得した月から、資格を喪失した月の前月までを算入すると定めています。資格を喪失するのは、退職した日の翌日です。
たとえば3月31日に退職すると、資格を喪失するのは4月1日なので、3月までが加入期間に入ります。3月30日に退職すると3月31日に資格を喪失し、加入期間は2月までになるのです。
6.2 18歳で就職した人が44年に届くのは62歳の年度末ごろ
計算上、18歳の4月に就職して途切れずに厚生年金に加入した場合、44年(528月)に届くのは62歳の年度末ごろです。転職のあいだに厚生年金に入っていない期間があれば、その分だけ後ろにずれます。
自分の厚生年金の加入月数は、ねんきん定期便やねんきんネットで確かめられます。
7. まとめにかえて
長期加入者の特例は、厚生年金に44年以上加入し、退職などで被保険者でなくなった人が、65歳前から定額部分も受け取れる仕組みです。2026年度の定額部分は、上限の480月で年84万7680円になります。
ただし、退職せずに働き続けたり、退職後に再び厚生年金に加入したりすると、定額部分は受け取れません。会社員と公務員の期間は合算されず、44年に届くかどうかは退職する日でも変わります。
長期加入者の特例「もしこうなったら」の早見2/2
出所:日本年金機構「44年以上厚生年金保険に加入している特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の受給者が、退職などで被保険者でなくなったとき」などを参考にLIMO編集部作成
10月からは賃金要件がなくなり、週20時間以上などの要件で厚生年金に加入するかどうかが決まります。働き方を決める前に、ねんきん定期便で加入月数を確かめ、年金事務所やねんきんダイヤルで自分の場合を聞いておくと安心です。
参考資料
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
- 日本年金機構「44年以上厚生年金保険に加入している特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の受給者が、退職などで被保険者でなくなったとき」
- 日本年金機構「た行 定額部分」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
- 日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」
- 日本年金機構「老齢厚生年金を受給中の短時間労働者の方が厚生年金保険の被保険者になったとき(令和6年10月からの短時間労働者の適用拡大)」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- e-Gov法令検索「厚生年金保険法」
太田 彩子