海外の勤務先で働いた期間は、日本の年金にどう反映されるのでしょうか。
日本年金機構によると、日本は相手国と社会保障協定を結んでおり、2025年12月にオーストリアとの協定が発効して24か国となりました。ただし、そのうち4か国は加入期間の通算ができません。
この記事では協定の2つの内容と、通算できる国とできない国の違いを確認したうえで、加入期間の合算と年金額の計算がどう分かれるのかを見ていきます。
1. 【社会保障協定】海外で働いた期間の扱いは、協定の内容で変わる
社会保障協定は、日本と相手国のあいだで年金制度の重なりを調整する取り決めです。まず何を定めているのかを確かめます。
1.1 協定の内容は二重加入の防止と加入期間の通算
協定には大きく2つの内容があります。
ひとつが二重加入の防止です。日本年金機構は、協定発効前は海外の社会保障制度に加え、日本の社会保障制度に二重に加入しなければならないことがあったと説明しています。協定発効後は、原則として就労する国の社会保障制度のみに加入します。
もうひとつが年金加入期間の通算です。加入期間が短いために年金を受けられず、納めた年金保険料が掛け捨てになってしまうことがあったため、日本の加入期間を相手国の加入期間とみなして通算できるようにしたものです。
協定が発効しているのは24か国。うち英国・韓国・中国・イタリアの4か国は通算規定がない1/3

出所:日本年金機構「協定を結んでいる国との協定発効時期および対象となる社会保障制度」などをもとにLIMO編集部作成
1.2 発効しているのは24か国、最新は2025年12月のオーストリア
協定を結んでいる国は、20年以上かけて増えてきました。
いちばん早いのがドイツで2000年2月です。以降、英国2001年2月、韓国2005年4月、アメリカ2005年10月と続き、直近ではイタリアが2024年4月、オーストリアが2025年12月に発効しています。
この24か国のうち、二重加入の防止の対象が公的年金制度だけでなく公的医療保険制度にも及ぶのは、アメリカ、ベルギー、フランス、オランダ、チェコ、スイス、ハンガリー、ルクセンブルク、オーストリアの9か国です。
1.3 通算ができないのは英国・韓国・中国・イタリア
協定を結んでいれば通算できるとは限りません。
日本年金機構は、英国、韓国、中国およびイタリアとの協定については通算規定がないと明記しています。この4か国との協定は、保険料の二重負担の防止だけということです。
日本の年金についても、これら4か国との協定は特例の対象から除かれています。中国は2019年9月、イタリアは2024年4月という比較的新しい協定ですが、通算の仕組みは入っていません。
1.4 5年以内の派遣なら日本の制度だけに加入
どちらの国の制度に入るかは、派遣の見込み期間で決まります。
事業主により相手国へ5年を超えない見込みで派遣される場合は、引き続き日本の社会保障制度のみに加入し、相手国の社会保障制度の加入が免除されます。5年を超えると見込まれる場合は、相手国の社会保障制度に加入します。
予見できない事情により5年を超えた場合は、原則として相手国の制度になりますが、両国の合意が得られた場合には日本の制度のままとされます。この免除期間の延長には両国の関係機関間での合意が必要で、上限は協定によって異なります。
1.5 現地採用なら相手国の制度に加入
採用のかたちによっても変わります。
日本の事業主による派遣ではなく、相手国での現地採用の場合は、相手国の社会保障制度に加入します。派遣期間の長短にかかわらず、就労する国の制度という原則が適用されます。
この考え方は自営業者にも当てはまります。ただしオーストラリア、インド、中国との協定では、自営業者が相手国の年金制度の強制加入対象者ではないため対象外とされ、フランスとの協定では個別の申請に基づいて調整されます。
1.6 通算するのは受給資格を見るときだけ
ここは誤解しやすいところです。
日本年金機構は、年金加入期間の通算は両国の年金加入期間をまとめて一方の国から年金を受けるという仕組みではなく、それぞれの国で受給資格要件を判断する場合に相手国の期間を通算する仕組みだと説明しています。
年金を受けるときは、両国の年金制度にそれぞれ加入した期間に応じた年金を、それぞれの国から受けることになります。なお、両国の制度に二重に加入していた期間は、通算にあたって二重にカウントされません。
1.7 相手国の最低加入年数はチェコの35年からカナダの1年まで
通算がなぜ必要なのかは、相手国の要件を見ると分かります。
老齢年金の最低加入年数条件は、チェコが35年でもっとも長く、スペイン、ハンガリー、スロバキア、オーストリアが15年、インドが10年、ドイツが5年、カナダとスイスが1年です。ベルギー、フランス、オランダ、フィンランド、スウェーデンは条件がありません。
日本年金機構が挙げている例では、ドイツの老齢年金の受給資格要件は5年間の加入で、ドイツの加入期間が3年では2年足りずに受給できません。しかし日本の加入期間を通算すると5年以上になるため、ドイツの老齢年金を受給できることになります。
1.8 日本側でも加給年金の20年要件に相手国期間を算入できる
通算は相手国の年金だけの話ではありません。
日本の老齢基礎年金・老齢厚生年金は被保険者期間が10年以上という受給資格要件がありますが、日本の期間だけで足りない場合に相手国の期間を算入できます。日本年金機構が示す例では、協定発効前は3年で不支給だったものが、発効後は6年と3年と2年を合わせて11年となり支給されます。
ご自身の期間の扱いは、年金事務所にご確認ください。
なお、受給資格期間の合算と年金額の計算に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

