「よく使うお店から、情報漏えいのお詫びメールが届いた」と不安になった方もいるのではないでしょうか。
2026年10月上旬、ブックオフや第一興商といった大手企業から、数百万件規模となる個人情報漏えいの可能性が相次いで公表されました。こうした事案は他社でも発生しており、決して対岸の火事ではありません。
日頃コツコツ貯めているポイントですが、実は預金のように法律で守られているわけではありません。
本記事では、一連の事案の中で何が漏洩したのかを整理し、万が一の際に貯めたポイントが補償されるかどうかの決め手を確認します。
※※本記事は2026年10月13日時点での最新情報をもとに執筆しています。
1. ブックオフ・第一興商で何が漏れた?ポイントカード番号は含まれる?
まず、10月上旬に公表された事例のうち、大手2社のケースを整理しておきましょう。
ブックオフグループホールディングスは2026年10月9日、「不正アクセスによる個人情報漏えいに関するお詫びとお知らせ」を公表しました。対象は最大約643万件で、登録されている会員番号の総数とされています。
対象となった項目は、氏名や住所、生年月日などに加え、ポイントカード番号やパスワードのハッシュ値まで含まれていました。一方、クレジットカードなどの決済情報は対象のシステムで保有しておらず、対象外です。
公表時点で、会員情報の書き換えは確認されていないとしています。
通信カラオケ大手の第一興商は2026年10月8日、「委託先における個人情報漏えいのおそれについて」を公表しました。個人情報の取り扱いを委託している会社で従業員の端末がマルウェアに感染し、情報が漏えいしたおそれがあるという内容です。
対象は約872万4000件で、内訳は顧客約863万1000件と従業員約9万3000件となっています。対象項目は氏名(登録名)や性別、生年月日、メールアドレス、電話番号で、パスワードやポイントカード番号は挙げられていません。
同社は、これらの情報だけでDKポイントを不正利用することはできないと説明しました。一口に「会員情報の漏えい」といっても、ポイントカード番号が含まれるかどうかは事案ごとに異なります。
2. そもそもポイントは「お金」として法律で守られている?
「被害に遭っても、預金のように法律で補償されるはず」と考える方もいるでしょう。しかし、買い物などで貯まるポイントは、法律上の「お金」として一律に守られているわけではありません。
2.1 お金をチャージした電子マネーとポイントは何が違う?
「チャージした電子マネー」と「無償ポイント」の違い1/3
出所:各種資料をもとにLIMO編集部作成
現金をチャージして使う電子マネーやプリペイドカードは、資金決済法上の「前払式支払手段」にあたります。発行者は、基準日の未使用残高が1000万円を超える場合、その半額以上を供託などで保全しなければなりません。
一方、日本資金決済業協会は「前払式支払手段 基準日未使用残高等FAQ」の中で、ポイントの扱いについても整理しています。それによると、購入実績などに応じて無償で付与されるポイントは、前払式支払手段に該当しない扱いです。金融庁の事務ガイドライン(前払式支払手段発行者関係)も、同様の考え方を示しています。
無償で付与されたポイントには資金決済法上の保全義務がなく、不正利用への対応は各社の判断に委ねられるのが実情です。
3. 漏えいでポイントが使われたら補償される?決め手は各社の会員規約
では、漏れた情報が悪用され、ポイントを勝手に使われた場合はどうなるのでしょうか。編集部が確認した範囲では、ポイントの不正利用について一律の補償を企業に義務づける法律の規定は見当たりません。
補填されるかどうかは、各社の会員規約や個別の判断によって決まります。
「ポイントは現金と同じように守られる」と考えている方は、少なくないかもしれません。しかし本文で触れたとおり、買い物などで無償付与されるポイントは前払式支払手段にあたらず、資金決済法上の保全義務の対象外です。
そのため、万一不正に使われたときの対応は、各社の会員規約や判断に委ねられます。規約には、会員側の管理に問題があった場合の取り扱いなどが定められていることもあるでしょう。
一方で、規約に細かな定めがなくても、事案の状況を踏まえて補填を表明する企業もあります。大切なのは「どこかが必ず補ってくれる」と思い込まず、使っているサービスの規約に一度目を通しておくことです。
特に残高が多いサービスほど、不正利用時の取り扱いと問い合わせ窓口を確認しておく価値があります。お詫びの連絡が届いてから探し始めると、偽のメールに惑わされるおそれもあるでしょう。平時のうちにひと手間かけておくと、いざというとき落ち着いて動けるはずです。
4. 漏えいの連絡が来たら確認したい注意点は3つ
利用中のサービスから漏えいの連絡が届いたら、慌てて動く前に押さえておきたい視点があります。ここでは、確認しておきたい注意点を3つに整理しました。
4.1 注意点1:「番号だけ」と「番号+パスワード関連情報」ではリスクが違う
1つ目は、漏えいした情報の「組み合わせ」によってリスクが変わる点です。ブックオフの事案では、ポイントカード番号に加えてパスワードのハッシュ値も対象に含まれていました。
ハッシュ値とは、パスワードを元に戻せない形に変換した値を指します。ただし、変換の方式やパスワードの単純さによっては、元のパスワードを推測されるおそれも否定できません。
一方、第一興商の事案ではパスワードは対象外で、同社も漏えいした情報だけでは不正利用できないと説明しています。何と何が漏れたのかを見極めることが、危険度を判断する第一歩です。
4.2 注意点2:ポイントより先に警戒したい「なりすまし連絡」
2つ目として、漏えいした連絡先を悪用した偽のメールやSMSへの警戒が挙げられます。お詫びや本人確認を装い、パスワードやカード番号を聞き出そうとする手口が考えられるためです。
国民生活センターは2023年11月、「そのURLのクリック、ちょっと待って!フィッシング対策のチェックリスト」を公表しました。メールやSMSのリンクを安易に開かないよう、注意を呼びかけています。連絡が届いたら記載のリンクは開かず、公式サイトや公式アプリから内容を確かめましょう。
4.3 注意点3:【盲点】パスワードの使い回しで、他社のポイントも危うくなる
3つ目は見落とされやすい点で、パスワードの使い回しです。ある事業者から漏れたIDとパスワードの組み合わせを使い、別のサイトへのログインを試みる手口があります。
infoQの事案でも、同社は同じパスワードを他のサービスで使っている利用者に変更を呼びかけました。漏えい元だけでなく、ほかのポイントサイトや通販サイトのパスワードも見直しておきましょう。
5. 漏えい報告はどれくらい増えている?個人情報保護委員会の統計と「使っていない会員登録」の見直し
個人情報保護委員会は2026年9月2日、「令和8年度第1四半期における漏えい等報告の処理状況」を公表しました。それによると、同四半期に処理した漏えい等報告は官民あわせて6101件です。
このうち民間の個人情報取扱事業者からの報告は5451件で、前年同期の5007件から444件増えています。「不正の目的」による事案は1450件(26.6%)で、前年同期の1136件(22.7%)から314件増えました。
クレジットカード番号の漏えいなど「財産的被害が生じるおそれ」がある事案は1093件で、全体の20.1%でした。
個人情報取扱事業者の漏えい等報告と「不正の目的」による事案の件数(令和7年度・令和8年度の各第1四半期)3/3
出所:個人情報保護委員会「令和8年度第1四半期における漏えい等報告の処理状況」をもとにLIMO編集部作成
なお、1つの事案が複数の類型に当てはまる場合があり、割合を足すと100%を超えます。また、2026年10月に公表された事案はこの集計期間に含まれていません。
同委員会は2026年10月7日、「大規模な漏えい等事案を踏まえた対応について(注意喚起)」も公表しました。その中で、不要になった個人データの削除などを事業者に求めています。
事業者向けの要請ですが、利用者にとっても、放置している会員登録を見直すきっかけになるでしょう。何年もログインしていないサービスにも、氏名や連絡先が残っている場合があります。
使っていない会員登録は、残ったポイントを使い切ったうえで退会を検討してみてください。
6. まとめにかえて|ポイントを守る第一歩は、規約と登録情報の棚卸しから
相次ぐ漏えいのニュースに不安を覚えたときは、次の3つのステップで落ち着いて行動してみましょう。
- 公式サイトのお知らせと個別連絡を確認する:メールのリンクは開かず、公式サイトや公式アプリで発表内容を確かめます。
- 会員規約の補償に関する条項を確認する:不正利用があった場合の取り扱いが、どう定められているかを把握しておくと安心です。
- 使っていない会員登録を整理する:長く放置しているサービスは、ポイントを使い切って退会することも選択肢になります。
ポイントは現金と同じように法律で守られているわけではないため、自分で管理する意識が欠かせません。
身に覚えのないポイント利用や不審な連絡があった場合は、消費者ホットライン「188」に相談してみましょう。
相次ぐ漏えいのニュースを見て、手元のポイントが心配になるのは自然なことです。ただ、不安を感じたときこそ、自分が使っているサービス全体を見直す好機ととらえてみてはいかがでしょうか。
財布やスマートフォンのアプリを開いてみると、何年も使っていないポイントカードが見つかるかもしれません。残高があれば日々の買い物で使い切り、必要のない会員登録は退会しておくと、個人情報を預けている先を減らせます。
あわせて、同じパスワードを使い回しているサービスがないかも確かめてみましょう。一度にすべてを整えようとせず、よく使うサービスから順番に手を付ければ十分です。
ポイントは、日々の暮らしの中でコツコツ積み上げてきた大切な資産といえるでしょう。守るための主導権は、ほかでもない自分自身が握っています。週末の少しの時間を使って、身の回りのポイントと会員登録の棚卸しを始めてみてください。
参考資料
- ブックオフグループホールディングス「不正アクセスによる個人情報漏えいに関するお詫びとお知らせ」(2026年10月9日公表)
- 第一興商「委託先における個人情報漏えいのおそれについて」(2026年10月8日公表)
- GMOリサーチ&AI「当社が運営するアンケートサイト「infoQ」への不正アクセスによる個人情報漏えいに関するお詫びとお知らせ」(2026年10月5日公表)
- 日本資金決済業協会「前払式支払手段 基準日未使用残高等FAQ」
- 金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 5 前払式支払手段発行者関係)」
- 個人情報保護委員会「令和8年度第1四半期における漏えい等報告の処理状況」(2026年9月2日公表)
- 個人情報保護委員会「漏えい等報告・本人への通知の義務化について」
- 個人情報保護委員会「大規模な漏えい等事案を踏まえた対応について(注意喚起)」(2026年10月7日公表)
- 国民生活センター「そのURLのクリック、ちょっと待って!フィッシング対策のチェックリスト」
