日が落ちるのがすっかり早くなりましたね。夕暮れ時に「ちょっと散歩に行ってくる」と出かけた親が、そのまま戻らない。こうした事態は、決して他人事ではありません。
警察庁が2026年6月に公表した令和7年分の最新統計では、届け出られた認知症に係る行方不明者は1万7345人でした。
受理当日に所在が確認された人が最も多く、受理から3日以内の確認が大半を占めていますが、いざというときに慌てないためには、家族が初動を知っておくことが大切です。
本記事では、行方不明の現状と初動のポイントを整理します。あわせて、介護保険の福祉用具貸与や、自治体のGPS端末の費用例も紹介します。
1. 認知症の行方不明は年間1万7000人台。数字で見る現在の状況
警察庁が2026年6月に公表した「令和7年における行方不明者届受理等の状況」によると、令和7年に警察へ届け出られた認知症に係る行方不明者は1万7345人でした。男性が9715人(56.0%)、女性が7630人(44.0%)という内訳です。
過去の推移は、令和3年が1万7636人、令和4年が1万8709人、令和5年が1万9039人、令和6年が1万8121人でした。令和7年は前年より776人減ったものの、依然として1万7000人を超える水準にあります。
2. 見つかるまでの日数。受理当日の確認が最多で、3日以内の所在確認が大半
2.1 受理から何日で見つかっている?
同じ資料で、令和7年中の確認状況(所在確認・死亡確認・その他の小計1万7268人)を見ます。所在確認は1万6156人で、内訳は受理当日が1万1369人、2〜3日が4487人、4〜7日が195人、8〜14日が58人、15日以降が47人です。
死亡確認は573人で、受理当日が127人、2〜3日が187人、4〜7日が67人、8〜14日が48人、15日以降が144人となっています。その他(届出の取下げなど)は539人です。
所在確認と死亡確認を合わせた1万6729人のうち、受理から3日以内に所在が確認された人は1万5856人(94.8%)に上ります。
日数が短ければ短いほど、安心につながります。姿が見えないと気づいた時点で、早めに動くことが大切です。
3. 発見のきっかけは民間通報が約半数。地域の目が支えに
警察庁の資料によると、所在確認等がされた1万7268人のうち、発見のきっかけが民間通報だった人は8114人(47.0%)でした。地域住民や店舗からの連絡が、発見につながっています。
4. 行方不明に気づいたときの注意点は3つ。警察への相談・情報の準備・地域の仕組み
家族が最初にとる行動で押さえておきたい注意点を、3つにまとめます。
4.1 注意点1:まず最寄りの警察署に相談し、行方不明者届を出す
親の姿が見当たらないと気づいたら、迷わずすぐに行動することが大切です。最寄りの警察署に相談し、行方不明者届を出します。
4.2 注意点2:氏名・服装・特徴と、直近の写真を用意する
氏名や年齢、服装、身体的な特徴は、できるだけ正確に伝えましょう。普段よく行く場所や、帽子や眼鏡を着用した直近の写真があると、捜索の手がかりになります。
持ち物や衣類への記名も備えの一つです。ただし、氏名や連絡先は人目につきにくい内側のタグなどに書くなど、個人情報に配慮しましょう。
4.3 注意点3:自治体の事前登録の仕組みを確認する
東京都世田谷区の例で見ると、「せたがや一人歩きSOSネットワーク」があります。
本人や家族が、地域社協事務所などで事前に登録しておく仕組みです。行方不明になったときは、家族が社会福祉協議会に連絡すると、協力者へSOSメールが配信されます(配信時間は午前7時〜午後7時)。
世田谷区は、区のホームページで「認知症高齢者の行方不明への対応と備え」も案内しています。お住まいの自治体にも同様の案内がないか、確認しておくと安心です。
5. 介護保険の福祉用具貸与とGPS端末。自治体の費用の実例
5.1 介護保険で借りられるのはどんな機器?
介護保険の福祉用具貸与には、「認知症老人徘徊感知機器」が含まれます。福祉用具貸与は原則として要介護2以上が対象です。
自治体の運用資料では、要支援や要介護1の人でも、医師の所見やサービス担当者会議などを経て市区町村が必要と確認した場合に、例外的に利用できる扱いが示されています。
利用の可否は保険者である市区町村が判断するため、まず担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しましょう。自己負担は介護保険の自己負担割合に応じた額で、金額は事業者によって異なります。
見落としやすいのは、この感知機器と、位置を探すGPS端末は別のものという点です。自治体の運用資料では、GPS機能付きの機器は、機能が分離できる場合に限り、種目に相当する部分だけが給付対象とされています。
5.2 GPS端末の費用はいくら?(文京区のサービス例)
GPS端末は、自治体が事業者と協定を結んで案内している例があります。東京都文京区では、区内に住所があり、認知症により行方不明になるおそれがあって、要支援または要介護の認定を受けている人が対象です。
申込みにかかる経費は区が全額を助成する一方、月額の利用料は利用者の負担です。協定事業者のサービスでは、月額1320円や3300円といった例が示されています。たとえば月額1320円のサービスを1年間使うと、利用料は1万5840円(1320円×12か月)です。月額3300円なら3万9600円(3300円×12か月)になります。
専用シューズ(9900円)や靴の加工(1万7600円)が必要なサービスもあります。料金や助成の内容は、自治体や事業者によって異なります。
警察庁の資料では、GPS機器等の活用で所在確認等がされた139人(所在確認136人、死亡確認3人)のうち、118人(84.9%)が受理当日に所在確認されています。
ただし、この数字はGPS機器等を活用して確認された人だけを集計したもので、すべての利用者の確率を示すものではありません。
お住まいの市区町村の高齢福祉の窓口や地域包括支援センターで、助成の有無を確認してみましょう。
6. まとめにかえて|家族の備えと行動手順を確認しておきましょう
- 氏名や服装、直近の写真を、日頃から整理しておく:いざというときに、速やかに情報を伝えられます。
- 姿が見えないと気づいたら、迷わず警察に相談し、行方不明者届を出す:早めの行動が大切です。
- 自治体の事前登録制度や、GPS端末の助成の有無を確認する:自治体によって内容が異なります。
家族だけで抱え込まず、地域や公的制度を頼りながら、早めの備えを進めてみてください。
本記事は、警察庁などの公表資料にもとづく一般的な情報提供を目的としています。
介護保険の給付や自治体の助成制度の内容は、お住まいの市区町村や個々の状況によって異なり、変更されることもあります。行方不明の際は警察の指示に従い、制度の利用については、担当のケアマネジャー、市区町村の窓口、地域包括支援センターなどにご確認ください。