ただ、対面証券会社・銀行で投資信託を購入すると大なり小なり手数料が掛かってくるわけです。筆者は金融商品の購入に手数料は払いませんが、手数料を払わないというポリシーがまだまだ一般化しているとは思いません。

販売手数料の対価は販売会社を通して金融商品を購入することの付加価値ですが、手数料率以上の付加価値(端的にいえば儲かるかどうか)がなければ、手数料を払う意味がありません。

日本でも、日経平均株価や米国S&P500指数に連動するインデックスファンドには実質的に販売手数料を設定していないものが多くなり、信託報酬(運用会社の運用報酬)も年間100分の数%(例:年0.06%)という事例も出てきています。

しかしながら、対面金融機関で販売されている投資信託は、いまだに販売手数料3%、年間信託報酬1.5%程度のコストがかかるものがほとんどです。中身の問題は別にして、こうした手数料が高いイメージのある投資信託は敬遠されているのかもしれません。

3. 投資信託は長期運用されていない

個別株式投資では6カ月くらいが“長期”という方もいらっしゃいますが、投資信託の基本的な運用手法は長期分散投資です。

投資信託の運用における“長期投資”は5年、10年といった単位のはずですが、実際には3年未満という分析が出ています(参考:金融庁「投資信託等の販売会社における顧客本位の業務運営のモニタリング結果について」平成30年9月26日)。

この結果においては、顧客が望んで解約したのか販売会社が他商品を勧めて解約させたのかは不明ですが、実際問題として投資信託に投資して3年未満でプラスの運用成果を残すのはかなり困難でしょう。

また、投信分析会社・モーニングスターのデータベースが分析対象にしている投資信託は4,931本ですが、そのうち10年以上運用されている投資信託は1889本(38%)、20年以上は249本(5%)、30年以上はたった36本(0.7%)にしか過ぎません。

これまでは年金的な長期運用をしようと思っても、そもそも30年以上投資できる投資信託がなかったわけですから、投資信託で長期投資できるわけがなかったのです。

とまあ辛口の意見になりましたが、実のところ個人の長期資産形成において投資信託は間違いなく使える金融商品です。

NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人確定拠出年金)などの非課税制度が適用されているのも投資信託です。加えて、米国の事例を持ち出すまでもなく、これからも販売手数料や信託報酬はさらに低下傾向にありますので、コスト面で個人が有利になっていく状況に変わりはありません。

結局、個人がしっかり資産形成したいと思うなら、ご自身で選べるようになることが肝要なのです。このように、ご自身の資産形成をしっかり考えてみたいということでしたら、一度筆者が運営する一般社団法人日本つみたて投資協会のウェブサイトをご覧くださいね。

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太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)