田中貴金属工業が2026年10月9日9時30分に公表した金の店頭買取価格は、1グラムあたり2万2954円(税込)でした。金価格が歴史的な高水準にあるなか、手元のアクセサリーや金製品を売ろうと考える人も多いのではないでしょうか。
一方で、国民生活センターは2026年9月、店舗での貴金属等の買取をめぐるトラブルに注意を呼びかけました。2025年度の相談件数は937件と、5年前の約5.7倍に急増しています。
「訪問買取ならクーリング・オフできるのに、店舗買取ではできない」というのは本当なのでしょうか。
結論から言うと、本当です。
業者が自宅に来る訪問買取(※法律上の正式名称は、業者が買い取る行為を指して「訪問購入」と呼びます)には8日間のクーリング・オフ制度が定められていますが、自分から足を運ぶ店舗での買取は原則として対象外となります。
この記事では、足元の金相場の動向とともに、店舗買取と訪問買取(訪問購入)それぞれで守られるルールの違いや、売却時に後悔しないための備えを国民生活センターや消費者庁の資料をもとに解説します。
1. 金の店頭買取価格、2026年10月9日は1グラム2万2954円
店舗買取でも訪問買取でも、提示された査定額が妥当かどうかを見極めるには、基準となる「公表価格」を知っておくことが欠かせません。参考までに、直近の金価格の動きを確認してみます。
田中貴金属工業は、金地金を買うときの店頭小売価格と、売るときの店頭買取価格を毎日公表しています。
1.1 店頭小売価格2万3311円との差は、1グラムあたり357円
10月9日9時30分公表の金の店頭小売価格は1グラム2万3311円(税込)、店頭買取価格は2万2954円(税込)でした。いずれも前日から206円上がっています。
同じ日に買って売ると、1グラムあたり357円の差があります。この店頭価格には、売買の際に別途かかる手数料は含まれていません。
1.2 10月の金の店頭小売価格は、1グラム2万3105円から2万3503円で推移
10月に入ってからの店頭小売価格(税込)は、最も高かった7日が1グラム2万3503円、最も低かった8日が2万3105円でした。1日で400円前後動く日もあります。
- 10月1日:2万3328円
- 10月2日:2万3482円
- 10月5日:2万3381円
- 10月6日:2万3300円
- 10月7日:2万3503円
- 10月8日:2万3105円
- 10月9日:2万3311円
店頭価格は日中に変更されることもあります。売る日の価格は、その日の公表値で確かめる必要があります。
2. 店舗での貴金属等の買取をめぐる相談、2025年度は937件で5年前の約5.7倍
金の売却先として身近なのが、買取店などの店舗です。国民生活センターが2026年9月2日に公表した資料から、店舗での貴金属等の買取をめぐる相談の動きを見ていきます。
【店舗でのアクセサリーまたは貴金属等の買取に関する相談件数(PIO-NET登録分)】
- 2020年度:165件
- 2021年度:240件
- 2022年度:349件
- 2023年度:410件
- 2024年度:566件
- 2025年度:937件
- 2026年度(7月31日まで):294件
2.1 2025年度は前年度の約1.7倍、2026年度も前年同期を上回るペース
2025年度の937件は、前年度の566件の約1.7倍、2020年度の165件の約5.7倍です。
2026年度は7月31日までに294件で、前年同期の186件の約1.6倍になっています。件数には、消費生活センター等からの経由相談は含まれていません。
2.2 「査定のつもりが買取に」「重さを少なく量られた」という相談も
国民生活センターには、指輪の査定のつもりで店舗に行ったのに、しつこい勧誘を断り切れず買取に応じてしまったという相談が寄せられています。
査定額が希望に届かず返却を申し出たのに現金を強引に渡されたケースや、金のブレスレットの重さを少なく量られて査定されたケースもありました。
3. 自宅に来る訪問購入は、特定商取引法で8日間クーリング・オフできる
買取業者が自宅などを訪ねて物品を買い取る「訪問購入」は、特定商取引法の規制の対象です。消費者庁の特定商取引法ガイドで、訪問購入のルールを確認します。
3.1 勧誘を頼んでいない人の自宅での飛び込み勧誘は禁止
訪問購入では、事業者は勧誘の要請をしていない人に対して、自宅などで売買契約を勧誘することが禁止されています。査定を頼まれただけなのに、査定を超えて買取を勧誘することも法に抵触するとされています。
相手が契約しない意思を示したときは、その場で勧誘を続けることも、後日あらためて勧誘することも禁止されています。
3.2 契約書面を受け取った日から8日以内なら、クーリング・オフできる
訪問購入で契約した場合は、契約書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録でクーリング・オフ(申込みの撤回や契約の解除)ができます。
事業者が事実と違うことを告げたり、威迫したりして誤認・困惑させた場合は、8日を過ぎていてもクーリング・オフできます。
3.3 クーリング・オフ期間中は、品物の引渡しを拒める
訪問購入の売り手は、クーリング・オフ期間中であれば、事業者への品物の引渡しを拒むことができます。事業者は、期間中に売り手から直接品物を受け取るときは、引渡しを拒めることを告げなければなりません。
一方、国民生活センターは、事業者が自宅に来て行う訪問購入とは異なり、店舗での買取ではクーリング・オフは利用できないと説明しています。
10月9日の金の店頭買取価格は1グラム2万2954円で、店舗での貴金属等の買取をめぐる相談は2025年度に937件まで増えました。
自宅に来る訪問購入なら契約書面を受け取ってから8日以内のクーリング・オフと引渡しの拒絶ができますが、店舗での買取にクーリング・オフはありません。金を売るときは、売る場所によって守られるルールが違うことを、契約の前に確かめておくことができます。
ここからは、訪問購入の相談件数と事例を確認し、金を売る前に手元で確かめておきたい価格の見方と家族での備えを整理します。
【店舗買取でクーリング・オフができない理由】
特定商取引法のクーリング・オフは、自宅への突然の来訪など「不意打ち性」が高い取引から消費者を守る制度です。一方、店舗買取は「消費者が自らの意思で店舗に出向き、売却を判断した」とみなされるため、同法の対象外となりクーリング・オフが適用されません。「一度手放したら、原則として後から取り消せない」という点が店舗買取の最大の注意点です。
