4. 全国家計構造調査の金融資産は、種類ごとに金額の数え方が違う
70歳代の有価証券の割合が上がったと聞くと、株式や投資信託を新たに買った世帯が増えたように受け取れます。ただし全国家計構造調査の金融資産残高は、種類によって金額の数え方が違うため、割合の変化には評価額の動きも含まれます。
4.1 株式と投資信託は2024年10月末の時価、生命保険は払込総額で数える
総務省統計局の説明では、株式と投資信託は2024年10月末日現在の時価で見積もった額、生命保険・損害保険・簡易保険は加入してからの払込総額、貸付信託・金銭信託と債券は額面金額で数えています。
NISAやiDeCoで買った商品は、制度ではなく中身で分類されます。NISA口座で持つ投資信託は「投資信託」に入ります。
4.2 有価証券の割合の上昇には、買い足した分と値上がりした分の両方が含まれる
時価で数える株式や投資信託は、同じ数量を持ち続けていても、相場が上がれば残高が増えます。調査では、買い足した分と値上がりした分は分けて公表されていません。
実際は、追加の購入はなく、評価額が上がっているケースも考えられます。
5. 預貯金の中身も変わった。普通預金などの通貨性預貯金が44.4%増え、定期性預貯金は13.0%減った
全国家計構造調査では、総世帯の預貯金を通貨性預貯金(普通預金など)と定期性預貯金(定期預金など)に分けて公表しています。年齢階級別の内訳ではありませんが、預貯金の置き方の変化が表れています。
5.1 総世帯の通貨性預貯金は529.2万円、定期性預貯金は389.6万円
2024年の総世帯の預貯金は918.8万円で、内訳は通貨性預貯金が529.2万円、定期性預貯金が389.6万円でした。2019年は通貨性預貯金が366.6万円、定期性預貯金が447.6万円です。
- 通貨性預貯金:366.6万円→529.2万円(44.4%増)
- 定期性預貯金:447.6万円→389.6万円(13.0%減)
金融資産残高に占める割合で見ると、通貨性預貯金は28.6%から34.7%に上がり、定期性預貯金は35.0%から25.5%に下がりました。5年前は定期性預貯金のほうが多かったのが、2024年は通貨性預貯金が上回っています。
5.2 普通預金に置いたままのお金は、使う予定と照らし合わせて置き場所を決める
普通預金は出し入れが自由な分、生活費と、当面使う予定のないお金が同じ口座に混ざりやすくなります。銀行の窓口でも、満期を迎えた定期預金をそのまま普通預金に移し、しばらく動かしていない方がいらっしゃいました。
半年から1年分の生活費と、医療や住まいの修繕など近いうちに使う予定のお金を差し引いて、残りをどこに置くかを考えると、預貯金と有価証券の割合を自分の事情に合わせて決めやすくなります。
6. 金融資産の多い世帯ほど有価証券の割合が高く、第Ⅴ階級は28.3%
全国家計構造調査では、金融資産を保有する世帯を残高の少ない順に5つに分けた「金融資産残高五分位階級」別の構成割合も公表しています。こちらも総世帯の数字です。
6.1 預貯金の割合は第Ⅰ階級の77.7%から第Ⅴ階級の55.9%まで下がる
金融資産残高が最も少ない第Ⅰ階級(分位の上限は159万円)の平均は67.6万円で、預貯金が77.7%、有価証券は5.0%でした。最も多い第Ⅴ階級(第Ⅳ階級との境界は2400万円)の平均は5640.6万円で、預貯金が55.9%、有価証券が28.3%です。
- 第Ⅰ階級(平均67.6万円):預貯金77.7%、有価証券5.0%
- 第Ⅱ階級(平均314.0万円):預貯金73.9%、有価証券7.0%
- 第Ⅲ階級(平均745.8万円):預貯金70.6%、有価証券9.7%
- 第Ⅳ階級(平均1620.4万円):預貯金66.8%、有価証券13.2%
- 第Ⅴ階級(平均5640.6万円):預貯金55.9%、有価証券28.3%
世帯主の平均年齢は第Ⅰ階級が48.8歳、第Ⅴ階級が64.8歳で、金融資産の多い階級ほど高くなっています。
6.2 70歳代の有価証券22.7%は、平均の数字として読む
70歳代の世帯の有価証券22.7%は、金融資産の多い世帯も少ない世帯も合わせた平均の割合です。
金融資産が数百万円の世帯と数千万円の世帯とでは、預貯金と有価証券の持ち方が大きく違います。
平均の割合に合わせるのではなく、生活費として取り崩す分を先に確保し、それを超える部分について値動きを受け入れられるかを考えていきましょう。
7. まとめ
家計の金融行動に関する世論調査2025年では、70歳代の二人以上世帯の金融資産は平均2416万円、中央値1178万円でした。総務省統計局の令和6年全国家計構造調査では、世帯主が70歳代の世帯の金融資産残高は2006.1万円で、2019年から15.7%増えています。
70歳代の世帯の金融資産に占める有価証券の割合は16.9%から22.7%に上がりましたが、株式や投資信託は時価で数えるため、値上がりの分も含まれます。総世帯では、定期性預貯金が減り、普通預金などの通貨性預貯金が増えていました。
手元の通帳と取引残高報告書で、今の預貯金と有価証券の金額、それぞれを何に使う予定かを一度書き出してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査2025年」
- 総務省統計局「令和6年全国家計構造調査 所得に関する結果、家計資産・負債に関する結果及び年間収入・資産分布等に関する結果 結果の概要」
- 総務省統計局「令和6年全国家計構造調査の結果」
和田 直子