年を取った親の世話をするために、子が実家に戻って同居する。そのとき親が生活保護を受けていたり、これから受けようとしていたりすると、同居した子の収入も含めて保護の要否が判断されるのかが気になります。
生活保護は世帯を単位として行うのが原則です。ただし、厚生労働省の通知には、同じ世帯にいても「世帯分離」をして差しつかえない場合が定められており、親だけが保護を受けられることがあります。
この記事では、厚生労働省が2026年10月7日に公表した被保護者調査で生活保護を受けている世帯の内訳を確認したうえで、世帯単位の原則と世帯分離の条件を、生活保護法と厚生労働省の通知にそって整理します。
1. 生活保護を受けている世帯は令和8年7月分で164万4102世帯、高齢者世帯が55.2%
厚生労働省の「被保護者調査(令和8年7月分概数)」によると、生活保護を受けている世帯は164万4102世帯で、前年同月より3516世帯(0.2%)少なくなりました。生活保護を受けている人は196万9655人、人口100人あたりの保護率は1.60%です。
1.1 高齢者世帯の93.5%は単身世帯
保護を一時的に停止している世帯を除いた163万5284世帯を世帯類型別に分けると、次のとおりです。
- 高齢者世帯:90万3116世帯(55.2%)
- 障害者・傷病者世帯:41万8114世帯(25.6%)
- その他の世帯:25万9162世帯(15.8%)
- 母子世帯:5万4892世帯(3.4%)
高齢者世帯90万3116世帯のうち、単身世帯は84万4423世帯です。高齢者世帯に占める割合は93.5%で、163万5284世帯全体に対しては51.6%にあたります。
2. 生活保護は世帯単位が原則。同じ住居で生計を一にする人は同じ世帯
生活保護の保護費は、厚生労働大臣が定める基準で計算した最低生活費と世帯の収入を比べ、収入が最低生活費に満たないときにその差額が支給されます。この「世帯」をどう決めるかで、保護を受けられるかどうかも、保護費の額も変わります。
2.1 生活保護法第10条は世帯単位の原則と、個人単位の例外を定めている
生活保護法第10条は、保護は世帯を単位としてその要否と程度を定めるとしています。そのうえで、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができるとしています。
2.2 同一の住居に住み生計を一にしている人は、原則として同じ世帯と認定される
厚生労働省の通知「生活保護法による保護の実施要領について」は、同一の住居に居住し、生計を一にしている人は、原則として同一世帯員として認定するとしています。住まいが同じかどうか、生計が同じかどうかという暮らしの実態で認定されます。
住まいが別でも、出かせぎや就労のための寄宿、病気治療のための入院などの場合は、同じ世帯として扱われます。
3. 生活保護の「世帯分離」、同じ世帯でも認められる場合がある
同じ通知は、同一世帯に属していると認定されるものでも、一定の場合には世帯分離して差しつかえないとしています。世帯分離をすると、同じ家に住んでいても、保護の要否や程度を別々に判断することになります。
3.1 生活保持義務関係は、夫婦の間と、親と中学3年以下の子
世帯分離の条件には「生活保持義務関係」という言葉が出てきます。通知では、夫婦の間と、親と未成熟の子(中学3年以下の子)の関係を指しています。成人した子と親の関係は、ここには含まれません。
3.2 親の世話を目的に同居した子は、世帯分離の対象になりうる
通知が挙げる場合のひとつが、保護を要しない人が、世帯員の日常生活の世話を目的として被保護世帯に転入した場合で、同一世帯として認定することが適当でないときです。転入した人が、世帯員のだれとも生活保持義務関係にない場合に限られます。
厚生労働省の「生活保護制度に関するQ&A」も、両親を介護するために同居したいという質問に対し、両親だけ保護を受けることができる場合があると答えています。
3.3 寝たきりなど常時の介護が必要な人がいる場合も、条件つきで分離できる
保護を要する人が、いわゆる寝たきりや重度の心身障害などで常時の介護や監視を要する場合も、世帯分離の対象として挙げられています。世帯分離を行わないとすれば、その世帯全体が要保護世帯となる場合に限るなど、条件がついています。
通知は、親の世話のための転入などについて、特に機械的に取り扱うことなく、世帯の状況と地域の生活実態を十分考慮したうえで実施するよう求めています。当てはまるかどうかは、福祉事務所が個々の世帯ごとに判断します。
生活保護は世帯単位が原則で、同じ住居に住み生計を一にしている人は同じ世帯と認定されます。それでも、親の世話を目的に同居した成人の子など、世帯分離をして親だけが保護を受けられる場合が通知で定められています。
同居を始める前後で、世帯の認定がどうなるかは保護費の額にも関わります。親と同居する予定がある人は、福祉事務所に早めに相談しておくと安心です。
ここからは、生活扶助基準額の例で単身と夫婦の違いを確認したうえで、親と同居する前に家計の面で整えておきたいことを見ていきます。
親の介護や世話のために同居しても、生活実態として家計が混ざり「生計を一にしている」と判断されると、子の収入が合算されて親の保護費減額や受給停止につながるリスクがあります。「世帯分離」を認めてもらうには、食費や光熱費などの分担ルールを明確にし、生活費の口座や家計管理を完全に分けている実態(客観的な記録)を示すことが不可欠です。同居届を出す前に担当ケースワーカーや福祉事務所へ足を運び、「世話目的の同居であること」と「生計を別にする計画」をあらかじめすり合わせておきましょう。
