70歳を過ぎると、通院する診療科や回数が増えて、毎月の医療費が気になってくる人もいるでしょう。

厚生労働省の資料「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」によると、2026年8月診療分から70歳以上の自己負担限度額が改定されました。住民税非課税世帯の区分Ⅱでは、外来の上限が月8000円から1万1000円に上がった一方で、外来の年間上限9万6000円が新しく設けられています。

この記事では、国民健康保険に加入している70〜74歳で住民税非課税世帯の人に向けて、窓口負担の割合と区分ごとの限度額、区分Ⅰ・Ⅱの決まり方を順に解説します。

1. 【70〜74歳の国民健康保険】窓口負担は原則「2割」

まずは、国民健康保険に加入している70〜74歳の人が、病院や薬局の窓口で支払う割合と、高額療養費の上限のしくみを確認します。

1.1 窓口で支払う割合

70〜74歳の窓口負担は原則2割です。課税所得が145万円以上ある現役並み所得者は3割ですが、収入の合計額が520万円未満(1人世帯は383万円未満)なら2割のままです。

75歳になると後期高齢者医療制度に移るため、国民健康保険で70歳以上の区分が使われるのは74歳までです。

1.2 高額療養費の上限は2段階

1か月の医療費の支払いが自己負担限度額を超えた場合、超えた分は高額療養費として支給されます。

70歳以上には、個人ごとに外来だけを見る上限と、外来と入院を合わせて世帯ごとに見る上限の2つがあります。どちらの上限が当てはまるかは、所得区分で決まるのです。

2. 住民税非課税世帯の自己負担限度額【2026年8月診療分から】

続いて、住民税非課税世帯の区分Ⅱと区分Ⅰについて、2026年8月診療分からの限度額を改定前と比べてみましょう。

区分Ⅱは外来の上限が1万1000円に上がり、外来の年間上限9万6000円が新設された1/2

国民健康保険の70〜74歳で住民税非課税世帯の区分Ⅱ・区分Ⅰについて、2026年7月診療分までと8月診療分からの自己負担限度額を比べた表

出所:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」を参考にLIMO編集部作成

【区分Ⅱ(住民税非課税)】

  • 外来(個人ごと):8000円→1万1000円(年間上限9万6000円)
  • 外来+入院(世帯ごと):2万4600円→2万5700円(年間上限29万円)

【区分Ⅰ(所得が一定以下)】

  • 外来(個人ごと):8000円→8000円
  • 外来+入院(世帯ごと):1万5000円→1万5700円(年間上限18万円)

2.1 区分Ⅱ(住民税非課税)

区分Ⅱの外来の上限は月1万1000円、外来と入院を合わせた世帯の上限は月2万5700円です。

同じ資料では、2027年8月診療分から区分Ⅱの外来の上限を1万3000円にする予定も示されています。年間上限の9万6000円は、2027年8月以降も同じ額です。

2.2 区分Ⅰ(所得が一定以下)

区分Ⅰの外来の上限は月8000円で、今回の改定でも据え置かれました。外来と入院を合わせた世帯の上限は、1万5000円から1万5700円に上がっています。

2.3 外来の年間上限「9万6000円」

区分Ⅱの外来には、8月から翌年7月までの1年間で9万6000円という年間上限ができました。改定前の月8000円を12か月続けた額と同じです。

厚生労働省は、毎月上限額まで利用する人の負担は変わらないと説明しています。年間上限を超えて支払った分は、あとから保険者が払い戻すしくみです。

3. 国民健康保険の区分Ⅰ・Ⅱは毎年8月1日に切り替わる

限度額は、区分Ⅱと区分Ⅰのどちらに当たるかで大きく変わります。ここでは区分の条件と、切り替わる時期をチェックしていきます。

2026年8月から2027年7月までの区分は、2025年の所得で決まる2/2

国民健康保険の70〜74歳の区分Ⅰ・Ⅱが前年の所得で毎年8月に切り替わる流れと、区分Ⅱ・区分Ⅰの条件をまとめた図

出所:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」などを参考にLIMO編集部作成

3.1 区分Ⅱと区分Ⅰの違い

区分Ⅱになるのは、世帯主と国民健康保険に加入している人の全員が住民税非課税の世帯です。判定には、この全員の住民税の情報が使われます。

区分Ⅰは、区分Ⅱの条件に加えて、世帯の各所得が0円になる世帯です。年金の所得は控除額を82万6500円として計算するため、年金収入だけの人なら82万6500円以下かどうかが目安になります。

3.2 年金収入の基準は2026年8月から82万6500円

この基準額は、老齢基礎年金の満額に相当する金額をもとに決められています。厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会の資料では、80万6700円から82万6500円に見直す方針が示されました。

たとえば福岡市の国民健康保険の案内では、2025年8月から2026年7月までは80万6700円、2026年8月からは82万6500円として計算すると書かれています。

3.3 8月から翌年7月までの1年単位

国民健康保険の高額療養費の区分は、前年の所得で判定されます。8月1日に区分が切り替わり、1月から7月の診療分は前々年の所得で見ることになります。

2026年8月から2027年7月までの区分は、2025年1月から12月の所得で決まります。前年の所得が変われば、8月から区分Ⅱや区分Ⅰに入ることも、外れることもあるのです。

住民税非課税世帯の70〜74歳は、2026年8月診療分から区分Ⅱの外来の上限が1万1000円になり、年間上限9万6000円も加わりました。区分Ⅰの外来は8000円のままです。

自分がどちらの区分に当たるかは、前年の所得で毎年8月に決まります。住民税の課税・非課税の状況とあわせて、お住まいの市区町村の国民健康保険の窓口で確かめられます。

ここからは、元公務員として国民健康保険を担当していた経験をもとに、8月の切り替えで気をつけたい点と、窓口で限度額までの支払いにする方法を見ていきます。

太田 彩子

筆者が元公務員として国民健康保険を担当していた頃も、8月に区分が変わってから窓口で驚く人がいました。区分は世帯主と加入者全員の住民税で決まるので、家族の所得の変化もあわせて確認しておくと安心です。