5. 扶養を外れた年度の国民健康保険料は、扶養に入っていた前年の所得で決まる
国民健康保険料は、その年度の収入ではなく前年の所得をもとに計算されます。扶養を外れた直後と翌年度とで、保険料の水準が変わるのはこのためです。
5.1 年度の途中で加入すると、加入した月からの月割で納める
大田区では、年度の途中で加入した場合、月割で計算した保険料を納めます。たとえば前年の給与収入が120万円で、10月に扶養を外れて加入した40歳未満の人なら、算定基礎額は12万円です。
大田区の令和8年度の料率で年額を計算すると7万9769円で、10月から3月までの6か月分ならおよそ4万円になります。
5.2 翌年度は、扶養を外れて増えた収入で計算し直される
翌年度の保険料は、扶養を外れた年の1年分の所得をもとに計算し直されます。収入が130万円を超えていれば、算定基礎額も大きくなり、1年分の保険料を納めることになります。
保険料の計算を担当していた頃、窓口で多かったのは「去年の秋から国保に入ったら安かったのに、今年は倍以上になった」という相談でした。加入した年度は月割で、しかも扶養に入っていた頃の所得で計算されていたためで、間違いではないと説明すると納得される方がほとんどでした。
6. 国民健康保険の通知は、国民健康保険に加入していない世帯主あてにも届く
扶養を外れた妻だけが国民健康保険に入り、夫は勤務先の健康保険に入ったままという世帯もあります。この場合も、国民健康保険の世帯主は住民票上の世帯主です。
6.1 夫が会社員でも、国民健康保険料の通知は世帯主あてに届く
大田区は、世帯主が国民健康保険に加入していない場合でも、加入者本人ではなく世帯主あてに通知すると案内しています。国民健康保険に加入していない世帯主は「擬制世帯主」と呼ばれます。
窓口では、夫あてに届いた通知を見て「夫は会社の健康保険なのに、なぜ」と驚いて来られる方もいました。届いた通知は、国民健康保険に入った妻の保険料のものです。
6.2 均等割の7割・5割・2割の軽減は、世帯主の所得も含めて判定する
均等割の軽減は、世帯主と加入者全員の前年の所得の合計で判定します。世田谷区も、軽減判定の所得には擬制世帯主の所得を含むと案内しています。
大田区の2割軽減の基準は「43万円+(加入者数×57万円)+(給与所得者等の数-1)×10万円」です。妻1人が加入し、夫婦2人に給与収入がある世帯なら110万円です。妻の給与所得65万円に、夫の給与所得が45万円を超えて加わると、この基準を超えます。
7. 扶養を外れる前に、勤務先と市区町村の国民健康保険の窓口で確かめたい3つのこと
扶養を外れるかどうかを決める前に、次の3つを確かめておくと、加入の手続きと保険料の見通しが立てやすくなります。
- 勤め先が従業員51人以上の企業か、自分の週の所定労働時間が20時間以上か(勤務先の健康保険に入れるかどうか)
- 前年の所得で計算した国民健康保険料の見込み額と、加入した月からの月割の額(市区町村の国民健康保険の窓口)
- 扶養を外れた日が分かる書類(資格喪失証明書など)を、配偶者の勤務先から受け取れる時期
国民健康保険の加入の届出は、異動があった日から14日以内に世帯主が行うと定められています。届出が遅れてもさかのぼって加入することになり、保険料はさかのぼって納めます。
自治体で働いていた頃、届出が数か月遅れて、まとめて数か月分の保険料を請求された方もいました。扶養を外れることが決まったら、早めに窓口へ相談してください。
8. まとめ
2026年8月分の毎月勤労統計調査では、パートタイム労働者の時間当たり給与は1472円でした。時給が上がり、健康保険の扶養の基準である130万円に近づく人もいるでしょう。
扶養を外れて国民健康保険に入ると、保険料は前年の所得をもとに計算されます。大田区の令和8年度の料率では、前年の給与収入130万円なら40歳未満で年9万349円、40歳から64歳で年11万3495円です。
加入した年度は月割で、翌年度は扶養を外れた年の所得で計算し直されます。通知は世帯主あてに届き、軽減の判定にも世帯主の所得が含まれます。働き方を変える前に、勤務先と市区町村の窓口で自分の場合の見込み額を確かめておきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年8月分結果速報」
- 厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」
- 日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」
- 国税庁「No.1410 給与所得控除」
- 大田区「国民健康保険料計算方法」
- 大田区「国保料の負担軽減(減額・免除)」
- 大田区「よくあるご質問」
- 大田区「大田区国民健康保険の加入・喪失・再交付の手続き」
- 世田谷区「保険料の軽減・減免について」
太田 彩子