4. 特定福祉用具購入費は償還払いが基本、受領委任払いなら自己負担分だけで買える
介護保険で福祉用具を買うときの支払い方は、市区町村によって2通りあります。杉並区の案内をもとに、それぞれの流れを確認します。
4.1 償還払いはいったん全額を払い、あとから介護保険の分が戻る
償還払いでは、利用者が販売事業者に代金の全額を支払い、あとから市区町村に申請して保険給付分を受け取ります。
杉並区では、支給申請書、本人名義の領収証、用具のパンフレット、販売計画書が必要です。
4.2 受領委任払いは自己負担分だけを払う
受領委任払いでは、利用者は自己負担割合の分だけを支払い、残りは介護保険から事業者に支払われます。杉並区では、新規や区分変更の申請中でないこと、保険給付の差し止めの記載がないことなどが利用の要件です。
受領委任払いを使える事業者や要件は市区町村ごとに決まっているので、購入する前に窓口かケアマネジャーに確認しておきます。
5. 特定福祉用具購入費の10万円の枠を、自己負担割合ごとに計算する
購入費の支給限度額は1年で10万円で、支給されるのは費用の9割から7割です。1年の間に10万円分を購入した場合を、自己負担割合ごとに計算します。
- 1割負担:介護保険から9万円、自己負担1万円
- 2割負担:介護保険から8万円、自己負担2万円
- 3割負担:介護保険から7万円、自己負担3万円
10万円を超えて購入した分は、全額が自己負担になります。枠は4月から翌年3月までの1年ごとなので、3月に買うか4月に買うかで、どちらの年度の枠を使うかが変わります。
同じ品目をもう一度買うことは原則として対象外ですが、杉並区では身体の状況が変わったときや破損したときは相談に応じるとしています。
6. 杖や歩行器を借りるか買うかは、使う期間と支払いの形で考える
介護が始まると、介護サービスの細かな支払いが増えて、何にいくら払っているのかを把握しづらくなるかもしれません。
福祉用具の貸与は毎月の利用料の自己負担分を払い続け、購入は一度にまとめて支払います。選択制の4品目では、次の点を家族で確かめておくと選びやすくなります。
- 杖や歩行器を、この先どのくらいの期間使いそうか
- 体の状態が変わったとき、別の用具に替える可能性があるか
- その年度の10万円の購入費の枠を、腰掛便座や入浴補助用具などでどれだけ使う予定か
貸与で始めた場合も、6か月以内のモニタリングのあとで販売に移ることができます。最初から決めきれないときは、まず借りて様子を見るという選び方もあります。
7. 親の福祉用具の費用を家族が払うときは、領収証の名義と支払う口座を確かめる
親の代わりに子どもが店頭で代金を払うと、誰のお金で払ったのかが後から分かりにくくなります。償還払いの申請では、杉並区のように本人名義の領収証を求める市区町村があります。
立て替えた場合は、親の口座からいつ精算したかをメモに残し、払い戻しの振込先も親の口座にしておくと、お金の流れが通帳で追えます。兄弟姉妹で費用を分けている家庭では、介護に使うお金の口座を1つ決めておくと、あとで説明しやすくなります。
8. まとめ
令和8年4月審査分の介護給付費等実態統計では、福祉用具貸与の利用者は219万1700人で、居宅サービスを受けた人の61.0%でした。
特定福祉用具購入費の上限は4月から翌年3月までの1年で10万円です。2024年4月からは固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖について、貸与と購入のどちらかを選べるようになりました。
借りるか買うかは、使う期間の見通しと支払いの形で決まります。親が使う用具について、担当のケアマネジャーに一度相談してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「令和7(2025)年度 介護給付費等実態統計の概況(令和7(2025)年5月審査分~令和8(2026)年4月審査分)」
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」
- 厚生労働省「福祉用具貸与と特定福祉用具販売の選択制について」
- 世田谷区「軽度者に対する福祉用具貸与の取扱いについて」
- 杉並区「居宅介護(介護予防)特定福祉用具購入費の支給」
- 大田区「福祉用具貸与・販売の選択制について」
和田 直子