親の足腰が弱ってきたとき、最初に介護保険で使うことが多いのが、手すりや歩行器、車いすといった福祉用具です。

厚生労働省が2026年9月30日に公表した「令和7年度 介護給付費等実態統計の概況」によると、令和8年4月審査分で福祉用具貸与を利用した要介護の人は219万1700人でした。居宅サービスを受けた人の61.0%にあたります。

この記事では、福祉用具貸与の利用者数と借りられる用具の種類、購入費の上限、2024年4月に始まった杖や歩行器の「貸与と販売の選択制」を整理します。

1. 介護保険の福祉用具貸与は219万1700人が利用、居宅サービス受給者の61.0%

介護給付費等実態統計の統計表から、介護保険の居宅サービスをサービスの種類別に何人が利用しているかを見ていきます。数値はいずれも令和8年4月審査分です。

1.1 福祉用具貸与の受給者は訪問介護や通所介護より多い

要介護1〜5の人が利用する介護サービスのうち、居宅サービスを受けた人は359万4400人でした。そのうち福祉用具貸与を利用した人は219万1700人です。

訪問介護の113万2300人、通所介護の121万9000人と比べても、福祉用具貸与の利用者は大きく上回っています。

介護保険の居宅サービスの種類別にみた受給者数(令和8年4月審査分)1/2

介護保険の居宅サービスの種類別受給者数を示した横棒グラフ。令和8年4月審査分で、福祉用具貸与219万1700人、居宅療養管理指導125万6700人、通所介護121万9000人、訪問介護113万2300人、訪問看護76万2800人、通所リハビリテーション41万5100人、短期入所32万8000人

出所:厚生労働省「令和7(2025)年度 介護給付費等実態統計の概況」統計表2をもとにLIMO編集部作成

  • 福祉用具貸与:219万1700人
  • 居宅療養管理指導:125万6700人
  • 通所介護:121万9000人
  • 訪問介護:113万2300人
  • 訪問看護:76万2800人
  • 通所リハビリテーション:41万5100人
  • 短期入所:32万8000人

1人が複数のサービスを利用することがあるため、サービスごとの人数を足しても居宅サービスの受給者数とは一致しません。ケアプランを作る居宅介護支援(303万9000人)は、このグラフに含めていません。

1.2 要支援1・2の介護予防福祉用具貸与は75万800人で、介護予防居宅サービスの74.6%

要支援1・2の人が利用する介護予防サービスでも、福祉用具の利用者は多くなっています。令和8年4月審査分で介護予防居宅サービスを受けた人は100万6600人で、そのうち介護予防福祉用具貸与は75万800人でした。

介護予防訪問看護の14万5200人、介護予防通所リハビリテーションの19万8200人と比べても、福祉用具の利用者が突出しています。

2. 介護保険で借りられる福祉用具は車いすや手すり、歩行器など。要支援1・2と要介護1は一部が原則対象外

介護保険の福祉用具貸与で借りられる用具は、厚生労働省が種目を定めています。ただし、要介護度によっては原則として借りられない用具があります。

2.1 福祉用具貸与の対象は車いすから自動排泄処理装置まで

厚生労働省の「福祉用具・住宅改修」のページでは、福祉用具貸与の対象として次の用具が挙げられています。

  • 車いす(付属品を含む)
  • 特殊寝台(付属品を含む)
  • 床ずれ防止用具
  • 体位変換器
  • 手すり
  • スロープ
  • 歩行器
  • 歩行補助つえ
  • 認知症老人徘徊感知機器
  • 移動用リフト(つり具の部分を除く)
  • 自動排泄処理装置

貸与の手すりやスロープは、工事をともなわずに置いて使うものです。壁に取り付ける手すりなど工事が必要なものは、住宅改修として別の扱いになります。

2.2 要支援1・2と要介護1は、車いすや特殊寝台の貸与が原則として対象外

世田谷区の案内によると、要支援1・2と要介護1の人は、次の用具の貸与が原則として保険給付の対象外です。

  • 車いす及び車いす付属品
  • 特殊寝台及び特殊寝台付属品
  • 床ずれ防止用具及び体位変換器
  • 認知症老人徘徊感知機器
  • 移動用リフト(つり具の部分を除く)
  • 自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引する機能のものを除く)

自動排泄処理装置は、要介護2・3の人も原則として対象外です。ただし、厚生労働省が示した状態像に当てはまる人は、例外的に貸与が認められています。

3. 介護保険の特定福祉用具購入費は1年で10万円まで、杖や歩行器は2024年4月から貸与と購入を選べる

入浴や排せつに使う用具などは、介護保険では借りるのではなく、購入費の支給の対象になっています。2024年4月からは、一部の用具で貸与と購入を選べるようになりました。

3.1 特定福祉用具購入費の上限は4月から翌年3月までの1年間で10万円

購入費の支給の対象になるのは、腰掛便座、自動排泄処理装置の交換可能部品、排泄予測支援機器、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部分です。

杉並区の案内では、要支援1・2と要介護1〜5の人が対象で、支給限度額は4月から翌年3月までの1年間で10万円です。購入にかかった費用の9割から7割が介護保険から支給されます。

介護保険の福祉用具の「借りる」と「買う」、2024年4月からの選択制2/2

介護保険の福祉用具の使い方3通りを並べた図。福祉用具貸与は車いすや特殊寝台、手すりなどを月々借りる。特定福祉用具購入は腰掛便座や入浴補助用具などで、上限は4月から翌年3月の1年で10万円、費用の9割から7割が支給される。2024年4月からは固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖の4つについて、貸与と購入のどちらかを選べる

出所:厚生労働省「福祉用具・住宅改修」、杉並区「居宅介護(介護予防)特定福祉用具購入費の支給」をもとにLIMO編集部作成

3.2 固定用スロープ・歩行器・単点杖・多点杖は貸与と販売の選択制

2024年4月から、次の4つは貸与と販売のどちらかを選べるようになりました。比較的安く、購入したほうが利用者の負担を抑えられることが多い用具が選ばれています。

  • 固定用スロープ(持ち運びができる可搬型は除く)
  • 歩行器(車輪やキャスターが付いている歩行車は除く)
  • 単点杖(松葉づえは除く)
  • 多点杖

3.3 選択制では、ケアマネジャーの説明と医師などの所見をふまえて利用者が選ぶ

厚生労働省の資料では、選択制の流れは次のようになっています。まずケアマネジャーが利用者に制度の趣旨を説明し、医師などの所見をそろえたうえで、サービス担当者会議などで今後の方針を提案します。

貸与と販売のどちらにするかを決めるのは利用者です。貸与を選んだ場合は、利用開始時から6か月以内に少なくとも1回、福祉用具専門相談員が利用状況を確認し、その結果をふまえて貸与を続けるか販売に移るかを検討します。

介護保険の居宅サービスを受けている人の6割が福祉用具貸与を利用しています。杖や歩行器、固定用スロープは、2024年4月から借りるか買うかを選べるようになりました。

どの用具がどちらで使えるかは、担当のケアマネジャーか地域包括支援センターで確かめられます。購入費の支給の手続きは、住んでいる市区町村の介護保険の窓口が案内しています。

ここからは、購入費の支払い方と、借りるか買うかを決めるときに家族で確認しておきたいお金の流れを見ていきます。

和田 直子

杖や歩行器は、借りるか買うかで毎月の支払いと一度に出ていくお金の形が変わります。どのくらいの期間使いそうかを家族で話しておくと、選ぶときに迷いにくくなります。