3. 【移し先】iDeCo・転職先の企業型DC・DB・通算企業年金から選ぶ
厚生労働省の同じ資料によると、企業型DCのお金は、iDeCo、通算企業年金、転職先で導入している場合の企業型DC、転職先で導入していて条件を満たした場合のDBへ持ち運べます。いずれも、本人が申し出て移す形です。
通算企業年金は、退職などでDBや企業型DCを抜けた人の年金資産を企業年金連合会が引き受け、退職者などに向けて運用・給付する年金のひとつです。転職先に企業型DCやDBがない場合や、会社員を離れる場合は、iDeCoか通算企業年金が移し先の候補になります。
なお、国民年金基金連合会では、自動移換を減らす取り組みとして、企業型DCの資格を失ってから6か月以内に、iDeCoやほかの企業型DCに新たに加入したことが確認できた方については、移換の申し出がなくても移換の処理が行われます。すでに自動移換されている方も、iDeCoやほかの企業型DCへの新たな加入が確認できれば、同じように処理が行われます。
転職先のDBへ移せるかどうかは、転職先のDBの規約によって決まります。転職先に企業型DCやDBがあるか、受け入れができるかは、転職先の担当部署に確かめておくと確実です。
4. 【2026年4月から】会社の説明は「資格を失うと見込まれるとき」に。12月には拠出限度額も変わる
厚生労働省の「2025年の制度改正」によると、自動移換に関する会社(事業主)の説明の時期は、2026年4月1日から見直されました。これまでは、加入者が資格を失ったときや企業型DCが終わったときに説明することになっていました。
見直し後は、加入者が資格を失うことが見込まれるときや、企業型DCを終わらせようとするときに説明することになりました。退職などで資格を失う見込みの方や、終了する予定の企業型DCの加入者などへの説明が、会社に義務づけられています。退職の手続きの中で企業型DCの説明を受けたら、移し先と期限をその場でメモしておくと、あとで確かめ直すときの手がかりになります。
同じ2026年4月1日には、企業型DCのマッチング拠出(会社の掛金に上乗せして加入者が掛金を出す仕組み)で、加入者の掛金が会社の掛金を超えてはいけないという制限もなくなりました。
さらに、2026年12月1日には、iDeCoや企業型DC、国民年金基金で、毎月出せる掛金の上限(拠出限度額)の引き上げが予定されています。会社員や公務員などのiDeCoの拠出限度額は、企業年金と共通の枠にまとめられたうえで月額6.2万円に、自営業者などのiDeCoと国民年金基金の共通の枠は月額7.5万円になります。同じ日には、一定の要件を満たす60歳以上70歳未満の方がiDeCoに加入できるようにする見直しも予定されています。
5. 【退職の前後に】企業型DCで確かめておきたいことを順に整理
まず、退職が決まった段階で、会社から受ける企業型DCの説明の内容と、手続きの期限を書き留めておきましょう。厚生労働省の資料にある「資格を失ってから6か月」という期限は、退職日が決まれば、おおよその時期が見えてきます。あわせて、いま企業型DCにいくら積み立てられているかも確かめておくと、移し先を考えるときの手がかりになります。
次に、転職先が決まっている場合は、転職先に企業型DCやDBがあるかを確かめます。受け入れの条件は会社や規約によって異なるため、転職先の担当部署に聞いておくのが確実です。転職先に制度がない場合や、独立して働く場合は、厚生労働省の資料で持ち運び先に挙がっているiDeCoか通算企業年金が候補になります。
自分のお金が自動移換されているかどうか分からないときは、国民年金基金連合会から委託を受けた特定運営管理機関の「自動移換者専用コールセンター」に問い合わせることができます。受付は平日の9時から17時30分までで、土日・祝日と年末年始は利用できません。
転職や独立、定年後の再雇用など、これからの働き方が変わるたびに、企業型DCやiDeCoのお金の置き場所も変わることがあります。働き方の予定と、老後に向けてどの制度でお金を積み立てていくかを一緒に書き出しておくと、手続きの漏れを防ぐだけでなく、これからのマネープランを組み立てるときの土台にもなります。厚生労働省の「2025年の制度改正」にある12月からの拠出限度額の引き上げもあわせて確かめ、自分の働き方に合った積み立て方を考えておきたいところです。
6. まとめにかえて
厚生労働省の資料によると、企業型DCに入っていた方が転職や退職で加入者でなくなったときは、6か月以内に、お金をiDeCoや転職先の企業型DCなどに移すか、脱退一時金を請求する手続きが必要です。手続きをしないと自動移換となり、運用されないまま管理手数料がかかり、受け取りの開始が遅れることもあります。移し先は、iDeCo、転職先の企業型DC、DB、通算企業年金の4つから選ぶ形です。
厚生労働省の「2025年の制度改正」によると、2026年4月からは、会社が退職の見込まれる段階で説明をするように変わりました。2026年12月1日には拠出限度額の引き上げも控えています。退職を考え始めたら、積み立てた金額と移す先、手続きの期限を、ほかの手続きと一緒に確かめておくことが大切です。
7. 編集部よりコメント
自動移換は、手続きをしなかったときの受け皿として用意された仕組みです。ただ、移されたお金は運用されず、手数料もかかります。転職や退職のタイミングは、これまでの積み立てを見直す機会でもあります。
今年は、会社の説明の時期が早まり、年末には掛金の上限の見直しも控えるなど、確定拠出年金の制度が動く年です。
退職の前後は、退職金の受け取り方やこれからの収入の見通しなど、お金について考えることが一度に増える時期です。企業型DCの移し先も、その中のひとつとして並べておくと、全体の見通しを立てやすくなります。制度の変更点は、勤め先の担当部署や運営管理機関からの案内でも確かめながら、ご自身の働き方に合わせて手続きを進めていきましょう。
参考資料
宮野 茉莉子
