会社を辞めるときは、退職金の受け取りや健康保険・年金の切り替えなど、確かめることがいくつも重なります。勤め先で企業型確定拠出年金(企業型DC)に入っていた方は、これまで積み立ててきたお金の行き先も、そのひとつです。

企業型DCのお金は、退職などで加入者でなくなったあと、自分で移し先を選んで手続きをします。手続きをしないまま期限を過ぎると、お金は「自動移換」という形で別の機関に移され、運用されないまま置かれることになります。

2026年4月からは、この自動移換を減らすために、会社が説明をする時期も見直されました。退職金や健康保険の手続きにくらべて、企業型DCは期限を意識しにくい手続きのひとつかもしれません。転職や退職を考え始めた段階で、仕組みを知っておきたいところです。

本記事では、厚生労働省の資料をもとに、自動移換の仕組みと企業型DCのお金の移し先、2026年4月と12月の制度改正を順に整理します。

1. 【自動移換】企業型DCのお金は、加入者でなくなってから6か月以内に手続きを

厚生労働省の「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」によれば、転職や退職で企業型DCの加入者の資格を失った方は、6か月以内に手続きをする必要があります。

手続きの中身は、積み立てたお金(個人別管理資産)を、iDeCo、転職先の企業型DC、確定給付企業年金(DB)、通算企業年金のいずれかに移すことです。要件を満たしている場合は、脱退一時金を請求する方法もあります。

このどちらの手続きもしないまま6か月が過ぎると、お金は国民年金基金連合会(実際の事務は特定運営管理機関)に移されます。この仕組みが「自動移換」です。本人が選んだ移し先ではなく、決まった機関にお金が移されるという点が特徴です。

退職のときは、最後の給与や退職金、社会保険の切り替えなど、期限のある手続きが続きます。企業型DCの手続きもそのひとつとして、後回しにならないよう、6か月という期限を早めに頭に入れておきたいところです。

企業型DCのお金の移し先と、手続きをしなかったとき1/2

企業型DCのお金の移し先と、手続きをしなかったとき

出所:厚生労働省「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」をもとにLIMO編集部作成

2. 【自動移換されると】運用されず、管理手数料がかかり、受け取りの開始が遅れることも

同じく厚生労働省の資料によると、自動移換されたお金には、次の3つのことが起こります。

2.1 【自動移換で起こること】3つの点を一覧で確かめる

  • お金が運用されないまま置かれる
  • 管理手数料を負担することになる
  • 自動移換されている期間は、老後の給付を受け取る条件となる期間(通算加入者等期間)に数えられず、受け取りを始められる年齢が遅くなる場合がある

とくに3つ目は、目に見える金額の変化がないぶん気づきにくい点です。自動移換されたまま年数がたつと、その期間がまるごと数えられないことになるため、老後の受け取りの予定にも関わってきます。

手数料については、iDeCo公式サイトに掲載されている国民年金基金連合会の「自動移換にかかる手数料改定のお知らせ」で確かめられます。自動移換されるとき、自動移換されている間、あとからほかの制度へ移すときに、それぞれ手数料がかかる仕組みで、2026年4月1日には管理手数料などが見直されました。

厚生労働省のポータビリティのページによると、手数料や手続きのくわしい内容は、iDeCo公式サイトで確かめることになっています。企業型DCの加入者の資格を失ったときは、決められた期日までに、ほかの確定拠出年金への移換など、自分の考えに合った手続きをします。手数料の負担を避けるためにも、6か月という期限を意識しておくことが大切です。

宮野 茉莉子
企業型DCの手続きは、会社を辞めたあとに自分で進める部分が多い制度です。退職の前後は書類や連絡が一度に届くため、どれから手をつけるかを決めておくと、期限のある手続きを見落としにくくなります。自動移換は、手続きをしなかったときに自動で起こる仕組みなので、本人が気づかないまま時間が過ぎてしまうこともあります。管理手数料は1か月あたりでは小さな金額に見えますが、自動移換されている間は運用もされません。手続きを後回しにせず、早めに移し先を決めておきたいところです。退職の予定が見えてきた段階で、積み立ててきた金額と移し先の候補を、ほかの手続きと同じ一覧に書き出しておくと、期限のある作業として扱いやすくなります。