4. 寡婦年金と死亡一時金のどちらを選ぶか、夫の納付年数別の試算で比べる
寡婦年金と死亡一時金の両方の要件を満たす場合、受け取れるのはどちらか一方です。選ぶ前に、夫の保険料の納付年数によって受給額がどう変わるかを試算してみましょう。
4.1 寡婦年金を5年間受け取ると合計は死亡一時金の額を上回る
夫が第1号被保険者として保険料を納めた期間が10年・20年・30年・40年の場合について、寡婦年金の年額と5年分の合計、死亡一時金の額を並べました。
【10年(120月)納付の場合】
- 寡婦年金の年額:約15万8900円
- 寡婦年金の5年分の合計:約79万4300円
- 死亡一時金:12万円
【20年(240月)納付の場合】
- 寡婦年金の年額:約31万7700円
- 寡婦年金の5年分の合計:約158万8700円
- 死亡一時金:17万円
【30年(360月)納付の場合】
- 寡婦年金の年額:約47万6600円
- 寡婦年金の5年分の合計:約238万3000円
- 死亡一時金:27万円
【40年(480月)納付の場合】
- 寡婦年金の年額:約63万5500円
- 寡婦年金の5年分の合計:約317万7400円
- 死亡一時金:32万円
試算の前提は、夫の第1号被保険者期間がすべて保険料納付済期間で付加保険料の納付はないこと、妻が60歳から65歳までの5年間受け取ること、令和8年度の年金額が続くことです。※実際の年金額は毎年度改定されます。
4.2 寡婦年金を受け取れる期間が5年より短くなる場合がある
寡婦年金の受給権は、妻が65歳に達したときに消滅します。夫が亡くなったときに妻がすでに60歳を過ぎていれば、受け取れるのは65歳になるまでの残りの期間です。
妻が死亡したとき、婚姻したとき、直系血族または直系姻族以外の方の養子となったときも、寡婦年金の受給権は消滅します。
また、妻が繰上げ支給の老齢基礎年金を受けているときは、寡婦年金は支給されません。
※夫の死亡について労働基準法の規定による遺族補償が行われるべきときは、寡婦年金は死亡日から6年間支給が停止されます。
5. 子どもがいる世帯は遺族基礎年金との関係で死亡一時金の扱いが変わる
子どもを残して配偶者が亡くなり、ひとり親になる世帯では、遺族基礎年金を受け取れるかどうかで死亡一時金の扱いが変わります。
5.1 遺族基礎年金を受け取れる遺族がいると死亡一時金は支給されない
日本年金機構によると、遺族が遺族基礎年金の支給を受けられるときは、死亡一時金は支給されません。
ただし、子に遺族基礎年金が発生する場合であって、その子と生計を同じくする遺族基礎年金の受給権を有しない父または母がいることにより子の遺族基礎年金の支給が停止される場合は、その父または母は死亡一時金を受け取ることができます。
5.2 令和10年4月からは父または母と暮らす子も遺族基礎年金を受けられるようになる
令和7年の法律改正により、令和10年4月1日以後は、生計を同じくする父または母がいる場合であっても、子は遺族基礎年金の支給を受けられるようになります。
ただし、令和8年4月1日から令和10年3月31日までに権利が発生した死亡一時金を父または母が受け取った場合、生計を同じくする子の遺族基礎年金は、令和10年4月以後も引き続き支給停止されます。
この期間に死亡一時金を請求するかどうかは、子の遺族基礎年金への影響も含めて、請求の前に年金事務所などで確認しておくと安心です。
6. 寡婦年金と死亡一時金は請求期限と請求先を確認しておく
寡婦年金と死亡一時金は、いずれも請求の手続きが必要です。請求できる期限と提出先を確認しておきましょう。
6.1 死亡一時金は死亡日の翌日から2年、寡婦年金は5年で時効を迎える
死亡一時金を受ける権利は、死亡日の翌日から2年を経過すると時効によって消滅し、請求できなくなります。
寡婦年金を含む年金給付を受ける権利は、国民年金法で、支給すべき事由が生じた日から5年を経過したときに時効によって消滅すると定められています。死亡一時金の2年と比べると長いものの、手続きは早めに進めておきたいところです。
6.2 寡婦年金と死亡一時金の請求先は住所地の市区町村役場
寡婦年金と死亡一時金の請求手続き先は、お住まいの市(区)役所または町村役場です。年金事務所や街角の年金相談センターにも提出できます。
日本年金機構が案内している死亡一時金の請求に必要な主な書類は次のとおりです。
- 国民年金死亡一時金請求書
- 基礎年金番号通知書または年金手帳
- 戸籍謄本(記載事項証明書)または法定相続情報一覧図の写し
- 世帯全員の住民票の写し
- 死亡者の住民票の除票
- 受取先金融機関の通帳等
寡婦年金の請求では、年金請求書(国民年金寡婦年金)に、戸籍謄本(記載事項証明書)、世帯全員の住民票の写し、死亡者の住民票の除票、請求者の収入が確認できる書類、受取先金融機関の通帳等を添えて提出します。
日本年金機構は、添付書類について事前にねんきんダイヤルなどへ問い合わせるよう案内しています。
7. まとめ
国民年金の第1号被保険者の独自給付には、付加年金・寡婦年金・死亡一時金の3つがあります。子のない妻は遺族基礎年金を受け取れませんが、要件を満たせば寡婦年金か死亡一時金を受け取れる可能性があります。
死亡一時金は保険料を納めた月数に応じて12万円から32万円、寡婦年金は夫の第1号被保険者期間で計算した老齢基礎年金額の4分の3を、妻が60歳から65歳になるまで受け取ります。両方の要件を満たす場合は、どちらか一方を選びます。
死亡一時金の時効は死亡日の翌日から2年と短いため、家族が亡くなったら早めにお住まいの市区町村役場や年金事務所に相談し、請求の手続きを進めましょう。
参考資料
- 日本年金機構『第1号被保険者の独自給付』
- 日本年金機構『寡婦年金』
- 日本年金機構『死亡一時金』
- 日本年金機構『付加年金』
- 日本年金機構『寡婦年金を受けるとき』
- 日本年金機構『死亡一時金を受けるとき』
- 日本年金機構『遺族年金ガイド 令和8年度版』
- 日本年金機構『老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額』
- 厚生労働省『令和8年度の年金額改定についてお知らせします』
- e-Gov法令検索『国民年金法』
和田 直子