自営業やフリーランスの夫が亡くなったとき、残された家族が受け取れる遺族年金は、会社員の家庭とは異なります。遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が亡くなったときの給付だからです。

国民年金には、第1号被保険者だけの独自給付として「寡婦年金」と「死亡一時金」があります。日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」によると、死亡一時金の額は保険料を納めた月数に応じて12万円から32万円です。

本記事では、国民年金の第1号被保険者の独自給付の全体像と、寡婦年金・死亡一時金の要件と金額を、日本年金機構の資料をもとに確認します。

1. 国民年金の「第1号被保険者の独自給付」は付加年金・寡婦年金・死亡一時金の3つ

日本年金機構は、国民年金の第1号被保険者独自の給付として、付加年金・寡婦年金・死亡一時金の3つを案内しています。

第1号被保険者とは、日本国内に住む20歳以上60歳未満の方のうち、会社員や公務員とその被扶養配偶者を除く、自営業者や学生などの加入者のことです。

国民年金の第1号被保険者には付加年金・寡婦年金・死亡一時金の独自給付がある1/3

国民年金の第1号被保険者には付加年金・寡婦年金・死亡一時金の独自給付がある

出所:日本年金機構「第1号被保険者の独自給付」をもとにLIMO編集部作成

3つの独自給付の概要は次のとおりです。

  • 付加年金:定額保険料に付加保険料(月額400円)をプラスして納付すると、老齢基礎年金に「200円×付加保険料納付月数」が上乗せされる
  • 寡婦年金:一定の要件を満たす夫が亡くなったとき、その妻に60歳から65歳になるまでの間支給される
  • 死亡一時金:保険料を納めた月数が36月以上ある方が亡くなったとき、生計を同じくしていた遺族に支給される

なお、日本年金機構が年金の「その他の給付」として案内している制度には、短期在留外国人の脱退一時金もあります。

1.1 子のない妻は遺族基礎年金の対象にならない

遺族基礎年金は、亡くなった方によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取る年金です。令和8年度の額は、子のある配偶者が受け取る場合で年84万7300円(昭和31年4月1日以前生まれの方は年84万4900円)に、子の加算額が加わります。

ここでいう子は、死亡当時に18歳になった年度の3月31日までの間にあるか、20歳未満で障害等級1級または2級の障害の状態にある、婚姻していない子です。

この要件に当てはまる子がいない妻は、遺族基礎年金を受け取れません。その場合でも、要件を満たせば寡婦年金や死亡一時金を受け取れる可能性があります。

2. 死亡一時金はいくら?保険料を納めた月数に応じて12万円から32万円

死亡一時金は、亡くなった方が第1号被保険者として保険料を納めた月数に応じて、一時金として遺族に支給されます。

2.1 死亡一時金の要件は「保険料を納めた月数が36月以上」

日本年金機構によると、死亡一時金は、死亡日の前日において第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなったときに支給されます。

受け取れるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族のうち、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で優先順位の高い方です。

※保険料を納めた月数は、4分の3納付月数を4分の3月、半額納付月数を2分の1月、4分の1納付月数を4分の1月として計算します。

2.2 死亡一時金の金額は保険料を納めた月数で6段階に分かれる

日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」に掲載されている死亡一時金の金額を見てみましょう。

死亡一時金の額は保険料を納めた月数に応じて12万円から32万円2/3

死亡一時金の額は保険料を納めた月数に応じて12万円から32万円

出所:日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」をもとにLIMO編集部作成

保険料を納めた月数ごとの死亡一時金の金額は次のとおりです。

  • 36月以上180月未満:12万円
  • 180月以上240月未満:14万5000円
  • 240月以上300月未満:17万円
  • 300月以上360月未満:22万円
  • 360月以上420月未満:27万円
  • 420月以上:32万円

死亡した月の前月までに付加保険料を納めた期間が36月以上ある場合は、上記の金額に8500円が加算されます。

死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から2年です。

3. 寡婦年金は妻が60歳から65歳になるまで支給され、額は夫の老齢基礎年金額の4分の3

寡婦年金は、第1号被保険者として保険料を納めてきた夫を亡くした妻が、60歳から65歳になるまでの間に受け取る年金です。

3.1 寡婦年金を受け取るには4つの要件を満たす必要がある

日本年金機構の案内と国民年金法の規定をもとに、寡婦年金の要件を整理すると次のとおりです。

  • 亡くなった夫に、死亡日の前日において第1号被保険者として保険料を納めた期間と保険料免除期間(学生納付特例期間、納付猶予期間を含む)が合わせて10年以上ある
  • 夫との婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)が10年以上継続している
  • 死亡当時、夫によって生計を維持されていた
  • 夫が亡くなった当時、妻が65歳未満である

※平成29年7月31日以前の死亡の場合は、10年以上ではなく25年以上の期間が必要です。

一方で、次のいずれかに当てはまる場合、寡婦年金は支給されません。

  • 亡くなった夫が、老齢基礎年金または障害基礎年金を受けたことがある
  • 妻が繰上げ支給の老齢基礎年金を受けている

※令和3年3月31日以前の死亡の場合は、亡くなった夫が障害基礎年金の受給権者であったとき、または老齢基礎年金を受けたことがあるときに支給されません。

夫が亡くなったときに妻が60歳未満であれば、寡婦年金は妻が60歳に達した日の属する月の翌月から支給が始まります。

3.2 寡婦年金の額は夫の第1号被保険者期間だけで計算する

寡婦年金の額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3です。

老齢基礎年金の額は、令和8年度の満額(昭和31年4月2日以後生まれ)年84万7300円に、保険料を納めた月数などを480月で割った割合を掛けて求めます。免除期間は、全額免除月数が8分の4のように免除の種類に応じた割合で反映されます。

※平成21年3月以前の免除期間は、全額免除が3分の1など反映割合が異なります。学生納付特例と納付猶予の期間は、寡婦年金の要件の10年には含まれますが、年金額には反映されません。

たとえば、夫が第1号被保険者として20年(240月)保険料を納めていた場合、老齢基礎年金額は84万7300円×240月÷480月=42万3650円です。その4分の3にあたる寡婦年金の額は年約31万7700円、月あたり約2万6500円になります(令和8年度の額をもとにしたLIMO編集部の試算)。

なお、寡婦年金と死亡一時金の両方を受け取れる場合は、どちらか一方を選択します。妻がほかの年金を受け取っている場合も、選択になります。

和田 直子

寡婦年金も死亡一時金も、請求の手続きをして初めて受け取れる給付です。ご夫婦それぞれの第1号被保険者としての加入記録を「ねんきん定期便」やねんきんネットで確認し、万一のときにどの給付の対象になりそうかを家族で共有しておくと安心です。