入院が決まったとき、治療のことと同じくらい気になるのが医療費の支払いです。失業や災害で収入が急に減った時期と重なると、窓口で払う額が大きな負担になります。

国民健康保険法第44条は、特別の理由があって一部負担金を払うのが難しい被保険者に対し、市区町村が一部負担金を減額・免除したり、徴収を猶予したりできると定めています。横浜市では、入院の一部負担金を2割から8割減額するか、免除する基準を設けています。

この記事では、国民健康保険の窓口負担のしくみと、一部負担金の減額・免除・徴収猶予の内容を、横浜市の基準を例に解説します。

1. 国民健康保険の加入対象と、医療機関の窓口で払う一部負担金

まず、国民健康保険に入るのはどんな人か、医療機関の窓口でいくら払うのかを確認します。一部負担金は、窓口で払う医療費の自己負担のことです。

1.1 国民健康保険に加入するのは、勤め先の健康保険や後期高齢者医療制度に入っていない人

自営業やフリーランスで働く人、退職して勤め先の健康保険を離れた人などが、住んでいる市区町村の国民健康保険に加入します。

75歳になると、国民健康保険から後期高齢者医療制度に移ります。生活保護を受けている世帯の人は、国民健康保険の対象外です。

1.2 国民健康保険の一部負担金は原則3割、小学校入学前と70歳から74歳は2割

国民健康保険の一部負担金の割合は、年齢で決まります。小学校入学前は2割、小学校入学後は3割です。70歳になった月の翌月からは2割になり、75歳になって後期高齢者医療制度に移るまで続きます。ただし、70歳以上でも現役並みの所得がある人は3割です。

一部負担金の割合は年齢で決まり、払うのが難しいときは減額・免除・徴収猶予の措置がある1/2

国民健康保険の一部負担金の割合と、払うのが難しいときの3つの措置

出所:e-Gov法令検索「国民健康保険法」を参考にLIMO編集部作成

2. 国民健康保険料は令和8年度から4つの区分で決まる

窓口で払う一部負担金とは別に、国民健康保険の加入者は毎年の保険料を納めます。国民健康保険料は、令和8年度から4つの区分の合計になりました。

  • 医療分
  • 後期高齢者支援金分
  • 介護分(40歳から64歳の人)
  • 子ども・子育て支援金分

それぞれの区分は、所得に応じてかかる所得割と、加入者の人数や世帯にかかる均等割・平等割などを組み合わせて計算します。料率や額は市区町村ごとに決まります。

保険料と一部負担金は、払う先も、払うのが難しいときの手続きも違います。保険料は市区町村に納め、一部負担金は医療機関や薬局の窓口で払います。

3. 特別の理由があれば一部負担金を減額・免除・徴収猶予できる

国民健康保険法第44条第1項は、特別の理由がある被保険者で、一部負担金を払うことが難しいと認められる人に対し、市区町村などが一部負担金の措置をとることができると定めています。

3.1 国民健康保険の一部負担金にとることができる3つの措置

第44条第1項が定める措置は、次の3つです。

  • 一部負担金を減額すること
  • 一部負担金の支払を免除すること
  • 医療機関などへの支払に代えて、一部負担金を直接に徴収することとし、その徴収を猶予すること

減額を受けた人は減額された額を窓口で払えばよく、免除や徴収猶予を受けた人は窓口で一部負担金を払う必要がありません。

3.2 横浜市の例:災害や失業、病気で収入が減った世帯の入院が対象

具体的な対象や基準は、市区町村が定めています。横浜市では、74歳以下の国民健康保険の加入者を対象に、次の4つの世帯を分けています。

  • 災害救助法世帯:災害救助法が適用された地域で被災し、住家が全半壊などの損害を受けた世帯。災害日から4か月以内の入院・外来の一部負担金を免除
  • 被災世帯:地震、風水害、火災で住家が全半壊などの損害を受けた世帯。災害を受けた月から3か月以内の入院の一部負担金を免除
  • 収入減少世帯:病気、事故、失職、不作で世帯の収入が減った世帯。承認期間の開始月から3か月以内の入院の一部負担金を免除、減額または徴収猶予
  • 有病世帯:病気やけがの療養で生活が苦しくなった世帯。承認期間の開始月から3か月以内の入院の一部負担金を免除、減額または徴収猶予

3.3 横浜市の一部負担金の減額割合は2割から8割、預貯金が多いと対象外

収入減少世帯と有病世帯は、世帯の実際の収入から基準生活費を引いた額をもとに、減額の割合を判定します。横浜市の基準生活費は、生活保護基準生活費の115.5%です。

横浜市では、収入と基準生活費の差から一部負担金の減額割合を2割から8割、または免除と判定する2/2

横浜市の国民健康保険一部負担金の減額割合の判定方法と区分

出所:横浜市「一部負担金の減免及び徴収猶予」を参考にLIMO編集部作成

【減額割合と措置(横浜市)】

  • 0%以下:減免の対象外
  • 0%を超え20%以下:2割減額
  • 20%を超え40%以下:4割減額
  • 40%を超え60%以下:6割減額
  • 60%を超え80%以下:8割減額
  • 80%を超える:免除

ただし、預貯金などが基準生活費の3か月分以上ある世帯は、減免の対象外です。近いうちに一定の収入が見込める場合は、減額や免除ではなく1か月から6か月の徴収猶予になることがあります。

国民健康保険の一部負担金は原則3割ですが、災害や失業などで払うのが難しくなったときは、国民健康保険法第44条にもとづく減額・免除・徴収猶予の仕組みがあります。横浜市では入院の一部負担金を2割から8割減額するか、免除します。

対象になる世帯や基準は市区町村ごとに違います。お住まいの市区町村の国民健康保険の窓口やホームページで、一部負担金の減免と徴収猶予の案内を確かめられます。

ここからは、元自治体職員の目線で、保険料の減免との違いと、申請の前に確かめておきたいことを見ていきます。

太田 彩子

国民健康保険の窓口で受けてきた相談は保険料の話が中心でしたが、医療費の支払いそのものを助ける仕組みもあります。入院が決まって支払いが心配なときは、医療機関に払う前に、市区町村の国民健康保険の窓口へ相談してみてください。