5. 国民健康保険料の「非自発的失業者の軽減」は雇用保険受給資格者証で判定する
勤め先を辞めて国民健康保険に加入する手続きは、保険料の計算を担当していた頃にもよく受けてきました。国民健康保険料は前年の所得で計算するため、収入がなくなった直後でも保険料が高いという声を何度も聞いてきました。
こうした人のうち、会社の都合などで離職した人には、国民健康保険料を軽くする仕組みがあります。
5.1 倒産や解雇、雇止めで離職した人は給与所得を100分の30として計算する
対象は、倒産や解雇などで離職した雇用保険の特定受給資格者と、雇止めなどで離職した特定理由離職者です。保険料の計算に使う給与所得を100分の30として扱います。
千葉市の案内では、軽減の期間は離職日の翌日の属する月から、その月の属する年度の翌年度末までです。高額療養費などの所得区分の判定も、軽減後の給与所得で行うとしています。
5.2 判定に使うのは雇用保険受給資格者証の離職理由コード
千葉市の案内では、雇用保険受給資格者証(または雇用保険受給資格通知)の離職理由コードで判定します。特定受給資格者は11・12・21・22・31・32、特定理由離職者は23・33・34です。
届け出には、届書と本人確認書類、雇用保険受給資格者証か受給資格通知が必要です。離職時に65歳以上で交付される高年齢受給資格者証や、特例受給資格者証の人は対象外とされています。
5.3 週20時間未満で雇用保険に入っていない人には判定に使う書類がない
雇用保険受給資格者証は、雇用保険の受給資格が決まった人にハローワークが交付するものです。いま週20時間未満で雇用保険に入っていない人は、倒産や解雇で離職しても、軽減の届け出に使う書類がありません。
2028年10月からは、週10時間以上で加入し、受給資格の要件を満たせば、この書類が交付されます。
6. 最低賃金なら週11時間から国民健康保険料の軽減で差が出る
ただし、この軽減で国民健康保険料が変わるのは、給与所得がある人です。最低賃金で働く場合を、週の時間ごとに計算してみます。
6.1 給与の年収が65万円以下なら給与所得は0円
令和7年分以後の給与所得控除は、最低でも65万円です。給与の年収が65万円以下なら給与所得は0円なので、100分の30にしても変わりません。
時給1177円・週10時間の年収61万2040円は、この範囲に入ります。週11時間(年収67万3244円)から、給与所得が出てきます。
6.2 週19時間なら給与所得51万2876円が15万3863円に
時給1177円・週19時間なら、年収は116万2876円で、給与所得は51万2876円です。軽減を受けると、保険料の計算に使う給与所得は15万3863円になります。
国民健康保険料の所得割は、所得から基礎控除の43万円を差し引いた額に料率を掛けて計算します。この例では、所得割の計算に使う額が8万2876円から0円になります。料率は市区町村ごとに違うので、保険料の額はお住まいの市区町村の窓口で確かめてください。
7. 健康保険の扶養に入っている人は、雇用保険の失業等給付も収入に数える
週10〜19時間で働く人の中には、配偶者の勤め先の健康保険の扶養に入っている人もいます。この場合、離職しても国民健康保険には加入しないので、上の軽減は関係しません。
7.1 被扶養者の収入には雇用保険の失業等給付も含まれる
日本年金機構は、被扶養者の収入には雇用保険の失業等給付も含まれるとしています。被扶養者として認められる年間収入は原則130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満、19歳以上23歳未満は150万円未満)です。
2028年10月以降に加入して、離職後に基本手当を受けるときは、受給中の扶養の扱いを配偶者の勤め先の健康保険に確かめておきましょう。
8. 週10時間からの雇用保険の加入をそのまま受けてよい人、先に確かめたい人
ここまでをもとに、勤務時間を決めるときの考え方を条件で分けます。
8.1 勤務時間を減らさずに加入してよい人
- 出産や育児休業を予定していて、育児休業給付金を受けたい人
- 週11時間以上働いていて、離職したら国民健康保険に加入する人
- 勤め先の都合で離職したときに、基本手当を受けながら次の仕事を探したい人
8.2 加入の前に確かめておきたい人
- 配偶者の健康保険の扶養に入っていて、年間収入が130万円に近い人(失業等給付も収入に数えるため)
- 65歳以上で離職する見込みの人(高年齢受給資格者証は国民健康保険料の軽減の対象外のため)
確かめる先は、雇用契約は勤め先、給付はハローワーク、国民健康保険料の軽減は市区町村の国民健康保険の窓口です。
9. まとめ
2028年10月1日から、雇用保険は週の所定労働時間が10時間以上の人も加入の対象になります。最低賃金1177円・週10時間なら、雇用保険料は年3060円ほどで、育児休業給付金は1か月分で3万4172円が目安です。
雇用保険に入っていれば、倒産や解雇で離職したときに国民健康保険料の軽減も届け出られます。保険料を避けるために勤務時間を減らす前に、まず雇用契約の所定労働時間を確かめ、勤め先と市区町村の窓口で自分の場合を聞いてみてください。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和10年10月1日施行分)について」
- 厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要」
- 厚生労働省「令和8年度最低賃金額答申」
- ハローワーク立川「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」
- 厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」
- 千葉市「非自発的失業者の保険料を軽減」
- 日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」
太田 彩子