令和6年の雇用保険法改正により、2028年10月1日から、雇用保険の加入要件のうち週の所定労働時間が「20時間以上」から「10時間以上」に変わります。厚生労働省の雇用保険部会の資料では、週10〜19時間で働く雇用者は2023年に約506万人いました。

週20時間に届かないように勤務時間を決めてきたパートの人の中には、保険料が引かれて手取りが減るだけではないかと迷う人もいるでしょう。

国民健康保険などを担当していた元自治体職員の筆者が、払う雇用保険料と受け取れる給付を額で並べて答えます。

1. 週10時間からの雇用保険の加入を前に、パートで働く人が抱く疑問

今回取り上げるのは、次のような疑問です。

「週20時間に届かないように働いてきました。2028年10月から週10時間でも雇用保険に入るなら、保険料が引かれて手取りが減るだけではないでしょうか。勤務時間を減らしたほうがいいですか。」

2. 雇用保険料は年3060円ほど。加入を避けるために勤務時間を減らす必要はない

結論から言うと、週10時間での雇用保険の加入を避けるために、勤務時間を減らす必要はありません。理由は次の3つです。

  • 最低賃金1177円・週10時間なら、労働者が負担する雇用保険料は年3060円ほど
  • 加入すれば育児休業給付などの対象になり、育児休業給付金は1か月分で3万4172円が目安
  • 倒産や解雇で離職したとき、国民健康保険料の軽減を届け出るための書類(雇用保険受給資格者証など)が交付される

3. 雇用保険の加入要件は2028年10月1日から「週10時間以上」に変わる

まず、雇用保険の適用拡大で何が決まったのかを確認します。改正法はすでに成立しており、施行日は2028年(令和10年)10月1日です。

3.1 いまの雇用保険の加入要件は週20時間以上と31日以上の雇用見込み

現在は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上働く見込みがあれば、パートやアルバイトでも雇用保険に加入します。

3.2 被保険者期間を1か月と数える基準も「6日以上か40時間以上」に

給付を受けるのに必要な被保険者期間を1か月と数える基準も、加入要件にあわせて半分になります。厚生労働省の資料では、新たに加入する人も、基本手当(失業給付)や育児休業給付などをいまの被保険者と同じように支給するとしています。

2028年10月1日から、雇用保険の基準は週20時間をもとにしたものから週10時間をもとにしたものに変わる1/2

雇用保険の加入要件となる週の所定労働時間、被保険者期間を1か月と数える基準、失業の認定で失業日とみなす1日の労働時間について、現行と2028年10月1日からの基準を比べた表

出所:厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和10年10月1日施行分)について」を参考にLIMO編集部作成

4. 最低賃金・週10時間で払う雇用保険料と、受け取れる育児休業給付金を額で比べる

雇用保険に加入すると何を払い、何を受け取れるのかを、令和8年度の最低賃金で試算します。2028年度の最低賃金と保険料率はまだ決まっていないため、令和8年度の数字で置いた目安です。

4.1 時給1177円・週10時間の年収は61万2040円

令和8年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1177円です(2026年10月1日から12月2日にかけて都道府県ごとに順次発効)。

時給1177円で週10時間、52週働くと、年収は61万2040円、月にならすと約5万1003円です。

4.2 労働者が負担する雇用保険料は年3060円

令和8年度の一般の事業の雇用保険料率は、労働者負担が1000分の5です。年収61万2040円に掛けると、雇用保険料は年3060円、月にすると約255円です。

4.3 育児休業給付金は1か月分で3万4172円が目安

育児休業給付金は、休業開始時賃金日額に支給日数と67%(休業開始から181日目以降は50%)を掛けて計算します。休業開始時賃金日額は、原則として休業開始前6か月の賃金の合計を180で割った額です。

月約5万1003円の賃金なら、休業開始時賃金日額は約1700円で、30日分の67%は3万4172円です。休業開始から180日分を合わせると約20万5000円になり、1年分の雇用保険料3060円の約67倍にあたります。

※試算は、時給1177円・週10時間・1年52週、令和8年度の雇用保険料率(労働者負担1000分の5)、育児休業給付金は1か月30日・休業前6か月の賃金を同じ額として計算。育児休業給付金を受けるには被保険者期間などの要件があり、給付額には上限があります。

最低賃金・週10時間なら、雇用保険料は年3060円。育児休業給付金は180日分で約20万5000円が目安2/2

最低賃金1177円・週10時間で働く場合に、労働者が払う雇用保険料(1年分3060円)と、受け取れる育児休業給付金の目安(1か月分3万4172円、180日分約20万5000円)を比べた横棒グラフ

出所:厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」、厚生労働省「令和8年度最低賃金額答申」、ハローワーク立川「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」を参考にLIMO編集部作成

最低賃金で週10時間働く場合、雇用保険料は年3060円ほどで、育児休業給付金は1か月分で3万4172円が目安です。保険料を避けるために勤務時間を減らすと、こうした給付の対象からも外れます。

自分の所定労働時間が週何時間かは、雇用契約書や労働条件通知書で確かめられます。2028年10月以降に加入の対象になるかは、勤め先に聞いておくと安心です。

ここからは、国民健康保険の保険料の計算を担当していた元自治体職員として、雇用保険に入っているかどうかで変わる離職後の国民健康保険料と、扶養に入っている人の注意点を見ていきます。

太田 彩子

国民健康保険料には、倒産や解雇などで離職した人の保険料を軽くする仕組みがあり、判定には雇用保険の書類を使います。勤務時間を決めるときは、手取りだけでなく、離職したあとの保険料まで見ておくと判断しやすくなります。