4. 退職給付額の平均を自分に当てはめる前に確かめたいこと
就労条件総合調査の退職給付額は、会社員の退職金の目安としてよく使われます。ただ、集計の仕方を知っておかないと、自分の見込み額とずれた受け止め方をしてしまうことがあります。
4.1 集計の対象は勤続20年以上かつ45歳以上の退職者
1896万円などの退職給付額は、令和4年の1年間に退職した人のうち、勤続20年以上かつ45歳以上の人だけを集計した平均です。勤続年数が短い人や、若いうちに転職した人は含まれていません。
同じ調査で、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者がいた企業は、退職給付制度がある企業の29.2%でした。
4.2 退職給付額には、企業年金の分も含まれている
この調査の退職給付額は、退職一時金制度のみの場合は退職一時金の額です。退職年金制度のみの場合は年金現価額、両制度併用の場合は退職一時金の額と年金現価額の合計です。
年金現価額は、分割で受け取る分を退職時点の価値に置き換えた額です。併用の企業に勤めている方は、退職時に一度に受け取る退職一時金だけで2261万円になるわけではない点に気をつけておきましょう。
5. 会社員の退職金と、国家公務員の退職手当を比べると
会社員の退職金と比べられることが多いのが、公務員の退職手当です。国家公務員の数字も確認しておきます。
5.1 国家公務員の定年退職は平均2160万1000円
内閣官房内閣人事局の「退職手当の支給状況」によると、令和6年度に定年退職した国家公務員(常勤職員)の退職手当は、平均2160万1000円でした。
国家公務員の退職手当は国家公務員退職手当法で定められていて、制度があることを前提にできます。会社員は勤め先によって制度の有無も形も違うため、自分の会社の制度を確かめるところから始める必要があります。
6. 自分の退職金の見込み額を知るための3つの手がかり
平均額は、あくまで全体の目安です。自分の退職金は勤め先の制度で決まるので、次の3点を順に確かめておくと、見込み額をつかみやすくなります。
6.1 退職金規程で計算方法と支払いの時期を見る
退職金規程には、退職金の計算方法や、自己都合退職と定年退職の違い、支払いの時期が書かれています。勤続年数の数え方や、受け取るために必要な最低の勤続年数が定められていることもあります。
6.2 企業年金制度があるかどうかを確かめる
人事院の調査では、従業員100人以上の企業で退職給付制度がある企業の57.6%が企業年金制度を採っていました。企業年金制度がある会社では、退職金規程とは別に規約や加入者向けの案内が用意されているので、あわせて見ておきましょう。
6.3 退職金を請求できる期間は5年
労働基準法では、退職手当の請求権は5年で時効により消滅すると定められています。退職したあとの手続きの流れも、人事担当に確かめておくと安心です。
退職金の額は普段意識しない分、「辞めるときに会社が教えてくれるもの」と考えている方も少なくありません。勤続年数ごとの見込み額は人事担当に聞けば分かる場合も多いので、50歳代に入ったら一度確かめておくと、住宅ローンの残りや教育費の支払いとあわせた計画が立てやすくなります。
7. まとめ
会社員の定年退職の退職給付額は、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で1896万円でした。人事院の令和7年調査では、従業員100人以上の企業の92.4%に退職給付制度があり、そのうち42.4%が退職一時金制度のみ、45.8%が企業年金制度との併用です。
定年退職の退職給付額は、大学・大学院卒で退職一時金制度のみが1623万円、両制度併用が2261万円と、制度の形によって差があります。退職金規程や企業年金の案内で、自分の勤め先の制度を確かめてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 人事院「令和8年民間企業の勤務条件制度等調査の実施及び令和7年調査結果について」
- e-Stat「民間企業の勤務条件制度等調査」
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」
- 内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」
- e-Gov法令検索「労働基準法」
宮野 茉莉子