退職金がいくらになるかは、勤め先の会社にどんな退職金の制度があるかで大きく変わります。自分の会社の制度をくわしく知らないまま、平均額だけを目安にしている方もいるのではないでしょうか。

人事院が2026年9月30日に公表した「令和7年民間企業の勤務条件制度等調査」によると、事務・技術関係の職種の従業員がいる常勤従業員100人以上の企業のうち、退職給付制度がある企業は92.4%でした。制度がある企業の中でも、退職一時金だけの企業と、企業年金制度を併用する企業に分かれています。

この記事では、会社員の定年退職の退職給付額を確認したうえで、退職給付制度がある企業の割合と制度の形を企業規模別に見ていきます。

1. 会社員の退職金、定年退職の平均は大学・大学院卒で1896万円

まずは会社員の退職金の水準です。厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」は、令和4年の1年間に勤続20年以上かつ45歳以上で退職した人について、1人あたりの平均退職給付額を集計しています。

1.1 学歴・職種別に見た定年退職の退職給付額

定年で退職した人の退職給付額は、次のとおりです。

  • 大学・大学院卒(管理・事務・技術職):1896万円
  • 高校卒(管理・事務・技術職):1682万円
  • 高校卒(現業職):1183万円

1.2 大学・大学院卒の退職給付額は、早期優遇の2266万円が最も高い

同じ大学・大学院卒(管理・事務・技術職)でも、退職の理由によって退職給付額は違います。

  • 早期優遇:2266万円
  • 定年:1896万円
  • 会社都合:1738万円
  • 自己都合:1441万円

同じ調査では、どの学歴でも早期優遇の退職給付額が最も高くなっています。

2. 人事院の令和7年調査では、従業員100人以上の会社の92.4%に退職給付制度がある

退職金の制度があるかどうかは、会社によって違います。人事院の「令和7年民間企業の勤務条件制度等調査」は、常勤従業員50人以上の全国の企業から選んだ7576社を対象に、令和7年10月1日時点の状況を調べたもので、3767社が回答しました。

従業員100人以上の企業の92.4%に退職給付制度があり、企業規模が大きいほど企業年金制度を併用する割合が高くなります1/2

人事院の令和7年調査による、事務・技術関係職種の従業員がいる企業の退職給付制度の有無と制度の形を企業規模別に示した帯グラフ。100人以上の企業の計は制度あり92.4%で、退職一時金制度のみ42.4%・併用45.8%・企業年金制度のみ11.8%。500人以上は96.1%、100人以上500人未満は91.6%、50人以上100人未満は89.9%

出所:人事院「令和7年民間企業の勤務条件制度等調査」をもとにLIMO編集部作成

2.1 退職給付制度がある企業の割合は、従業員500人以上で96.1%

事務・技術関係の職種の従業員がいる企業のうち、退職給付制度がある企業の割合を企業規模別に見ると、次のとおりです。

  • 100人以上の企業の計:92.4%
  • 500人以上:96.1%
  • 100人以上500人未満:91.6%
  • 50人以上100人未満:89.9%

退職給付制度がない企業は、100人以上の企業の計で7.2%、50人以上100人未満の企業では9.5%でした。

2.2 退職一時金制度だけの企業は42.4%、企業年金制度と併用する企業は45.8%

退職給付制度がある企業を100とすると、制度の形は次のように分かれます(100人以上の企業の計)。

  • 退職一時金制度のみ:42.4%
  • 退職一時金制度と企業年金制度を併用:45.8%
  • 企業年金制度のみ:11.8%

企業規模別に見ると、500人以上の企業では併用が62.1%で、退職一時金制度のみは21.3%でした。50人以上100人未満の企業では、退職一時金制度のみが66.1%を占め、併用は28.2%です。

3. 退職給付制度の形によって、定年退職の退職給付額は変わる

制度の形と金額の関係は、厚生労働省の令和5年就労条件総合調査で確かめられます。勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者について、退職給付制度の形別に退職給付額を集計しています。

3.1 大学・大学院卒の定年退職は、退職一時金制度のみで1623万円、併用で2261万円

定年退職の退職給付額は、退職一時金制度と退職年金制度を併用する企業で最も高くなります2/2

令和5年就労条件総合調査による定年退職者の退職給付額を退職給付制度の形別に示した横棒グラフ。大学・大学院卒(管理・事務・技術職)は退職一時金制度のみ1623万円、退職年金制度のみ1801万円、両制度併用2261万円。高校卒(管理・事務・技術職)は1378万円、1613万円、2145万円

出所:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」をもとにLIMO編集部作成

【大学・大学院卒(管理・事務・技術職)】

  • 退職一時金制度のみ:1623万円
  • 退職年金制度のみ:1801万円
  • 両制度併用:2261万円

【高校卒(管理・事務・技術職)】

  • 退職一時金制度のみ:1378万円
  • 退職年金制度のみ:1613万円
  • 両制度併用:2145万円

大学・大学院卒では、両制度併用の2261万円と退職一時金制度のみの1623万円の差は638万円です。

3.2 厚生労働省の調査では、退職給付制度がある企業は74.9%

令和5年就労条件総合調査では、退職給付制度がある企業の割合は74.9%で、従業員30〜99人の企業では70.1%でした。人事院の調査の92.4%とは、調べた企業の範囲が違います。

人事院の92.4%は、事務・技術関係の職種の従業員がいる常勤従業員100人以上の企業の割合です。就労条件総合調査は常用労働者30人以上の民間企業を対象にしているため、規模の小さい企業が多く含まれます。2つの数字は、調査の対象と時点をそろえて読む必要があります。

会社員の定年退職の退職給付額は大学・大学院卒で1896万円で、従業員100人以上の企業の92.4%に退職給付制度があります。ただし、退職一時金制度だけの企業と企業年金制度を併用する企業では、定年時の退職給付額に差がありました。

自分の勤め先がどの形の制度を採っているかは、就業規則や退職金規程で確かめられます。入社時の書類や社内の規程集を、一度見ておくと目安が立てやすくなります。

宮野 茉莉子

退職金は、受け取る時期が近づいてから制度の中身を知る方が少なくありません。とはいえ、大切な老後資金の一部となるわけですから、本来は早くからその使い方やお金の置き場所を考えておきたいものです。 同じ会社に長く勤めていても、退職一時金だけなのか、企業年金制度もあるのかで、受け取り方や金額の目安は変わります。早いうちに制度の形だけでも確かめておくと、老後の資金計画が立てやすくなります。