管理職として働いてきた人にとって、役職を退く時期は、収入や働き方が変わる大きな節目です。定年まで管理職を続けるつもりでいても、実際にはもっと早く、思いがけない形で退任を迎える人も少なくありません。
パーソル総合研究所が2026年9月25日に公表した「元管理職の社内キャリアに関する調査」によると、管理職の4人に1人は想定より早く退任していました。役職定年による退任では、年収が「3割程度減少」した人が24.7%にのぼります。
この記事では、管理職の退任の実態と年収の変化、退任後の働き方を確認したうえで、厚生労働省の調査から定年退職時の退職金の平均額を整理します。
1. 管理職の退任は想定外にやってくる。3人に1人が想定外の理由で退任
パーソル総合研究所の調査は、課長以上のライン管理職を経験したあとに退任し、同じ企業で働く50〜64歳の元管理職690人などを対象に、2026年6月にインターネットで行われました。対象は従業員300人以上の企業で働く人です。
1.1 4人に1人は想定より早く退任、54歳以下での退任が35.9%
同調査によると、管理職の3人に1人は想定外の理由で退任していました。とくに組織改編による退任は、その81.0%が想定外だったといいます。
退任の時期については、4人に1人が想定より早く退任しています。退任年齢の想定・希望は60歳が4割前後と最も多い一方、実際には54歳以下での退任が35.9%を占めました。54歳以下で退任した人の理由は、組織改編が約3割と最も多くなっています。
1.2 退任の説明は「なし」か「1か月以内」が39.1%
退任の説明(内示)を受けた時期は、「説明なし」と「1か月以内」を合わせて39.1%でした。準備の時間がほとんどないまま、退任を迎える人も多いことがわかります。
また、元管理職の73.5%は、定年や役職定年など制度による退任を想定していましたが、実際に制度によって退任した人は57.8%でした。現在の管理職でも、80.4%が制度による退任を想定しています。
2. 役職定年で年収「3割程度減」が24.7%。定年・再雇用では「5割以上減」が39.5%
管理職を退任すると、年収はどのくらい変わるのでしょうか。
2.1 役職定年では、3割程度減が24.7%、2割程度減が22.0%
パーソル総合研究所の調査によると、役職定年によって退任した人では、年収が「3割程度減少」した人が24.7%、「2割程度減少」した人が22.0%でした。
2.2 定年・再雇用では、契約形態の変更も重なり減額幅が大きい
定年・再雇用にともなって退任した人は、契約形態の変更による減額も加わるため、年収が「5割以上減少」した人が39.5%と、減り幅が大きくなっています。
一方、組織改編による退任では、年収が「変わらなかった」人が約5割を占めました。同調査は、50代での退任が多いことや、職能資格制度を採用している企業が少なくないためと考えられるとしています。
3. 元課長は平均53.9歳で退任し、その後11.1年働く
管理職を退いたあとも、会社で働く期間は長く続きます。
3.1 退任後の就業年数は、管理職だった期間と同じ11.1年
同調査によると、元管理職が最も高く到達した職位は、課長相当が67.5%、部長相当が28.1%でした。
元課長の平均退任年齢は53.9歳で、65歳まで働く場合、退任後に働く年数は11.1年になります。管理職としての経験年数も平均11.1年で、管理職だった期間と同じくらいの長さを、退任後に過ごすことになります。
3.2 退任後は約半数が「プレーヤー」に
退任後の主な役割は、自ら成果を生み出す「プレーヤー」が47.2%で最も多く、定例業務や他者の支援を担う「サポーター」が19.7%、組織内外の調整を担う「コーディネーター」が18.7%、後進の指導・育成を担う「メンター」が13.5%でした。全体の26.7%は、経験したことのない職種に異動しています。
3.3 「気持ちが楽になった」が49.0%。喪失と解放が交錯する転機
退任時の気持ちとしては、「プレッシャーがなくなり、気持ちが楽になった」が49.0%、「自分のキャリアと向き合う機会になった」が38.8%と、退任を前向きに受け止める人も多くいました。
一方で、「モチベーションが低下した」などの否定的な気持ちを持った人も3割前後にのぼります。肯定と否定の両方の気持ちを持つ「交錯型」が41.0%と最も多く、受け止め方は人それぞれです。
4. 【退職金】定年退職の退職金は、大卒で平均1896万円。退職時の月給の36.0か月分
役職を退いたあとも働き続けた先には、定年退職と退職金の受け取りが控えています。厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」から、退職金の水準を確認します。
4.1 大学・大学院卒は1896万円、高校卒は1682万円
同調査によると、勤続20年以上かつ45歳以上で定年退職した人の1人平均の退職給付額(一時金・年金)は、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)が1896万円、高校卒(管理・事務・技術職)が1682万円、高校卒(現業職)が1183万円でした。
大学・大学院卒の場合、退職時の所定内賃金は月52万6000円で、退職給付額はその36.0か月分にあたります。高校卒(管理・事務・技術職)は38.6か月分です。
なお、月収換算は退職給付額を退職時の所定内賃金と比べた目安で、退職金の計算式ではありません。退職金の計算方法は会社ごとに退職金規程で定められています。
4.2 退職給付制度がある企業は74.9%。規模が小さいほど低い
そもそも、退職金の制度があるかどうかも会社によって異なります。同調査によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業は74.9%でした。
企業規模別にみると、1000人以上が90.1%、300〜999人が88.8%、100〜299人が84.7%、30〜99人が70.1%と、規模が小さいほど低くなっています。