4. 生活扶助基準の検証で、消費者物価指数は「参考指標」の位置づけ
物価が上がると生活費は増えます。ただ、生活扶助基準の検証では、物価の指標は主役ではありません。
4.1 2026年8月の消費者物価指数は、総合で前年同月比1.9%、生鮮食品を除く食料は2.7%の上昇
総務省統計局が2026年9月18日に公表した「消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)8月分」(2025年基準)によると、総合指数は102.2で前年同月比1.9%の上昇、生鮮食品を除く総合指数は102.0で1.7%の上昇でした。
項目別では、生鮮食品を除く食料が前年同月比2.7%の上昇、エネルギーは0.7%の下落でした。
4.2 物価の指標は購買力の維持の観点に近く、定期検証はこれまで消費を参照してきた
厚生労働省が令和8年7月31日にまとめた「一般低所得世帯の消費動向を勘案するに当たっての経済指標の整理」は、物価や賃金の指標について次のように述べています。
消費動向に関連する経済指標として、物価や賃金に関する指標を参照するとの考え方もあるが、そうした指標は(一般低所得世帯の消費実態との均衡よりも)購買力の維持などの観点とより親和的なものであり、これまでの定期検証において消費を参照してきたこととの整合性に留意が必要となる。
出所:厚生労働省「一般低所得世帯の消費動向を勘案するに当たっての経済指標の整理」(令和8年7月31日)
同じ資料は、消費者物価指数を消費との関連が強い指標としつつ、購入する商品の種類や数量の変化に伴う生活費の変動を測るものではないため、消費水準や生活水準の変化を直接測定できる指標ではないとしています。資料の中では、物価と賃金は参考指標として位置づけられています。
5. 調査の時点と検証の時点のずれは、家計調査などで埋める方法が整理された
全国家計構造調査は5年に1度の調査で、直近の令和6年調査は10月と11月の2か月間に行われました。調査の時点から検証の時点までには、どうしても時間の差が生じます。
5.1 これまでは、臨時的・特例的な加算で足元の状況に対応してきた
厚生労働省の資料によると、令和4年の検証にもとづいて令和5年度に改定したときは、足元の社会経済情勢などを勘案し、令和5〜6年度の臨時的・特例的な措置として1人あたり月額1000円の加算などを行いました。令和7年度には令和7〜8年度の措置として月額1500円の加算などを行い、令和8年度には加算額を2500円に引き上げています。
5.2 家計調査の生活扶助相当支出の変化率を、基準の水準に一律に乗じる方法が適当とされた
7月31日の資料は、全国家計構造調査の調査時点以降の消費水準の変化を反映する方法として、世帯類型や地域で分けずに、家計調査による生活扶助相当支出の直近までの変化率を、年齢・世帯人員・地域別の生活扶助基準の水準に一律に乗じる方法が適当と考えられるとしています。8月25日の第60回生活保護基準部会では、「調査実施時点以降の社会経済情勢の変化の反映方法」が議題になりました。
6. 基準が変わったら、福祉事務所から届く通知で保護費を確かめる
金融機関で家族のお金の相談を受けていたとき、親が受け取っている給付の額が変わったことに、通知が届いてもしばらく気づかなかったという方が少なくありませんでした。
6.1 保護の変更は、福祉事務所が書面で通知する
生活保護法第25条第2項では、保護の実施機関は保護の変更が必要と認めるときは、速やかに職権で決定を行い、書面で被保護者に通知しなければならないと定めています。基準の改定で保護費の額が変わるときも、福祉事務所からの通知で確かめられます。
6.2 家族が受給している場合は、通知書の保管場所を共有しておく
親などの家族が生活保護を受けている場合、保護費の通知書がどこにあるかを家族で共有しておくと、額が変わったときにすぐ確かめられます。分からないことは、担当のケースワーカーに尋ねてみましょう。
7. まとめ
被保護者調査(令和8年6月分概数)によると、保護停止中を除く163万4108世帯のうち、高齢者世帯は55.3%、障害者・傷病者世帯は25.5%、その他の世帯は15.8%、母子世帯は3.4%でした。
生活扶助基準は、5年に1度の定期検証で、夫婦と子ども1人の勤労者世帯のうち年間収入階級第1十分位の消費と比べて確かめられています。2026年は1年前倒しで検証が行われ、年末にとりまとめられる予定です。消費者物価指数は、検証では参考指標として位置づけられています。
基準部会の資料は厚生労働省のホームページで公開されています。自分や家族の保護費について分からないことがあれば、住んでいる地域の福祉事務所に相談してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「被保護者調査(令和8年6月分概数)」
- 厚生労働省「生活保護制度に関するQ&A」
- 厚生労働省「社会保障審議会(生活保護基準部会)」
- 厚生労働省「令和8年における生活保護基準の検証作業について(案)」(第58回社会保障審議会生活保護基準部会 資料1)
- 厚生労働省「一般低所得世帯の消費動向を勘案するに当たっての経済指標の整理」
- 総務省統計局「消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)8月分」
- e-Gov法令検索「生活保護法」
和田 直子