生活保護で毎月支給される生活扶助の額は、どのように決められているのでしょうか。物価が上がれば同じだけ上がる仕組みだと思われることもありますが、実際の決め方は少し違います。
生活扶助の基準は、社会保障審議会生活保護基準部会で5年に1度、定期的に検証されています。2026年は検証作業が進められており、10月6日には第62回の部会が開かれ、生活扶助基準の体系の検証などが議題になりました。
この記事では、生活保護を受けている世帯の世帯類型別の内訳と生活扶助基準額の例、そして生活扶助基準を検証するときに何と比べているのかを確認します。
1. 生活保護を受けている世帯は164万2778世帯、世帯類型別の割合は保護停止中を除く163万4108世帯が分母
厚生労働省が令和8年9月2日に公表した「被保護者調査(令和8年6月分概数)」によると、生活保護を受けている世帯は164万2778世帯で、前年同月より2424世帯少なくなりました。生活保護を受けている人は196万9502人で、前年同月より1万8995人少なくなっています。
1.1 生活保護の世帯類型は、高齢者世帯・母子世帯・障害者・傷病者世帯・その他の世帯の4つ
164万2778世帯には、保護を一時的に停止している世帯も含まれます。世帯類型別の数は保護停止中の世帯を除いて集計されているので、割合の分母は163万4108世帯です。
【世帯類型別の世帯数と割合(総数163万4108世帯・保護停止中を除く)】
- 高齢者世帯:90万3532世帯(55.3%)
- 障害者・傷病者世帯:41万6933世帯(25.5%)
- その他の世帯:25万8690世帯(15.8%)
- 母子世帯:5万4953世帯(3.4%)
高齢者世帯90万3532世帯の内訳は、単身世帯が84万4730世帯、2人以上の世帯が5万8802世帯です。単身の高齢者世帯は、163万4108世帯を分母にすると51.7%、高齢者世帯90万3532世帯を分母にすると93.5%にあたります。
2. 生活保護の保護費は、最低生活費から収入を引いた差額
生活保護の保護費は、厚生労働大臣が定める基準で計算した最低生活費と、年金や児童扶養手当などの収入を比べて決まります。収入が最低生活費に届かない場合に、その差額が支給されます。
2.1 生活扶助基準額の例、令和8年10月1日現在の東京都区部等と地方郡部等
最低生活費のうち、食費・被服費・光熱水費などにあたるのが生活扶助です。厚生労働省の「生活保護制度に関するQ&A」には、世帯の例ごとの生活扶助基準額が載っています。
【生活扶助基準額の例(月額・令和8年10月1日現在)】
- 3人世帯(33歳、29歳、4歳):東京都区部等16万8020円、地方郡部等15万370円
- 高齢者単身世帯(68歳):東京都区部等7万7980円、地方郡部等6万9950円
- 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳):東京都区部等12万5460円、地方郡部等11万1720円
- 母子世帯(30歳、4歳、2歳):東京都区部等20万50円、地方郡部等17万9300円
いずれも児童養育加算などを含む額です。生活扶助のほか、必要に応じて住宅扶助や医療扶助なども支給されます。
3. 生活扶助基準の5年に1度の定期検証、2026年は1年前倒しで年末にとりまとめ
生活扶助基準が妥当な水準かどうかは、社会保障審議会生活保護基準部会で、5年に1度の定期検証によって確かめられています。
3.1 生活扶助基準と比べるのは、一般の低所得世帯の消費の水準
厚生労働省が令和8年7月31日にまとめた資料によると、定期検証では、一般の低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているかという観点から、全国家計構造調査による年間収入階級第1十分位(収入の低いほうから1割の世帯)の消費実態と生活扶助基準を比べることを基本としています。
比べるときのモデル世帯は、夫婦と子ども1人の勤労者世帯です。2022年(令和4年)の検証では、この世帯の生活扶助基準額の平均が月13万7790円、年間収入階級第1十分位の生活扶助相当支出が月14万514円で、比率は1.020でした(14万514円÷13万7790円)。
3.2 2026年の検証は令和6年全国家計構造調査を使い、令和9年度の見直しに反映
2026年6月30日の第58回生活保護基準部会の資料では、生活扶助基準本体(第1類・第2類)について1年前倒しで検証を行い、2026年末に検証結果をとりまとめる必要があるとしています。使うデータは、令和元年と令和6年の全国家計構造調査です。
令和7年12月の大臣折衝事項では、令和9年度の生活扶助基準の見直しに当たって、令和6年全国家計構造調査にもとづく定期検証の結果を適切に反映するとされました。
生活扶助の基準額は、物価の上がり幅をそのまま当てはめるのではなく、一般の低所得世帯の消費の水準と比べて検証されています。2026年の定期検証は、2026年末のとりまとめに向けて進められています。
自分や家族の生活扶助の額がどう計算されているかは、住んでいる地域の福祉事務所で確かめられます。基準部会の資料と議事録は、厚生労働省の生活保護基準部会のページで公開されています。
ここからは、生活扶助基準を決めるときに消費者物価指数がどう扱われているかと、基準が変わったときの保護費の通知について、金融機関で家族のお金の相談を受けてきた立場から見ていきます。
生活扶助の額は、物価だけを見て毎年自動的に変わるものではありません。5年に1度の検証の結果が、いつの年度の基準に反映されるのかを知っておくと、ニュースで基準の見直しが報じられたときにも落ち着いて受け止めやすくなります。
