3. 月の給与の差は?残業代が含まれると見え方が変わる
月の給与を所定内給与額で比べると、係長級は39万9200円、課長級は52万9200円で、差は13万円あります。ところが、きまって支給する現金給与額で比べると、差は9万8700円に縮みます。
2つの金額の違いは、超過労働給与額です。厚生労働省の「主な用語の定義」によると、時間外勤務手当や深夜勤務手当、休日出勤手当などがこれにあたり、きまって支給する現金給与額からこれらを除いたものが所定内給与額です。どちらも、所得税などを差し引く前の金額です。
きまって支給する現金給与額から所定内給与額を引いた分は、係長級が4万6200円、課長級が1万4900円でした。1か月の超過実労働時間数も、係長級の15時間に対して課長級は4時間です。部長級は2時間でした。
所定内給与額で見た13万円の差のうち、3万1300円ぶんは、この部分の違いで縮まる形です。統計からは、課長級で超過実労働時間数や超過労働給与額が少ない理由までは分かりません。昇進の前と後の給与を比べるときは、どちらの金額どうしを比べているのかをそろえておくことが大切です。
4. 【年代別】係長と課長の年収差。40〜50代前半で約198万円に広がる
係長級から課長級への差は、年代によっても違います。どちらの役職も人数の多い30代から50代について、一覧表で見ていきましょう。
4.1 【係長と課長の年代別推定年収一覧表】
- 30〜34歳:課長級725万7400円/係長級646万7200円(差79万200円)
- 35〜39歳:課長級827万1600円/係長級686万7900円(差140万3700円)
- 40〜44歳:課長級893万9500円/係長級695万6500円(差198万3000円)
- 45〜49歳:課長級877万8100円/係長級697万3700円(差180万4400円)
- 50〜54歳:課長級902万6300円/係長級703万8000円(差198万8300円)
- 55〜59歳:課長級892万7800円/係長級715万1100円(差177万6700円)
差がいちばん大きいのは50〜54歳の198万8300円で、40〜44歳の198万3000円がほぼ並びます。30〜34歳の79万200円から40代前半にかけて大きく開き、そのあとは170万円台後半から190万円台後半のあいだにあります。
係長級の推定年収は、35〜39歳から55〜59歳まで686万7900円から715万1100円のあいだに収まっていて、年代による違いは30万円足らずです。課長級のほうは、30〜34歳の725万7400円と50〜54歳の902万6300円で176万8900円違います。係長級の年代による違いが小さいので、2つの役職の差の大きさは、おもに課長級の金額の違いから生まれていることになります。
課長級の人数がいちばん多いのも50〜54歳で、47万6390人でした。役職に就く年齢も、就くかどうかも、勤め先の状況やご家庭の事情でそれぞれ違います。ここに並べた金額は、働き方の良しあしを表すものではありません。
5. 【企業規模別の推定年収】係長から課長への上がり幅は3.6倍違う
「課長になれば、どの会社でも同じくらい年収が上がるのでは」—そう思っている方もいるかもしれません。ここでは同じ役職別の表を勤め先の企業規模別に分けて、係長級から課長級への推定年収の差を見ていきましょう。ここでいう企業規模は、会社全体で働く常用労働者の人数で決まります。
5.1 【企業規模別の推定年収一覧表】
常用労働者1,000人以上の企業では、課長級が1117万7100円、係長級が813万2500円で、その差は304万4600円でした。100〜999人では783万3600円と639万1800円で差は144万1800円、10〜99人では646万6000円と561万7900円で差は84万8100円です。
1,000人以上と10〜99人を比べると、1段の上がり幅には3.6倍の開きがあります。とくに違いが大きいのは賞与で、係長級から課長級で増える賞与は、1,000人以上の124万8200円に対して、10〜99人では20万2500円にとどまりました。規模の大きな会社ほど、昇進による年収の上乗せを賞与が支えている形といえそうです。
課長級として働く人は、10〜99人の企業で47万970人、100〜999人で65万6200人、1,000人以上で66万9770人でした。課長級のおよそ37%が1,000人以上の企業で働いていて、企業規模計の872万1100円は、100〜999人の783万3600円より高いところにあります。
裏を返せば、100人未満の企業にお勤めの方が全体の平均だけを見て昇進後の年収を思い描くと、実際より大きく見積もってしまうこともありそうです。ご自身の勤め先に近い規模の行を物差しにすると、1段上がったときの変化がつかみやすくなるのではないでしょうか。
6. まとめにかえて
係長から課長への1段を、この先の働き方と家計の計画に当てはめると、次の3つになります。
6.1 1つめ:昇進後の年収は、月の給与と賞与に分けて見込む
推定年収の差186万4200円のうち、月の給与の分は118万4400円、賞与の分は67万9800円でした。月の給与も、所定内給与額で比べれば13万円、残業代などを含めれば9万8700円と、どちらで比べるかで差が変わります。昇進を考えるときは、増える年収をひとまとめにせず、毎月の暮らしを支える分と、賞与として入る分に分けて見込んでおくことが、課長としての働き方と家計の両方を具体的に描く手がかりになります。
6.2 2つめ:増える分の使い道を、お金が必要になる時期ごとに決めておく
金融庁のNISA特設ウェブサイトにある「資産形成の基本」によると、ライフプランを考えるときには、希望する暮らしにどれくらいお金がかかるかとあわせて、そのお金が必要になる時期も考えることが大切だとされています。家計管理の方法としては、給料日に決まった金額を貯蓄用の口座へ自動で移し、先に貯蓄へ回してから残りでやりくりするやり方も紹介されています。課長になって増える分を、教育費のように時期が決まっているもの、住まいの修繕のように時期の目安があるもの、老後のように先のものに分け、月の給与で増える分と賞与で増える分をどこに充てるか決めておくと、昇進後の家計を組み立てる手がかりになります。
6.3 3つめ:どこまで役職を上がるかは、年代ごとの差も入れて考える
係長級から課長級への差は、30〜34歳では79万200円、40〜44歳と50〜54歳では約198万円でした。課長級から部長級への1段は、全体で147万9900円です。役職を上がっていく道もあれば、いまの立場で専門性を磨いていく道もあります。ご自身の年代で1段上がると何がどれだけ変わるのかを知っておくことが、これからの10年の働き方と家計の計画を立てるときの材料になります。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」役職第1表 役職、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」調査の概要
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」主な用語の定義
- 金融庁 NISA特設ウェブサイト「資産形成の基本」
村岸 理美