ひとり親家庭の親が看護師や保育士などの資格を目指そうとしても、講座の受講料や、学校に通う間の生活費が負担になることがあります。
こども家庭庁「ひとり親家庭等の支援について」(2026年4月)によると、母子世帯の母自身の平均年間就労収入は236万円でした。就業している母のうち、正規の職員・従業員は48.8%です(令和3年度全国ひとり親世帯等調査。収入は2020年の1年間)。
本記事では、ひとり親の資格取得を支える「母子家庭自立支援給付金・父子家庭自立支援給付金」のうち、自立支援教育訓練給付金と高等職業訓練促進給付金について、対象者と支給額を事業ごとに解説します。
1. 「母子家庭自立支援給付金・父子家庭自立支援給付金」とは?資格取得を支える2つの事業がある
母子家庭自立支援給付金・父子家庭自立支援給付金は、母子家庭の母または父子家庭の父の経済的な自立を支援するため、こども家庭庁が自治体と協力して実施している就業支援の事業です。
事業の内容は、2026年4月9日付のこども家庭庁支援局長通知「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について」で実施要綱として示されています。
実施するのは都道府県・市(特別区を含む)・福祉事務所設置町村で、主に次の2つの事業があります。まずは2つの事業の違いを一覧で確認しましょう。
講座の費用を支える給付金と、修業中の生活費を支える給付金がある1/3
出所:こども家庭庁「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業について」、同「高等職業訓練促進給付金のご案内」、同「ひとり親家庭等の支援について(令和8年4月)」をもとにLIMO編集部作成
- 自立支援教育訓練給付金:教育訓練講座を受講し、修了したときに受講費用の一部を支給する
- 高等職業訓練促進給付金:資格を取るために養成機関で修業する期間の生活費を支給する
2024年度(令和6年度)の実施自治体数は、都道府県・市・福祉事務所設置町村の909自治体のうち、自立支援教育訓練給付金が872(95.9%)、高等職業訓練促進給付金が886(97.5%)でした。
1.1 自立支援教育訓練給付金は講座の受講費用の一部を支給する
自立支援教育訓練給付金は、ひとり親の主体的な能力開発の取り組みを支援するもので、対象の教育訓練を受講し、修了した場合に経費の一部が支給されます。
対象になる講座は、雇用保険制度の教育訓練給付の指定講座と、都道府県等の長が地域の実情に応じて対象とする講座です。こども家庭庁の資料には、対象講座の例として簿記検定試験や介護職員初任者研修が挙げられています。
2024年度の支給件数は1900件、就職件数は1276件でした。
1.2 高等職業訓練促進給付金は養成機関で修業する期間の生活費を支給する
高等職業訓練促進給付金は、就職の際に有利になる資格の取得を目指し、養成機関で修業する期間の生活費を支援する制度です。訓練を修了したときには「修了支援給付金」も支給されます。
対象資格は、養成機関で6か月以上修業するもので、地域の実情に応じて定められます。例として挙げられているのは次のような資格です。
- 国家資格:看護師、准看護師、保育士、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、調理師、製菓衛生師など
- デジタル分野等の民間資格:シスコシステムズ認定資格、LPI認定資格など
また、給付金を受けている間に子が20歳に達しても引き続き同等の給付金を受けられる「高等職業訓練促進継続給付金」も設けられています。2026年度(令和8年度)予算の資料では「新規」の事業として示されています。
2. 対象になるのはどんなひとり親?自立支援教育訓練給付金と高等職業訓練促進給付金で要件が違う
母子家庭自立支援給付金・父子家庭自立支援給付金は、事業によって対象者の要件が異なります。とくに所得の要件があるかどうかが違うため、事業ごとに確認していきましょう。
2.1 自立支援教育訓練給付金の対象者
こども家庭庁の案内では、20歳未満の児童を扶養している母子家庭の母または父子家庭の父で、次の要件をすべて満たす方が対象です。
- 自立に向けた計画(母子・父子自立支援プログラム)の策定等を受けている
- 就業経験、技能、資格の取得状況や労働市場の状況などから判断して、その教育訓練が適職に就くために必要であると認められる
児童が20歳に達した場合も、受講を修了するまでは引き続き対象者になります。
こども家庭庁の案内に挙げられている要件はこの2つで、高等職業訓練促進給付金のような児童扶養手当の所得水準の要件は示されていません。なお、横浜市は「過去に自立支援教育訓練給付金を受給していない人」も要件にしています。
2.2 高等職業訓練促進給付金の対象者
高等職業訓練促進給付金は、訓練を始めた日以降、次の要件をすべて満たすひとり親の方が対象です。
- 児童扶養手当の支給を受けているか、同等の所得水準にある(例:子が1人の場合、1年間の収入が385万円未満)
- 養成機関で6か月以上のカリキュラムを修業し、対象資格の取得等が見込まれる
- 仕事または育児と修業の両立が困難であると認められる
所得が児童扶養手当の所得水準を超えた場合でも、1年に限り引き続き対象者になります。※修了支援給付金は、修業を開始した日と修了した日の両方で要件を満たしていることが必要です。
2.3 高等職業訓練促進継続給付金の対象者
高等職業訓練促進継続給付金は、訓練を始めた日以降、次の要件をすべて満たすひとり親の方が対象です。
- 高等職業訓練促進給付金を受けている間に子等が20歳に達し、引き続き子等を扶養している
- 児童扶養手当の支給を受けている方と同等の所得水準にある(例:子が1人の場合、1年間の収入が385万円未満)
- 養成機関で6か月以上のカリキュラムを修業し、対象資格の取得等が見込まれる
- 仕事または育児と修業の両立が困難であると認められる
こちらも、所得水準を超えた場合であっても1年に限り引き続き対象者になります。
3. 母子家庭自立支援給付金・父子家庭自立支援給付金はいくら?事業ごとの支給額と支給期間
母子家庭自立支援給付金・父子家庭自立支援給付金の支給額は、事業によって決まり方が違います。自立支援教育訓練給付金は受講費用の割合で、高等職業訓練促進給付金は月額で決まります。
3.1 自立支援教育訓練給付金の支給額
自立支援教育訓練給付金の支給額は、受講した講座の種類によって次のとおりです。
- 雇用保険の一般教育訓練給付・特定一般教育訓練給付の対象講座:受講費用の60%(上限20万円)
- 雇用保険の専門実践教育訓練給付の対象講座:受講費用の60%(上限は修学年数×40万円、最大160万円)
- 専門実践教育訓練給付の対象講座を修了後1年以内に資格を取得し、就職等した場合:受講費用の85%(上限は修学年数×60万円、最大240万円)
下限は1万2001円で、計算した額が1万2000円を超えない場合は支給されません。
雇用保険法にもとづく教育訓練給付金を受けられる方は、その支給額との差額が支給されます。※准看護師から看護師の養成機関に引き続き進学する場合は、修学年数の上限が5年になります。
3.2 高等職業訓練促進給付金の支給額と支給期間
高等職業訓練促進給付金の支給額は、住民税が課税されている世帯かどうかで分かれます。訓練期間の最後の1年間は、月額が4万円増えます。
【住民税非課税世帯】
- 訓練期間中:月額10万円
- 最後の1年間:月額14万円
- 修了支援給付金:5万円
【住民税課税世帯】
- 訓練期間中:月額7万500円
- 最後の1年間:月額11万500円
- 修了支援給付金:2万5000円
支給対象期間は修業する期間で、上限は4年です。※准看護師から看護師の養成機関に引き続き進学する場合は、上限が5年になります。
住民税の課税状況は申請者本人だけで判断するとは限りません。横浜市では、一緒に住んでいる家族全員の市民税の課税状況で世帯区分を決めており、家族に課税の人がいれば、申請者が非課税でも課税世帯の支給額になると案内しています。
3.3 高等職業訓練促進継続給付金の支給額
高等職業訓練促進継続給付金の支給額は、高等職業訓練促進給付金と同じです。
- 訓練期間中:月額10万円(住民税課税世帯は月額7万500円)
- 最後の1年間:月額4万円を加算
- 修了支援特別給付金:5万円(住民税課税世帯は2万5000円)
支給対象期間は、高等職業訓練促進給付金と通算して上限4年です。
資格を取るために学校へ通う期間は、働ける時間が減り、家計の収入も下がりやすくなります。給付金の月額と修業する年数を書き出し、入学から卒業までの生活費の見通しを立ててから申し込むと安心です。