賃上げのニュースを目にする機会は増えましたが、自分の勤める業種でも給与は上がっているのだろうかと気になる方もいるでしょう。

2026年9月29日に国税庁が公表したばかりの「令和7年分民間給与実態統計調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は487万円で、業種別では最も高い電気・ガス・熱供給・水道業の854万円と、最も低い宿泊業,飲食サービス業の276万円とでは、578万円の差です。

金額の高さだけでは見えない変化をつかむため、本記事では前年からの伸び率にも着目し、業種の並び方を見直してみましょう。

1. 令和7年分の民間給与実態統計調査とは?

民間給与実態統計調査は、民間の事業所が支払った年間の給与の実態を、給与階級別や事業所規模別などに明らかにする国税庁の調査となっています。昭和24年分から毎年実施されており、令和7年分が第77回目です。

調査は標本調査で、標本として選ばれた事業所が記入した調査票をもとに全体を推計しています。集計にあたっての業種区分は、日本標準産業分類に基づく14種類です。

ここで示す平均給与は、給与支給総額を給与所得者数で割った金額になります。給与には給料・手当と賞与が含まれ、通勤手当の非課税分は含まれません。

なお、事業所が支払った給与に着目した集計のため、個人の所得全体を示したものではない点には注意が必要でしょう。

2. 令和7年分の平均給与は487万円 業種別の金額はいくら?

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出所:国税庁「令和7年分民間給与実態統計調査」(民間給与実態統計調査)をもとにLIMO編集部作成

出所:国税庁「令和7年分民間給与実態統計調査」(民間給与実態統計調査)をもとにLIMO編集部作成

1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たり平均給与は487万円で、前年より1.9%増えました。前年の3.9%増からは伸びが落ち着いた形です。

男性は597万円(1.7%増)、女性は342万円(2.6%増)となりました。正社員(正職員)は559万円(2.6%増)、正社員(正職員)以外は210万円(1.6%増)です。

業種別の平均給与を金額の高い順に並べると、次のようになります。

  • 電気・ガス・熱供給・水道業:854万円
  • 金融業,保険業:726万円
  • 情報通信業:682万円
  • 建設業:590万円
  • 製造業:573万円
  • 学術研究,専門・技術サービス業,教育,学習支援業:568万円
  • 不動産業,物品賃貸業:513万円
  • 複合サービス事業:510万円
  • 運輸業,郵便業:483万円
  • 医療,福祉:424万円
  • 卸売業,小売業:413万円
  • サービス業:402万円
  • 農林水産・鉱業:394万円
  • 宿泊業,飲食サービス業:276万円

全体平均の487万円を上回っているのは、上位8業種です。最高の電気・ガス・熱供給・水道業と最低の宿泊業,飲食サービス業では578万円の差があり、倍率にすると約3.1倍にあたります。

賞与にも大きな開きがある点は見逃せません。平均賞与は金融業,保険業の173万円が最も多く、宿泊業,飲食サービス業は17万円にとどまりました。

熊谷 良子

業種別の平均給与を見ると、自分の業種は高いのか低いのか、つい気になってしまいます。ただ、この統計の平均給与は、事業所が1年間に支払った給与を給与所得者の人数で割ったものです。職種や年齢、勤続年数、企業規模の違いをならした数字ですので、同じ業種でも働く場所や雇用形態によって水準に大きな差が出る場合もあるでしょう。

また、調査は事業所からの支払額に着目して集計されており、複数の勤務先から給与を受ける人は、それぞれ別の給与所得者として数えられます。個人の所得全体を示した数字ではない点も、見落としやすいところです。

転職や進路を考える際は、平均だけでなく求人票の内訳や賞与の実績まで確認すると、実態とのずれを減らせるでしょう。平均はあくまで全体像をつかむための目安として、ご自身の源泉徴収票や給与明細と見比べながらご覧いただければと思います。

 

3. 業種別の伸び率ランキングは?金額の順位とは顔ぶれが変わる

令和7年分の業種別平均給与を、2025年9月に国税庁が公表した「令和6年分民間給与実態統計調査結果について」の数値と比べ、前年からの伸び率をLIMO編集部で試算しました。令和7年分は万円単位、令和6年分は千円単位で公表されているため、伸び率は編集部による試算値(概算)であり、千円単位で計算した値とは差が出る場合があります。

3.1 前年からの伸び率が大きい順は?

  • 1位 農林水産・鉱業:394万円(約13.3%増)
  • 2位 建設業:590万円(約4.4%増)
  • 3位 複合サービス事業:510万円(約4.1%増)
  • 4位 不動産業,物品賃貸業:513万円(約3.5%増)
  • 5位 情報通信業:682万円(約3.4%増)
  • 6位 学術研究,専門・技術サービス業,教育,学習支援業:568万円(約3.4%増)
  • 7位 金融業,保険業:726万円(約3.4%増)
  • 8位 サービス業:402万円(約3.3%増)
  • 9位 電気・ガス・熱供給・水道業:854万円(約2.6%増)
  • 10位 製造業:573万円(約1.0%増)
  • 11位 卸売業,小売業:413万円(約0.8%増)
  • 12位 運輸業,郵便業:483万円(約0.9%減)
  • 13位(同率) 医療,福祉:424万円(約1.2%減)
  • 13位(同率) 宿泊業,飲食サービス業:276万円(約1.2%減)

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令和7年分 業種別平均給与の前年からの伸び率(編集部試算)

出所:国税庁「令和7年分民間給与実態統計調査」「令和6年分民間給与実態統計調査結果について」をもとにLIMO編集部作成

金額で1位の電気・ガス・熱供給・水道業は、伸び率では9位(約2.6%増)です。金融業,保険業は金額2位に対して伸び率は7位、情報通信業は金額3位に対して5位となりました。

一方、金額は13位の農林水産・鉱業が伸び率では1位に立ち、金額4位の建設業は伸び率でも2位に入っています。全体の1.9%増を上回ったのは9業種、下回ったのは5業種です。

宿泊業,飲食サービス業は、令和6年分では5.8%増でしたが、令和7年分は約1.2%減となりました。

たとえば建設業では、令和6年分の565万円から令和7年分は590万円へ、約25万円増えた計算です。月あたりに直すと2万円ほどの増加にあたります。

反対に宿泊業,飲食サービス業は279万円から276万円へ、約3万円の減少となりました。

3.2 読み解く際の注意点は3つあります

1つ目は、農林水産・鉱業の約13.3%増を、標本調査に基づく推計値として慎重に見る必要があることです。平均給与は令和5年分の334万円、令和6年分の348万円と推移してきましたが、令和7年分は394万円と伸びが際立っています。

一時的な要因が影響している可能性もあるため、複数年の推移とあわせて確認するのが望ましいでしょう。

2つ目は、伸び率が公表値から試算した近似値であることです。情報通信業、学術研究,専門・技術サービス業,教育,学習支援業、金融業,保険業の3業種はいずれも約3.4%増と近く、小数第1位の違いで順位が入れ替わる可能性も否定できません。

国税庁が公表した平均給与は正式な公表値ですが、業種別の伸び率は、万円単位で公表された令和7年分の金額をもとに編集部が計算した試算値(概算)です。千円単位の統計表で計算し直した場合、小数第1位や順位が前後する可能性があります。順位そのものより、伸びのおおまかな水準としてご覧ください。

3つ目は、平均給与の増減が賃上げだけでは決まらないことです。年齢構成や勤続年数、正社員と正社員以外の構成が変わっても、平均は動きます。

令和7年分では、1年を通じて勤務した給与所得者のうち正社員(正職員)以外が前年比3.9%増の1305万人となった一方、正社員(正職員)は0.2%減の3422万人でした。全体でのこうした構成の変化は、業種ごとの平均にも影響しうる点として押さえておきたいところです。

4. 賃上げの実感は業種で違う?民間調査に見る足元の動き

令和7年分の調査は2025年中に支給された給与が対象で、2026年に入ってからの動きは含まれていません。ここでは参考として、公開から1年以内の民間調査を2つ確認します。

労務行政研究所は2026年2月4日、「労使および専門家の計515人に聞く2026年賃上げの見通し」を公表しました。労働側282人、経営側119人、専門家114人に対し、2025年12月1日から2026年1月16日にかけて調査したものです。

それによると、2026年の賃上げ見通しは全体平均で1万5809円、4.69%(定期昇給分を含む)でした。労働側は4.78%、経営側は4.51%と、立場によって見通しに開きがあります。

カカクコムが運営する求人ボックスは2026年7月22日、「2026年 賃上げ実態調査」の結果を発表しました。2026年6月15日から24日にかけて、正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトとして働く1751人へインターネットで調査したものです。

それによると、賃上げがなかったと答えた人は69.0%で、平均の賃上げ額は月額6456円でした。

賃上げの見通しが4%台後半となる一方、幅広い働き手への調査では賃上げを実感していない人が約7割にのぼりました。ただし、今回確認できた範囲では、どちらの調査にも業種別の数値は示されていません。

令和7年分の業種ごとの伸びの違いを直接説明する材料にはならない点には、ご注意ください。

5. まとめにかえて|業種は「金額」と「伸び」の両方から見る

令和7年分民間給与実態統計調査では、業種別の平均給与は電気・ガス・熱供給・水道業の854万円が最も高く、宿泊業,飲食サービス業の276万円が最も低い結果でした。前年からの伸び率を試算すると、金額1位の電気・ガス・熱供給・水道業は9位にとどまり、運輸業,郵便業、医療,福祉、宿泊業,飲食サービス業の3業種は前年を下回っています。

転職やキャリアを考える際には、今の水準を示す金額と、直近の変化を示す伸び率の両方を並べて見ることが参考になるでしょう。ただし、1年分の伸び率は一時的な要因で振れることもあるため、複数年の推移とあわせて確認すると安心です。

平均は業種全体の姿であり、個々の職種や企業の給与とは異なる点も、あわせて覚えておいてください。

6. 【筆者コメント】

熊谷 良子

数字の大きさだけでなく、前年からの動きまで並べて見ると、業種ごとの景色が少し違って見えてきます。今回の試算でも、金額が高い業種が必ずしも大きく伸びているわけではありませんでした。

ただし、1年分の伸び率は一時的な要因で振れることがあり、平均の数字も年齢構成などの影響を受けます。この調査は毎年9月下旬に公表されますので、来年以降の数値とあわせて推移を追っていくと、見えてくるものが増えていくかもしれません。

また、業種ごとの平均は年齢や雇用形態の構成にも左右されますので、あくまで一つの目安として受け止めることが大切です。

気になる業種があれば、まずはご自身の源泉徴収票を手元に用意して、業種平均と見比べてみてはいかがでしょうか。これからの働き方や暮らしを考えるきっかけとして、今回の数字を活用していただければうれしく思います。

参考資料