3. 世界の巨大IT企業を巻き込む「規格争い」

3.1 IOWNは世界標準になるか

光電融合技術は、世界の巨大IT企業が注目する領域です。しかし、IOWNがそのまま世界標準になるかどうかはまだ決まっていません。泉田氏は現在の状況を次のように見ています。

「それぞれが自分たちが1番になろうと思ってやってる最中で、何か決まってこのグローバルで『これでいこうぜ』みたいな感じでまだなっていない」

この覇権争いを勝ち抜くため、NTTは単独で戦うのではなく「IOWN Global Forum」という企業連合を設立しました。設立メンバーには、NTTに加えてインテルとソニーが名を連ねています。さらに、参画企業にはAMD、AGC、味の素、日立、モルガン・スタンレーなど、多種多様なグローバル企業が含まれています。

注目すべきは、AI半導体の王者であるNVIDIAもこのフォーラムに参画している点です。NVIDIAは自社でも独自に光電融合技術の開発を進めていると見られますが、同時にIOWN陣営にも関与する「両張り」の戦略をとっています。

泉田氏は、チップメーカーにとって省電力化は至上命題であるため、NVIDIAのこの動きは理にかなっていると指摘します。

「NVIDIAからしたら、光電融合をちゃんと適用してますっていうのがチップメーカーからすると売りになるじゃん。消費電力が下がりますよって話になるから、やらなきゃいけないよね」

3.2 なぜ「ソニー」が鍵を握るのか

技術の覇権争いには、大きく分けて2つの勝ち方があります。1つは、事前に規格を定めて世界中で使わせる「デジュール」型(移動通信規格など)。もう1つは、各社が自由に競争し、結果的に市場で最も使われたものが勝者となる「デファクト」型です。泉田氏は、いろいろなプレイヤーが競争するハードウェアの世界では、結果的に後者のデファクト型になることが多いと指摘します。

この熾烈な規格争いを勝ち抜く上で、泉田氏がNTT陣営の最大の強みとして注目しているのが、実はNTTではなく「ソニー」の存在です。

「今まで戦ってきた歴史、経験値っていうのがすごい大事なので、その中で注目しているのはNTTではなくソニー。ソニーって世界の規格争いをしてきた歴史なんだよ」

ソニーは過去数十年にわたり、世界の最前線で規格争いを繰り広げてきました。1970年代のビデオテープにおける「ベータマックス対VHS」の敗北に始まり、3.5インチフロッピーディスクやCD、MDでの勝利、そして2000年代の「ブルーレイ対HD DVD」での勝利など、数々の修羅場をくぐり抜けてきました。

直近の歴史を見ると負けが込んでいる部分もありますが、グローバルな規格争いでどう立ち回るべきか、その経験値とノウハウを持っているソニーが設立メンバーにいること、さらにインテルも加わっていることから、陣営としてはかなり強力だと泉田氏は見ています。

ソニーが関わった規格争い(1975年〜1992年)3/4

ソニーが関わった規格争い(1975年〜1992年)

出所:イズミダイズム作成(各社発表・報道をもとに作成)

ソニーが関わった規格争い(1990年代半ば〜2008年)4/4

ソニーが関わった規格争い(1990年代半ば〜2008年)

出所:イズミダイズム作成(各社発表・報道をもとに作成)

4. 今後の観測点

4.1 規格争いの勝ち筋とビジネスモデルの確立

泉田氏によれば、AI企業のトップからは過剰なAI開発競争を懸念する声も出ているといいます。仮に設備投資のペースが緩んだとしても、データセンターが膨大な電力を消費するという根本的な課題は変わりません。泉田氏は、そのためランニングコストである電気代を下げる光電融合に、巨大IT企業の関心は向かわざるを得ないと見ています。

では、投資家としてNTTをどう評価すべきでしょうか。

泉田氏は、光化の領域ごとに勝者が分かれる可能性があると見ています。半導体チップの内部(IOWN4.0の領域)については、NVIDIAなどのチップメーカーが自前の技術で制覇するかもしれません。一方で、データセンター間など最も距離の長いネットワーク(IOWN1.0の領域)については、通信網を持つNTTではないか、という見立てです。

そして最大の観測点となるのが、規格が採用された後に「どうやって稼ぐのか」というビジネスモデルの確立です。

「どういう商売の仕方するかよね。規格が通ったとして、ちゃんと自分たちにメリットが受けられるのかと。要は、ビジネスモデルとして確立できるものあるのかっていうのがやっぱり興味あるね」

NTTが製造するデバイス自体の売上で稼ぐのか、あるいはクアルコムのように規格のパテント(特許)料で稼ぐのか。現時点では、IOWNがNTTグループ全体の収益にどれほどのインパクトを与える規模になるのかは未知数です。

しかし、本業の利益成長が横ばいとなる中、この規格が世界で採用されれば、今までにない収益の可能性が出てきます。

「会社としてはどうやって成長を見せるかというと、これは本当に規格が本当にグローバルに採用されるようになれば、もうこれ今までにない収益の可能性が出てくるので、そうなると株価としてはそれを織り込みに行く局面があるということになるんですよ」

IOWN構想の最終フェーズとされる2032年頃までは、約6年あります。泉田氏は、長期で考えれば普通の時間軸だと話します。アナリストが3〜5年先の業績予想を立てる際には、IOWNがどれだけ入ってくるかを考えなければいけない局面に来ている、というのが泉田氏の見方です。NTTが規格争いのどの領域で採用を勝ち取り、それをどのような形で利益に変えていくのか。その道筋が見えてくるかどうかが、NTTの評価を考えるうえでの観測点になると考えられます。

参考資料

  • NTT株式会社「2026年度第1四半期 決算短信」(2026年8月6日)
  • NTT株式会社「2026年度第1四半期 決算説明会資料」(2026年8月6日)
  • NTT株式会社「中期経営戦略 New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN」(2023年5月12日)
  • NTT株式会社「IR説明会 IOWN 2.0の実現に向けた、光電融合スイッチの開発状況と今後の展望」(2025年10月6日)
  • NTT株式会社「統合報告書2025 日本語版」
  • YouTubeチャンネル「イズミダイズム」

各資料の入手先: NTT株式会社 IRライブラリ

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