日本は世界でも指折りの長寿国と言われますが、実際にどれくらい高齢化が進んでいるのか、日々の暮らしの実感だけでは掴みにくいものです。
総務省統計局が2026年9月20日に公表した「統計トピックスNo.149」(敬老の日にちなんだ最新の高齢者統計)によると、日本の65歳以上人口が総人口に占める割合は29.6%となり、世界39か国中で最も高い水準に達しました。
平均や統計上の数字と、老後資金への実感には案外ずれがあるものです。この記事では、海外主要国との比較や家計の資産構成データから、長生き時代のお金事情を確認していきます。
1. そもそも日本の高齢化率はどれくらい?敬老の日にちなむ最新データ
同統計は、総務省統計局が敬老の日を前に毎年公表しているもので、人口推計などをもとに高齢者の人口や就業の状況をまとめています。
2026年9月15日時点の65歳以上人口は3624万人で、前年に比べて2万人増加しました。
総人口に占める割合は29.6%となり、比較可能な1950年以降で過去最高を更新しています。この29.6%という水準は、世界39か国の中で最も高い高齢化率です。
働く高齢者の数も増えています。65歳以上の就業者数は943万人となり、22年連続で増加して過去最多を記録しました。
就業者総数に占める65歳以上の割合も13.8%に達し、こちらも過去最高となりました。
高齢化率と就業者数がそろって過去最高を更新している点は、日本社会の姿がここ数十年で大きく変わってきたことを表していると言えそうです。
かつては「支えられる世代」というイメージが強かった65歳以上の層が、今では働き手としても存在感を強めているという変化は、家計の考え方にも影響を与えているのかもしれません。
- 65歳以上人口:3624万人(前年比2万人増)
- 総人口に占める割合:29.6%(過去最高、世界39か国中最高)
- 65歳以上の就業者数:943万人(22年連続増、過去最多)
- 就業者総数に占める65歳以上の割合:13.8%(過去最高)
2. 海外主要国と比べると?高齢化率と高齢者就業率の国際比較
同統計では、世界39か国の65歳以上人口割合についても比較されており、2026年の数値では2位がイタリアの25.6%、3位がドイツの24.2%、4位がフランスの22.9%で、いずれも日本より低い水準です。
アメリカは18.8%、韓国は21.4%で、日本との差が大きい国も少なくありません。たとえば日本とアメリカの高齢化率を比べると、その差は10.8ポイントに達します。(29.6%-18.8%、編集部算出)
2位のイタリアとの差も4.0ポイントあり(29.6%-25.6%、編集部算出)、上位国の中でも日本の水準が抜きん出ていると言えそうです。
- 日本:29.6%
- イタリア:25.6%
- ドイツ:24.2%
- フランス:22.9%
- スペイン:22.2%
- 韓国:21.4%
- カナダ:20.7%
- イギリス:19.9%
- アメリカ:18.8%
就業の面でも日本の高齢者は目立った存在です。2025年の日本の65歳以上の就業率は26.0%となり、10年前と比べて4.3ポイント上昇しました。
主要国の中でも高い水準にあり、なかでも韓国は上昇幅が9.1ポイントと各国の中で最も大きくなっています。
人口に占める高齢者の割合だけでなく、働き続ける高齢者の存在感という点でも、日本は他国とは異なる位置にいると言えそうです。
長く働く高齢者が増えている背景には、健康状態や働く意欲の変化だけでなく、老後の家計を支える必要性も関わっている可能性があります。
国同士の高齢化率を比べる際は、集計対象や調査年が少しずつ異なる場合がある点に注意が必要です。
同じ「高齢化率」という言葉でも、元になる人口推計の前提が国によって異なることがあるため、細かい順位の入れ替わりに一喜一憂するよりも、日本が上位グループの中でも際立って高い水準にあるという大きな傾向を捉えることが大切でしょう。
統計を読むときは、単年の数字だけでなく推移や他国との差の大きさにも目を向けると、社会の変化がより立体的に見えてきます。
公的機関が発表する一次資料には、比較の前提や調査時点が明記されていることが多いため、気になる数字を見つけたら元の資料までさかのぼって確認する習慣をつけておくと安心です。
ニュースで見かけた数字をそのまま鵜呑みにせず、一手間かけて出どころを確認する姿勢は、お金にまつわる情報と付き合ううえでも役立ちます。
特に家計に関わる話題は、比較の条件次第で印象が変わることも多いため、丁寧に向き合いたいところです。
3. 長生き時代に見落としやすい注意点は3つあります
高齢化率の高さや高齢者就業率の上昇は、家計にとって見過ごせない変化を意味します。
特に気をつけたい点を3つ確認しておきましょう。
1つ目は、預貯金に偏った資産構成は物価上昇に弱いという盲点です。現金や預貯金は元本が減りにくい一方で、物価が上がる局面では実質的な価値がじわじわと目減りしていきます。
長生きする期間が延びるほど、この目減りの影響を受ける年数も長くなる点は見落とされがちです。
2つ目は、65歳以上の就業率の上昇が「支える側」の姿の変化を映している点にあります。
働く高齢者が増えている背景には、健康寿命の延びだけでなく、老後資金を長く働くことで補いたいという事情も含まれている可能性があるでしょう。
年金や退職金だけに頼らない働き方が、今後さらに一般的になっていくことも考えられます。
3つ目は、資産や老後の希望を家族と共有していないと、いざという時に判断が難しくなることです。
本人の意思確認が難しくなってから資産状況を把握しようとすると、金融機関での手続きに時間がかかる場合があります。
元気なうちに大まかな資産の在りかだけでも家族に伝えておくと、もしものときの負担を減らせるでしょう。
通帳や証券口座の一覧を作っておくなど、できる範囲から準備を始めておくと安心につながります。
4. 日本の家計はなぜ預貯金に偏りやすい?
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2025年12月18日に公表した「家計の金融行動に関する世論調査2025年」によると、金融資産を保有する二人以上世帯の平均保有額は1940万円でした。
単身世帯では919万円となっており、世帯構成によって差があります。
4.1 二人以上世帯の金融資産構成
- 預貯金:金融資産全体の38.4%
- 株式:22.3%
- 生命保険:11.2%
4.2 単身世帯の金融資産構成
- 預貯金:金融資産全体の40.6%
- 株式:20.2%
- 投資信託:14.1%
世帯構成にかかわらず、日本の家計は金融資産の中で預貯金の存在感が大きいと言えるでしょう。
高齢化率の高さと合わせて考えると、長い老後を主に預貯金で支えようとする家計が多い可能性がありそうです。
資産の一部を預貯金以外に振り分けるかどうかは各世帯の考え方次第であり、特定の金融商品を選ぶこと自体をこの記事で勧めるものではありません。
大切なのは、自分の家計が今どのような資産構成になっているかを把握したうえで、必要であれば専門家にも相談しながら考えていく姿勢だと言えるでしょう。
5. まとめにかえて|敬老の日をきっかけに家族で資産や老後の話をしてみませんか
ここまで見てきたように、日本の高齢化率は世界39か国中で最も高く、65歳以上の就業率も上昇を続けています。
家計の資産構成では預貯金が中心を占める世帯が多く、長い老後をどう支えるかは一人ひとりにとって身近なテーマと言えるでしょう。
特定の金融商品の売買を勧めるものではありませんが、敬老の日のような機会に、家族で老後資金や資産の状況について話しておくことは、いざという時の安心につながりそうです。
まずは家計全体の資産状況をざっくり把握することから始めてみてはいかがでしょうか。
数字を確認するだけでなく、それをきっかけに家族と対話する時間を持つことにも、大きな価値があるはずです。
家族で資産やお金の話をするのは、ためらいを感じる人も少なくないかもしれません。
ただ、いきなり老後資金の細かい金額まで話し合う必要はなく、まずは「どんな資産をどこに持っているか」を大まかに共有するだけでも十分に意味があります。
敬老の日のような節目は、日ごろは切り出しにくい話題を始めるきっかけになりやすい時期です。
今回取り上げた統計を家族で眺めながら、それぞれの老後の希望や資産の状況について、ゆるやかに話してみる時間を持ってみてはいかがでしょうか。
一度にすべてを共有しようとせず、毎年少しずつ話題にしていくくらいの気軽さで十分だと思います。
小さな会話の積み重ねが、将来の安心につながっていくはずです。
この記事が、家族との会話を始める小さなきっかけになればうれしく思います。
お金の話は身構えてしまいがちですが、日々の暮らしの延長として気負わずに向き合っていきたいものです。
