では、その中で個々はどういった資産形成をしていけば良いのでしょうか。
それぞれの人生におけるステージや家族構成・ライフプランによっても異なりますが、「人生100年時代」と叫ばれている中、まずは若い世代のうちから将来への資産形成について高い意識を持つことが重要です。
個人の長期的な資産形成を支援する制度として、税制面で一定の優遇が行われているものに「つみたてNISA」と「iDeCo」があります。
「つみたてNISA」の対象商品は、手数料が低水準で、長期・積立・分散投資に適した投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されており、投資初心者にも利用しやすい仕組みとなっています。年間40万円までの積立投資について運用益が非課税になり、その資産はいつでも引き出し可能です。
「iDeCo」は、掛金の上限が年間14.4万円~81.6万円であり、掛金は全額所得控除、年金受給時も一定の税優遇があります。加入可能年齢は20歳から60歳となっており、あくまで年金という制度趣旨に沿って、60歳になるまでは中途引き出しは原則不可となっています。
よく、「つみたてNISA」と「iDeCo」のどちらが良いですか?という質問を受けることがありますが、ライフイベントに応じて引き出すことが可能な「つみたてNISA」と年金制度としての「iDeCo」は、ライフプランを立てたうえで、バランスを見ながら両者を併用するべきものだといえます。
両制度ともに、メディア等でも取り上げられ、利用者も増えているものの、どちらも成人人口に占める割合としては、「つみたてNISA」が1.0%、「iDeCo」で1.6%と、まだまだ少数に留まっています。
お勤め先によっては企業型確定拠出年金を導入しているところもあるかと思います。こちらについてもあまり良く理解しておらず、給与として受け取っている、あるいは、制度を利用していても、値動きのある運用商品ではなく定期預金など安定資産を選択している方が多くいます。
将来の退職金を準備するために重要な制度であるにも関わらず、まだまだ多くの方が制度や運用について理解していないというのは、企業による従業員への説明が不足していることに加え、個人の自助努力意識が薄いという面もありそうです。
おわりに
金融教育がなされなかった世代については、自身で金融について学ぶことも大事でしょう。また、信頼できる専門家を探すのも効果的だと思います。色々とニュース等で社会問題について見聞きする際、ぜひ現代の社会で自分自身に何ができるのか、何をするべきかについても考えるきっかけとしてほしいと思います。
国や企業に頼って生きる時代は終焉を迎えています。自助努力の時代へと移行している中、将来について準備している人と、そうでない人との格差は、今以上に広がっていくのではないでしょうか。
渡邊 裕介