また、銀行のATM戦略を考える上で、増加の一途を辿ってきたコンビニATMについて考えることは極めて重要です。
銀行は、自行のキャッシュカードを持つ利用者がコンビニATMを利用した場合、その利用量に応じて、手数料を負担しなければなりません。
コンビニATMが、銀行ATMの無い地域において銀行のATMネットワークを補完し、顧客利便性に寄与してきた一面はあります。
しかし、自行のATMがある地域においては、コンビニATMではなくて、手数料の発生しない自行のATMを使用してほしいというのが、銀行の本音です。
とはいえ、コンビニの出店戦略は銀行にはまったくのコントロール外で、ATMを設置するコンビニが増加するのに伴い、銀行が支払う手数料も拡大してきました。今ではこの負担は、銀行に非常に重くのしかかっています。
利用者は、銀行ATMでもコンビニATMでも手数料が無料であれば、利便性の優れたコンビニATMに流れます。
そこで近年、銀行は、コンビニATMの利用手数料を無料にする優遇施策を縮小し、銀行ATMの利用を誘導する傾向にあります。
コンビニにとっては、銀行から支払われる手数料は極めて重要な収益源であり、セブン銀行では収益の約9割を占めています。
銀行のATM戦略見直しは、コンビニATMの在り方にも大きな影響を与えます。
今回の三菱UFJ銀行と三井住友銀行のATM共同利用は、コンビニATMにとっては逆風だと言えます。共同利用により無料で使える銀行ATMが増えれば、利用者がコンビニATMから銀行ATMに流れる可能性は高いと言えます。
みずほは不参加
なお、メガバンク3行のうち、みずほ銀行は今回のATM共同利用に参加していません。
みずほ銀行は、2002年にみずほが誕生して以降2度のシステム障害を経て、2019年7月にようやく新システムへの移行が完了しました。それまでは新システム移行に注力し、その他のプロジェクトに手が付けられない状況でした。
また、みずほ銀行は、2013年にイオン銀行とのATM共同利用にいち早く取り組んでおり、「メガバンクNO.1のATMネットワーク」との自負もありました。
しかしながら、メガバンク同士のATM共同利用は、これ以上にインパクトが強く、ライバルである2行がATM共同利用とコスト削減を目指す中で、取り残された印象は避けられません。
さらにみずほ銀行は、新システム移行の際に何度もATMが停止し、連休中に現金が引き出せず、SNSなどでは「みずほ難民」と揶揄されたこともありました。みずほ銀行のATMは、決してイメージが良いとは言えません。
とはいえ、今回の三菱UFJ銀行と三井住友銀行のATM共同利用は、他行の受入も可能な枠組みとされています。今後みずほ銀行を含め、参加銀行の増加も十分にあり得ます。
おわりに
インターネットバンキングの利用が広がり、キャッシュレス決済が進展する中で、根強い現金信仰の象徴とも言えるATM。今回のATM共同利用は、顧客利便性を確保しながらATMを削減していくという、ATM戦略の方向性の1つが示された形と言えます。今後の動向を注視したいと思います。
【参考】
「三菱UFJ銀行との店舗外ATM共同利用開始について」三井住友銀行
広瀬 まき