2026年10月より、パートやアルバイトなどの短時間労働者が社会保険(健康保険や厚生年金など)に加入する際の「月額賃金8万8000円以上(年収換算で約106万円)」という賃金要件(加入に必要な給料の条件)が撤廃されることが決定しました。今後は企業規模の要件も段階的に小さくなり、より多くの方が社会保険の対象となっていきます。

村岸理美
「社会保険に入ると手取りが減ってしまうのでは?」と心配される方も多いかもしれません。しかし、制度変更に合わせて手取りの減少を緩和する国の支援策も用意されています。

また、厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の受給額(もらえる年金)において、男性平均16万9967円に対し女性平均11万1413円と、月額5万8554円の開きがあることがわかります。

今回は、「106万円の壁」撤廃へ向けた制度改正の内容と男女の年金受給額など解説します。

そしてファイナンシャル・プランナー(FP)の視点から「手取りと将来の安心」を両立させるための3つの実践アドバイスをお伝えします。

この記事の3つのポイント

  •  2026年10月の「106万円の壁」撤廃に伴う変更点と、手取りを減らさないための支援策
  • 厚生年金受給額の男女差(月額5万8554円)の実態と、厚生年金に加入する女性が増加している背景
  •  FPが教える、自分に合った働き方と将来の保障を両立させる3つの実践ステップ

1. 「106万円の壁」撤廃へ《社会保険料の負担》を軽減する支援策も

2026年10月から、短時間労働者が社会保険に加入する際の「月額賃金8万8000円以上」という賃金要件が撤廃され、いわゆる「106万円の壁」がなくなります。

月額8.8万円以上の要件(賃金要件)を撤廃します1/4

月額8.8万円以上の要件(賃金要件)を撤廃します

出所:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」

今後は企業規模要件も段階的に縮小されるため、新たに厚生年金や健康保険へ加入する短時間労働者が増えていくと考えられます。

1.1 社会保険に入ると「手取りが減る」?

社会保険に加入すると、厚生年金や健康保険の保障を受けられる一方、給与から社会保険料が差し引かれるため、加入前より手取り額が減る場合があります。そこで、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者の負担を軽減するため、事業主が通常より多く保険料を負担できる特例的な措置が設けられています。

社会保険の加入拡大の対象となる短時間労働者を支援します2/4

社会保険の加入拡大の対象となる短時間労働者を支援します

出所:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」

厚生労働省が示す年収106万円(月収8万8000円)のケースでは、通常は労使折半で、

  • 労働者本人:1万2500円
  • 事業主:1万2500円

を負担する例が示されています。

1.2 支援策を使うと本人負担が6250円になるケースも

支援策を利用して事業主の負担割合を増やした場合、同じケースで労働者本人の負担は6250円、事業主の負担は1万8750円となります。

事業主が追加で負担した分については制度から支援される仕組みで、本人の社会保険料負担を抑えることができます。
また、こうした仕組みによって本人負担が軽減されても、将来受け取る年金額が減ることはありません。「106万円の壁」の撤廃後は、社会保険への加入対象が広がるだけでなく、加入に伴う手取り減少を和らげる支援策があることも知っておきたいポイントです。