5. 利益が大きく戻っても、営業キャッシュ・フローは減った

2026年3月期の売上収益は1兆7,415億円で前期比+9.3%。税引前利益は2,556億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,762億円となり、前期比は+969.3%に達した。ROE(自己資本利益率)は9.0%である。

前期の低さが効いている。2025年3月期の当期利益は164億円、ROEは0.9%だった。この期には減損損失を554億円計上している。

利益がこれだけ戻れば、手元のキャッシュも潤沢になったはずだ。そう考えたくなるが、数字は逆を向いている。
2026年3月期の営業キャッシュ・フローは1,018億円で、前期の1,496億円から3割強減った。利益が10倍近くに増えた期に、営業キャッシュ・フローは減っている。

理由は運転資本にある。棚卸資産は前期末の5,678億円から7,404億円へ、1,700億円あまり増えた。会計の構造上、在庫が増えればその分だけ現金は内部に滞留する。利益とキャッシュが同じ方向に動かなかったのは、この増加が効いたためだ。

在庫が積み上がった背景について、会社は銅の需給に触れている。銅精鉱の供給には制約が残るものの、新規の銅製錬所の稼働や生産能力の増強で供給は増え、需要の伸びは鈍り、供給過多となる見込みだという。市況環境が緩む局面で在庫が膨らむのは、収益にとって歓迎できる姿ではない。

6. 投資と負債で見る、資本配分の重心

キャッシュの使い方を5期分並べると、この会社の構えがよく分かる。

営業キャッシュ・フローは、2022年3月期から順に1,594億円、1,203億円、2,106億円、1,496億円、1,018億円。投資キャッシュ・フローは+97億円、▲1,855億円、▲2,988億円、▲1,388億円、▲1,852億円となっている。

5期のうち3期で、投資の流出が営業キャッシュ・フローを上回った。とくに2024年3月期は営業で2,106億円を稼ぎながら2,988億円を投じており、差は900億円近い。

設備投資額そのものも、645億円から1,408億円、1,499億円、1,173億円、1,374億円と、初年度の倍以上の水準で続いている。

足りない分は負債で埋めてきた。有利子負債は2022年3月期末の3,312億円から、2026年3月期末には6,638億円へ、5期でおよそ2倍になった。自己資本比率は63.7%から58.3%へ下がっている。

この水準をどう見るか。非鉄金属業種の2026年の中央値は自己資本比率53.3%、ROE9.0%。住友金属鉱山の58.3%は中央値を上回り、ROE9.0%は中央値と並ぶ。業種の中で財務が突出して重いわけではない。

配当は市況に素直に連動してきた。1株当たり年間配当は301円、205円、98円、104円、228円と動き、2027年3月期の予想は207円である。利益連動型の還元方針が、そのまま数字に出ていると考えられる。

直近の2027年3月期1Qは、売上収益5,401億円、当期利益879億円。通期予想は売上収益2兆650億円、税引前利益3,240億円、当期利益2,160億円へ引き上げられた。稼ぐ局面に入ったところで、上流への投資がどこまで利益として返ってくるのかが問われる段階に来ている。

7. 筆者コメント

見逃せないのは、投資超過が続いた5期が、そのまま業績の谷と重なっている点だ。

利益が落ち込んだ2024年3月期と2025年3月期にも、設備投資は1,400億円台と1,100億円台で続いた。稼げない時期に投資を止めなかったということである。

資源開発は、市況が良いときに始めても間に合わない。谷の時期にどれだけ手を緩めなかったかが、次の山での稼ぐ力を決める。そう考えれば、この5期の投資超過は意図されたものだったと読むほうが自然だろう。

ただし、投じた資本が回収されるかどうかは別の話だ。資源セグメントの資産1兆5,403億円は、そのまま将来の減損リスクでもある。実際、2025年3月期には554億円の減損損失が出ている。

資源会社の決算を読むときは、利益の額よりも、投下した資本がどのくらいの利益を生んでいるかという角度から見ることをおすすめしたい。市況が味方した期の利益は、実力を過大にも過小にも見せる。

参考資料

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石津 大希