1. 主要な設備の筆頭に、鹿児島県の鉱山が載っている

住友金属鉱山の有価証券報告書で、主要な設備の状況を見る。最初に挙がっているのは菱刈鉱山だ。

所在地は鹿児島県伊佐市。帳簿価額は200億円、土地面積は325,000平方メートル、従業員は167人と記載されている。土地の広さでは、同社が開示する国内の主要設備のなかで最大である。

2番目に挙がるのは愛媛県新居浜市の別子地区、続いて兵庫県の播磨事業所、東京都の青梅事業所等となる。青梅事業所等の帳簿価額は249億円、播磨事業所は76億円だ。

つまり同社の設備の並びは、国内の鉱山から始まっている。海外から原料を調達して加工するだけの会社なら、この並びにはならない。

原料を掘るところから、金属に変えるところ、そして電池材料などに加工するところまで。縦につながった構造を持っていることが、設備の一覧に表れている。

2. 売上の1割の資源事業が、最も重い資産を抱えている

この構造は、セグメント別の数字を並べるとさらにはっきりする。

2026年3月期の売上収益(IFRS)は、製錬が1兆2,962億円で構成比74.4%。材料が2,495億円で14.3%、資源が1,924億円で11.1%となる。売上で見れば、まぎれもなく製錬の会社だ。

ところがセグメント資産を見ると、順番が入れ替わる。資源が1兆5,403億円で最も大きく、製錬は1兆2,858億円、材料は3,432億円。売上構成比1割の事業が、売上の7割を稼ぐ事業より重い資産を抱えている。

設備投資も同じ向きだ。2026年3月期は資源が628億円で最大、製錬が382億円、材料が270億円だった。

鉱山開発は回収までの年数が長い。投じた資本が売上として戻ってくるまでに時間がかかるので、資産の重さと売上の軽さが同居する。資源事業の数字は、その性質をそのまま映していると読み取れる。

非鉄金属メーカーという呼び方からは、工場で金属を精製する姿が先に立つ。だが資本配分という物差しを当てると、この会社の重心は明らかに上流にある。同じ会社について、2つの見方が同時に成り立っている。

3. 株価は昨秋から水準を切り上げ、振れ幅も大きい

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

株価の月末終値を追うと、荒い値動きが見えてくる。

2025年10月末は5,000円台。11月末も5,100円台で動きは小さかった。ところが12月末に6,300円台へ上がると、2026年1月末は9,300円台、2月末には1万2,600円台まで駆け上がった。昨秋以降の月末終値では、この2月末が最も高い。

そこからの反落も速い。3月末は8,800円台まで下げ、4月末9,400円台、5月末9,000円台、6月末は7,400円台まで押し戻された。

7月末に8,100円台へ戻すと、8月末には再び1万1,100円台へ切り上がる。2026年9月時点の終値は9,700円前後にある。

昨秋の5,000円台と比べれば水準は大きく上がった。同時に、半年のあいだに1万2,000円台と7,000円台を行き来している。ボラティリティ(株価の振れの大きさ)は極めて高い。

背景としては、非鉄金属の市況や為替の変動が意識された可能性が高い。資源を持つ会社の株価は、自社の努力より外部環境に引きずられやすい。ただし単一の要因で説明できる動きではなく、需給や思惑も絡んでいるとみるのが自然だ。

4. 筆者コメント

同社の5期を眺めると、利益の振れ方が株価の振れ方とよく似ていることに気づく。

2022年3月期の当期利益は2,810億円だった。それが2025年3月期には164億円まで落ち、2026年3月期には1,762億円へ戻している。4期のあいだに17分の1まで縮み、そこから10倍以上に戻った計算だ。

これだけ振れる利益を持つ会社に、安定した株価を期待するほうが無理がある。株価の荒さは、事業構造から素直に出てきた結果だと考えられる。

だから見るべきは、振れそのものではなく振れの中心線がどこにあるかだろう。市況が平均的な水準に戻ったとき、この会社はいくら稼げるのか。上流に資本を積んだ効果が、どの時点から利益に乗ってくるのか。短期の値動きを追うより、そちらに目を向けるほうが実りは大きい。