5. 営業利益率11.0%の中身を、粗利と販管費に割ってみる
連結で見ると、2026年12月期上期の売上収益は8,719億円で前年同期比+7.8%。営業利益は958億円、営業利益率は11.0%となった。前年同期の8.6%から2.4ポイントの改善である。
この改善はどこから来たのか。売上総利益は3,472億円で、売上収益に対する比率は39.8%。販管費は2,639億円で、売上収益の30.3%を占める。
販管費の中身を開くと、広告宣伝費は460億円で前年同期の407億円から増えている。販売促進費も295億円と、前年同期の261億円から増加した。いっぽう研究開発費は312億円で、前年同期の314億円からほぼ横ばいだ。
つまり、費用を絞って利益を作ったわけではない。販売に振り向ける費用はむしろ増やしている。それでも利益率が上がったのは、粗利の厚みが戻ってきたからだと考えられる。
5期の売上総利益率を並べると、その回復ぶりが分かる。2021年12月期は40.4%、2022年12月期は35.4%まで落ち込み、2023年12月期は36.6%、2024年12月期は39.2%、2025年12月期は39.6%へ戻した。原材料価格の急騰で削られた粗利を、価格改定と製品構成の入れ替えで取り返してきた流れが読み取れる。
ただし、利益の質には注意が要る。会社によると、1Qにロジスティクス最適化の一環として土地売却を実施し、115億円の売却益を計上している。上期の営業利益の増加額266億円のうち、相応の部分がこの一時的な収益によるものだ。継続的な稼ぐ力の改善と、資産売却による嵩上げは分けて読む必要がある。
通期予想は上方修正された。売上収益1兆8,000億円、営業利益1,900億円、当期利益1,350億円で、前回予想の1兆7,500億円、1,820億円、1,300億円をそれぞれ上回る。
6. 筆者コメント
業種の中での立ち位置に照らすと、花王の数字はやや落ち着かない場所にある。
化学業種の2026年の中央値は、売上総利益率28.4%、営業利益率6.9%、ROE(自己資本利益率)6.6%。花王の2025年12月期は売上総利益率39.6%、営業利益率9.7%、ROE11.3%だった。
粗利の厚みは中央値を10ポイント以上も上回る。ここは完全に消費財の作りだ。ところが営業利益率まで下りてくると、差は3ポイント弱まで縮む。あいだで効いているのが、売上収益の3割に達する販管費である。
化学セクターの銘柄として分類されていても、コスト構造は素材メーカーのそれではない。広告と販促でブランドを支え続けなければ、粗利の厚みは維持できない。この2つの顔は矛盾ではなく、同時に成立している。
花王の決算を読むときは、粗利率と販管費率を別々に追うことをおすすめしたい。片方だけでは、稼ぐ力が本当に変わったのかどうかが判断できない。
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石津 大希