「もし夫婦のどちらかが突然倒れたら、残されたほうは一人で暮らしていけるのか」――そんな不安を抱える65歳以上の夫婦は少なくありません。
65歳以上の者のいる世帯のうち、「単独世帯」33.8%と「夫婦のみの世帯」32.0%を合わせると65.8%にのぼり、要介護者側・介護者側がともに65歳以上という「老老介護」も61.9%に達しています。
この現実を前に、まだ体力も判断力も十分な「自立」段階のうちから、夫婦二人で老人ホーム探しに動き出す人が急増しています。子どもに任せるのではなく、自分たちで情報収集し、資金計画まで組み立てる――そんな「元気なうちの終活」が2026年の新しい主流になりつつあります。
1. 高齢者世帯の65.8%が「単独」か「夫婦のみ」、老老介護は61.9%という現実
厚生労働省『2025年国民生活基礎調査』によると、65歳以上の者のいる世帯(2761万4000世帯)のうち、「単独世帯」が933万5000世帯(33.8%)、「夫婦のみの世帯」が882万8000世帯(32.0%)を占め、合わせて65.8%にのぼります。
かつて主流だった子ども世代との同居世帯は減少を続けており、老後の暮らしを夫婦二人、あるいは一人で維持しなければならない世帯がすでに多数派です。
1.1 老老介護・超老老介護はどこまで深刻か?
同調査では、在宅で要介護者を介護している人自身も65歳以上である「老老介護」の割合が61.9%、双方とも75歳以上である「超老老介護」も37.1%を占めることが明らかになっています。
認知機能や身体機能が低下していく中で、高齢の配偶者がもう一方の介護を一人で抱え込めば、共倒れに至るリスクは決して小さくありません。
2022年から2025年にかけての推移を見ると、60歳以上同士の組み合わせは77.1%から79.0%(+1.9ポイント)、75歳以上同士の「超老老介護」は35.7%から37.1%(+1.4ポイント)へとそれぞれ上昇しており、介護の担い手自身も高齢化が進んでいることがわかります。
65歳以上同士の「老老介護」は63.5%から61.9%(-1.6ポイント)とわずかに低下したものの、依然として6割超の高い水準です。
65歳以上の者のいる世帯のうち「単独世帯」33.8%、「夫婦のみの世帯」32.0%(合計65.8%)
- 60歳以上同士の介護:2022年77.1%→2025年79.0%(+1.9ポイント)
- 65歳以上同士の「老老介護」:2022年63.5%→2025年61.9%(-1.6ポイント)
- 75歳以上同士の「超老老介護」:2022年35.7%→2025年37.1%(+1.4ポイント)
1.2 家計はすでに赤字、備えなければ選択肢が狭まる
総務省「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、実収入が月平均25万4395円である一方、実支出は月平均29万6829円となり、毎月4万2434円の赤字が生じています。年金収入だけでは足りない生活費を、貯蓄の取り崩しで補っているのが実態です。
たとえば、この赤字が65歳から20年間続くと仮定すると、4万2434円×12カ月×20年で単純計算でも1018万円超を貯蓄から取り崩す計算になります。老人ホームの入居一時金や月額費用まで見込むなら、なおさら早い段階からの資金計画が欠かせません。
2. 「自分たちで探す」夫婦が63.4%――LIFULL介護の最新調査で見えた主体の変化
こうした将来不安を見据え、シニア層の行動にも変化が表れています。老人ホーム検索サイト『LIFULL介護』が2026年9月に公開した調査によると、老人ホーム探しの「主体」は世帯形態によってはっきり分かれています。
子どもと同居している世帯では59.4%が「子ども(やその配偶者)主導」で施設を探している一方、夫婦二人暮らし世帯では本人主導33.5%、配偶者主導29.9%を合わせた63.4%が「自分たち二人」主導で施設を探しています。
2.1 なぜ夫婦二人暮らし世帯は「自分たちで」動き始めるのか?
同調査では、要介護認定を受けていない「自立」状態からの問い合わせの割合も、夫婦二人暮らし世帯で46.6%と約半数に達しているのに対し、子どもと同居している世帯では22.7%にとどまり、要介護1以上での問い合わせが58.5%を占めています。
探し始める年齢層でも差は明確で、夫婦二人暮らし世帯では80歳未満での検討開始が約4割を占め、子どもと同居している世帯の2倍にのぼります。子ども頼みで動けなくなってから探すのではなく、体力や判断力が十分なうちに夫婦で選ぶスタイルが広がっていることがうかがえます。
- 「自立」状態からの問い合わせ:夫婦二人暮らし世帯46.6%/子ども同居世帯22.7%(要介護1以上58.5%)
- 施設探しの主体:子ども同居世帯は「子ども主導」59.4%/夫婦二人暮らし世帯は「本人・配偶者主導」63.4%(本人33.5%+配偶者29.9%)
- 80歳未満での検討開始:夫婦二人暮らし世帯40.0%/子ども同居世帯20.0%
「毎月の年金だけで生活費はまかなえている」と考えている夫婦は少なくありませんが、総務省の調査が示す通り、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では実収入より実支出のほうが多く、平均で見ても毎月赤字です。この赤字分は自動的に補填されるわけではなく、預貯金の取り崩しでまかなっているにすぎません。
見落とされがちなのは、老人ホームの費用は「入居一時金+月額費用」の形で、通常の生活費にそのまま上乗せで発生する点です。毎月の赤字を放置したまま高齢になってから資金不足に気づくと、選べる施設の選択肢は一気に狭まります。
持ち家の売却・賃貸化の可能性も含め、夫婦で「二人分」の資金計画を早めに具体的な数字で確認しておくことが、後悔のない住まい選びの前提になります。年金額と施設費用の見込みを紙に書き出してみるだけでも、漠然とした不安はかなり整理できるはずです。
