4. 「きのこの山」と「たけのこの里」もAIで合体

食品業界では、生成AIを商品開発に使う取り組みがすでに始まっています。

代表的なのが、株式会社明治の「きたきたのこのこの山里」です。これは2026年4月に発売された商品で、「きのこの山」と「たけのこの里」を合体させたチョコスナックです。

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出所:株式会社明治

出所:株式会社明治

開発のきっかけとなったのは、明治が2025年に実施したAI「KINOTAKE MOTHER」による嗜好判定でした。

約50万人を対象にした判定では、「きのこ派」が52.4%、「たけのこ派」が43.1%、「どっちも派」が4.4%。この「どっちも派」に向けて、2つの商品を一つにするアイデアをAIとの対話から導きました。

商品は、きのこの山のクラッカーとたけのこの里のクッキーを砕き、ミルク風味のチョコレートや小麦パフと合わせてバー状に成型。最後にビターチョコレートでコーティングしています。

ここではAIが「何となく面白いもの」を考えるだけでなく、既存商品のファン層という具体的なデータを起点に、新しい商品コンセプトへつなげています。

ローソンが「過去の販売実績や市場データを使わず、既存の発想から離れたアイデア」を狙ったのとは、AIの使い方が少し異なります。

5. キリンは「AIペルソナ」で商品開発を支援

キリンホールディングス株式会社では、2023年から「キリン 氷結」などの新商品開発で、生成AIを活用した「AIペルソナ」の検証を開始しています。

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出所:株式会社明治

出所:株式会社明治

AIペルソナは、典型的なユーザー像をAI上に再現する仕組みです。

過去の顧客インタビューなどから得られた情報をもとに、商品コンセプトについてAIに質問し、消費者の反応やインサイトを探る用途が想定されています。

ローソンの今回の取り組みが「人間には出にくいアイデアをAIから引き出す」使い方なのに対し、キリンは「消費者理解を深める」方向です。

生成AIの商品開発では、アイデア創出だけでなく、消費者調査やコンセプト検討などにも活用されています。

6. トレンドウォッチャーのひとこと

大蔵 大輔

生成AIの商品開発で難しいのは、「どこまでAIに任せるか」という線引きです。

ローソンの今回の事例では、AIに自由にアイデアを出させながら、商品として成立させる段階では人間が試作や検証を行っています。AIは大量のアイデアを短時間で出せますが、実際においしいのか、製造できるのか、価格に見合うのかを判断する工程まで任せているわけではありません。

もう一つ難しいのが、消費者側のAIへの受け止め方です。「面白い」「食べてみたい」という反応がある一方、「商品開発までAIに任せて大丈夫なのか」と感じる人もいます。SNSでも、AIそのものへの拒否感を示す反応が確認できます。

企業にとっては、AIを使うこと自体を前面に出せばいいわけではありません。今回のローソンのように、「AIだからこそ生まれた意外性」と「人間が商品として仕上げた安心感」をセットで伝えることが重要になりそうです。

総務省の「令和7年版 情報通信白書」によると、日本では2024年度調査で、生成AIを業務で利用している企業の割合は55.2%でした。企業側で利用が広がる一方、導入時の懸念として「効果的な活用方法がわからない」「社内情報の漏えい等のセキュリティリスク」なども挙げられています。

AIを使うか使わないかという二択から、どの工程をAIに任せ、どこを人間が担うのかを考える段階へ移っているといえそうです。

参考資料

大蔵 大輔