5. 2027年3月期1Qと通期予想に続く、この構造の延長線
直近の数字も見ておきたい。
2027年3月期1Qの売上収益は2兆7,095億円だった。前年同期の2兆2,583億円から2割の増収である。当期利益は2,031億円を計上した。
通期の見通しにも動きがある。2026年3月期の決算発表の時点では、2027年3月期の売上収益を11兆1,000億円と見込んでいた。それが1Q時点では11兆7,000億円に引き上げられている。
期初計画に対して、上期の入り口で6,000億円分を上積みした形だ。もともと強気に置いた計画ではなく、実績を受けて上方に動かした計画である点は押さえておきたい。
前提となる2026年3月期通期も振り返っておく。売上収益は10兆5,867億円、営業利益は1兆1,992億円、当期利益は8,023億円で着地した。当期利益は過去5期で最も高い。
同じ期の3Q累計の時点で、営業利益は前年同期比+26.1%、当期利益は同+48.2%と伸びていた。増収率が+7.0%にとどまるなかでの利益の伸びである。増収そのものよりも利益率の改善が効いた期だったと読み取れる。
そしてその利益率の中心にいるのが、営業利益率16.3%のデジタルシステム&サービスと、前期に営業利益を6割超伸ばしたエネルギーだ。記事前半で見たねじれは、単年の偶然ではなく、直近の決算の流れの延長線上にある。
6. ROEは業種中央値を上回り、自己資本比率は下回る
利益の中身が変われば、資本の使われ方にも跡が残る。
2026年3月期のROE(自己資本利益率)は12.9%だった。前期の10.7%から2.2ポイント上昇している。電気機器の業種中央値は7.7%だから、これを大きく上回る水準だ。
営業利益率も11.3%と、業種中央値の6.7%を上回る。
一方で自己資本比率は43.7%で、業種中央値の62.2%を下回る。電気機器のなかでは自己資本の厚みが薄い部類に入る。
この差はどこから来るのか。同期末ののれんは2兆6,475億円に上る。買収を重ねて事業構成を組み替えてきた結果が、そのまま資産側に載っている。
自己資本比率の低さを、そのまま財務の弱さと読むのは早い。負債を使って投下資本を増やし、より利益率の高い事業を取り込めているのなら、資本効率の面ではむしろ整合的な選択でもある。同期の営業キャッシュフローは1兆6,680億円と潤沢だ。
配当は年間50円で、7期連続の増配となった。配当性向は28.3%で、業種中央値の35.4%より低い。稼いだ利益の多くを、還元よりも事業側へ回している姿が読み取れる。
7. 筆者コメント
利益の重心が動こうとしているのが、直近の日立製作所の姿だ。
過去5期を並べると、ROEはいったん低下したあとに切り返している。当期利益の水準も塗り替えられた。数字の上では、事業の組み替えが一巡し、結果が出始めた局面と位置づけられる。
ここで気をつけたいのは、この会社を「ITに軸足を移した企業」と一言でラベリングしてしまうことだ。
利益の伸び率でいえば、前期に最も勢いがあったのはエネルギーの側だった。デジタルとインフラのどちらかが主役なのではない。両方が同時に効いているというのが、事業別の数字から見える実像に近いだろう。
だからこそ、決算を見るときは連結の売上と利益だけで止めず、事業別の利益と利益率まで下りてほしい。順位が入れ替わる瞬間は、いつも連結の合計の内側で起きている。
参考資料
8.1 免責事項
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石津 大希