第1子の出産を機に仕事を辞める、いわゆる出産退職はかつて一般的でした。それが2015〜19年のデータでは、53.8%が仕事を継続しています。働き方は確実に変わってきました。

本記事では、厚生年金の受給額分布を確認したうえで、第3号被保険者の動向と家事・育児分担の現実から、年金額の男女差がどこから生まれているのかを見ていきます。あわせて、2025年6月に成立した年金制度改正で、働き方と年金のつながりがどう変わろうとしているのかにも触れます。

中島 卓哉

現在年金を受給されている方々の年金額は、30~40年前の社会構造や働き方がそのまま反映された結果です。

当時は出産退社が一般的だったこともあり、今の働き方が受給額の数字に現れるまでにはどうしても長い歳月がかかります。

しかし裏を返せば、現在現役で働いている方やこれからキャリアを築く世代には、将来受け取る年金額を自らの手で増やせる余地が十分にあります。

出産・育児期の就労継続や社会保険の適用拡大、制度改正をどう味方につけるかで、手にする未来の安心は大きく変わります。

まずは現実のデータを冷静に見つめ、自分に合った選択をしていきましょう。

1. 厚生年金で月額30万円超は0.12%。女性は482人

「老後は現役時代の年収に応じた年金がもらえる」と楽観視するのは危険かもしれません。厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金分を含む)の平均受給額は月額15万289円。男女別では男性が約17万円、女性が約11万1000円と、大きな開きがあるのが現状です。

1.1 厚生年金の受給額ごとの受給権者数

厚生年金の受給額1/5

厚生年金の受給額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

さらに詳しく受給額の分布を見てみましょう。

  • 20万円以上: 全体の18.8%(5人に1人以下)
  • 30万円以上(年間360万円超): わずか0.12%

つまり、月額30万円以上の年金を受け取れるのは「選ばれたほんの一握り」に過ぎません。全体の約8割は月20万円未満で生活をやりくりしており、iDeCoや積立投資といった自助努力がいかに不可欠であるかを物語っています。

2. 第3号被保険者は約641万人。女性は5年連続で減少

国民年金にはいくつかの加入区分があります。その一つである「第3号被保険者」は、厚生年金(公務員などが加入していた旧共済年金を含む)に加入している第2号被保険者の配偶者で、一定の収入条件を満たす人が対象です。

令和6年度末時点では約641万人が該当しています。

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をみると、女性の第3号被保険者の人数は5年連続で減少していることがわかります。

第3号被保険者の総数:約641万人

  • 男性:約13万人(+3.1%)
  • 女性:約628万人(▲6.7%)

大きな特徴は、本人が保険料を負担しなくても国民年金に加入扱いとなる点です。これは、厚生年金制度全体でその費用を負担する仕組みになっているため、配偶者個人の保険料が増えるわけではありません。加入手続きは本人ではなく、配偶者の勤務先を通じて行われます。

また、第3号被保険者の多くが女性である背景には、日本の就業構造が影響しています。

2.1 「出産退職」から「継続就業」へ。第1子出産をめぐる女性の就業変化

厚生労働省が公表する「令和7年版厚生労働白書」をみると、第1子出産をめぐる女性の就業変化が見えてきます。

かつては第1子出産を機に離職する「出産退職」が一般的でしたが、2015〜19年のデータでは53.8%が仕事を継続しており、過半数を超えました。

しかし、仕事を辞めずに済んでも、育児との両立のために「パート・派遣」といった非正規雇用を選択するケースが依然として多いのが実情です。これが結果として、将来受け取る厚生年金額の低迷や、第3号被保険者にとどまる要因の一つとなっています。