個人投資家の間では、9月末を権利確定日とする銘柄への関心が高まっています。

3月期決算の企業は、中間期にあたる9月末を基準日として配当や株主優待を実施するケースが多く、「東京メトロ」の愛称で親しまれる東京地下鉄<9023>もその1社です。

同社は都心部の地下空間を中心に路線網を持つ地下鉄事業者で、郊外まで路線を延ばし沿線に住宅地や商業施設を開発する私鉄と異なり、不動産事業を大きく広げにくい事業構造にあります。

そのため売上・利益の大半を運輸業(鉄道運賃収入)が占めるのは同社の事業モデル上織り込み済みの構図ですが、今回の決算で注目したいのは、その運輸業がどれだけの費用増加圧力にさらされているかという中身です。

7月31日に発表された2027年3月期第1四半期決算からひも解いていきます。

1. 最新決算からひも解く東京メトロの強み

2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の連結業績は、次の通りです(前年同期比)。

  • 営業収益:1,090億4,900万円(+2.8%)
  • 営業利益:277億8,200万円(▲3.9%)
  • 経常利益:247億2,200万円(▲4.9%)
  • 四半期純利益:168億1,100万円(▲24.7%)

営業収益の増収分(+29億円)に対し、営業費が40億円増加したことで、営業利益は11億円の減益となりました。

営業費増加の内訳は、人件費+10億円、経費+22億円(うち修繕費+8億円・外注費+5億円は労務費・資材価格の上昇、電気料+2億円は中東情勢の影響、撤去費+2億円は駅空調設備更新工事によるもの)、減価償却費+7億円です。人件費や修繕費だけでなく、電気料についても中東情勢を背景に上昇していることが、決算説明資料で示されています。

純利益の下げ幅(▲24.7%)が経常利益(▲4.9%)より大きくなっているのは、前年同期の特別利益に「退職給付制度改定益」64億800万円が計上されていたためです。今回はこの一時的な利益がなかった反動で、減益幅が拡大しました。

通期(2027年3月期)の会社予想は、営業収益4,372億円(+3.5%)を見込む一方、営業費の増加(人件費+68億円、経費+128億円、減価償却費+23億円など)により営業利益814億円(▲9.1%)、経常利益690億円(▲12.9%)、純利益500億円(▲15.3%)と、増収減益の見通しを据え置いています。

会社側はこの予想について、4月28日公表時点から「概ね順調に進捗しており据え置き」としています。

2. 運輸業が売上の9割超、利益の8割超を占める構造

同社は「運輸業」「不動産事業」「ライフ・ビジネスサービス事業」の3つの報告セグメントを持ちます。

2027年3月期第1四半期の外部顧客向け売上高でみると、運輸業が989億7,100万円で全体の90.8%、セグメント利益でも235億4,100万円と3セグメント合計(277億4,200万円)の84.9%を占めています。

運輸業単体の第1四半期業績は、営業収益993億400万円(+1.9%)、営業利益235億4,100万円(▲7.1%)でした。旅客運輸収入自体は増えているものの、上記の費用増加の影響を最も大きく受けているのが運輸業だとみられます。

一方、不動産事業(営業収益37億6,400万円、+5.6%、営業利益15億400万円、+10.2%)とライフ・ビジネスサービス事業(営業収益69億7,500万円、+11.0%、営業利益25億8,200万円、+25.1%)は、いずれも増収増益でした。規模は運輸業に及びませんが、非運輸分野が収益を下支えする形になっています。