4. 体力の限界と認知症介護――老老介護化するペットのお世話

費用の問題以上に飼い主を追い詰めるのが、体力的な限界と精神的な孤立です。

環境省のパンフレットでも指摘されている通り、シルバー世代は持病を抱えていたり、免疫力や体力が落ちて病気が重くなりがちだったりするため、ペットの世話そのものが大きな負担になりやすいとされています。

中型〜大型犬が寝たきりに近い状態になった場合、体重のある犬の体位を数時間おきに変えたり、排せつのたびに抱きかかえたりする作業は、高齢の飼い主にとって腰や膝への負担が大きく、無理を重ねれば自身の通院が必要になる「共倒れ」のリスクも高まります。

老犬も人間と同じように認知機能の低下が見られることがあり、昼夜が逆転して夜間に鳴き続けるようなケースでは、飼い主の睡眠が奪われ、精神的にも消耗しやすくなります。

「近所迷惑になっているのでは」というプレッシャーから、誰にも相談できずに孤立してしまう高齢の飼い主も少なくありません。

5. 限界を迎える前にできる備え――保険・信託・相談先の確保

こうした負担が重なる前に活用したいのが、公的な情報や制度です。

環境省のパンフレットでは、飼い主自身の入院や体調不良に備え、「一人で抱え込まず、周りの人に相談しましょう」としたうえで、家族や友人、いつも顔を合わせる近所の人、かかりつけの動物病院など、日頃から頼れる先を確保しておくことを勧めています。ペットホテルやペットシッターについても、いざというときに慌てないよう、事前に探して短期間試しに利用しておくことが提案されています。

より長期的な備えとしては、自分自身が最後まで世話を続けられなくなった場合に備え、あらかじめ次の飼い主を決めておいたうえで、飼育費用とともにペットを託す仕組み(いわゆるペット信託など)も選択肢の一つとして紹介されています。

また、老犬ホーム・老猫ホームのように、自宅での介護が難しくなった場合の預け先を、必要になってから探すのではなく、元気なうちから候補を調べておくことも、環境省のパンフレットで呼びかけられている備えの一つです。

ペット保険についても、シニアになってからの新規加入はハードルが上がりやすいため、若く健康なうちに、将来の医療費・介護費を見越して備えておくことが現実的な選択肢になります。

6. まとめにかえて|「頼れる外部の力」をリストアップしておく

「最後まで自分の手で看取る」という愛情や責任感は尊いものですが、気力や愛情だけで乗り切れるほど、年金生活における老犬介護の現実は甘くありません。

シニア期を迎えた愛犬・愛猫と暮らす方は、まず総務省統計局の「家計調査」などで自分たち世帯の家計収支の目安を確認しつつ、かかりつけの獣医師や自治体の窓口、ペットホテル・ペットシッターといった「頼れる外部の力」を、早い段階でリストアップしておくことをおすすめします。

それが結果として、愛するペットと飼い主自身の双方を守ることにつながります。

熊谷 良子

今回取り上げた老犬ホームの年間利用料金には、入所金・保証金が含まれていません。

同じ「老犬ケア」の調査では、入所金の平均は15万7545円、保証金・医療費の平均は8万896円という数字も示されており、初期費用まで含めると準備しておきたい金額はさらに膨らみます。

「自宅で最期まで看る」か「施設に預ける」かは、費用だけでなく、飼い主自身の体力や住環境によっても左右される選択です。

どちらを選ぶにせよ、いざというときに慌てて施設を探すのではなく、元気なうちから複数の候補に見学や資料請求をしておくと、料金体系や契約解除の条件などの違いを比較しやすくなります。

年金生活の家計管理と同じ感覚で、ペットの「もしも」に備えた情報収集を、早めに始めておきたいところです。

参考資料