「人生100年時代」と言われる中、長生きしているのは人間だけではありません。

一般社団法人ペットフード協会の調査によると、犬の平均寿命は14.62歳まで延び、7歳以上のシニア期に入る犬は全体の56.0%を占めています。

一方で、飼い主自身も年齢を重ね、年金収入で暮らす世帯が増えています。

総務省統計局「家計調査」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、平均的な家計収支だけで毎月4万円超の赤字が生じているのが実情です。

そこへ、シニア犬特有の医療費や介護費用が重なるとどうなるのでしょうか。

アニコム損害保険の調査では、15歳の犬の年間診療費は1歳の犬の約4.7倍に達するというデータもあります。

本記事では、年金生活における老犬介護の実態と費用、そして飼い主自身が限界を迎える前にできる備えについて、一次資料をもとに整理します。

1. シニア犬の医療費は1歳時の4.7倍に――年金家計を直撃する現実

ペットには人間のような公的医療保険制度がなく、動物病院での診療費は原則として全額自己負担です。

アニコム損害保険株式会社が公表している「アニコム家庭どうぶつ白書」によると、犬の年間診療費は年齢とともに右肩上がりに増加し、15歳の犬の年間診療費は、最も低い1歳の犬の年間診療費に比べて約4.7倍に達しています。

【グラフ】犬の年齢別・年間平均診療費(1歳と15歳の比較)1/2

犬の年齢別・年間平均診療費(1歳と15歳の比較)

出所:アニコム損害保険株式会社「アニコム家庭どうぶつ白書」をもとにLIMO編集部作成

  • 犬の年間診療費(1歳時):平均5万956円
  • 犬の年間診療費(15歳時):平均23万9810円(1歳時の約4.7倍)
  • 老犬ホームの年間利用料金(全国平均):56万6407円

腎臓病や心臓病、がんといった慢性疾患にかかれば、毎月の薬代や定期検査代だけで数万円が消えていき、手術となれば一度に数十万円の出費を覚悟しなければなりません。

足腰が弱って寝たきりに近い状態になった老犬には、おむつやペットシーツといった消耗品費、嚥下機能が落ちた犬向けの流動食・療養食、床ずれ防止マットや歩行補助ハーネスといった介護用品費も継続的にかかります。

自宅での介護が難しくなり、老犬ホームなどの施設に預ける場合の費用も見過ごせません。

老犬ホーム・老猫ホーム情報サイト「老犬ケア」が全国の老犬ホームを対象に行った調査(2016年時点、小型犬・10歳をモデルケースとした集計)では、年間利用料金の全国平均は56万6407円(入所金・保証金は別途)となっています。2ヶ月に1度の年金支給でやりくりする生活の中で、これだけの現金支出は決して小さくありません。

2. 高齢夫婦無職世帯は毎月4万円超の赤字――介護費用は「想定外」の支出

このような医療費・介護費が、そもそも年金生活の家計にどれほどの負荷になるのかを見てみましょう。

総務省統計局「家計調査(家計収支編)」の2025年(令和7年)平均によると、高齢夫婦無職世帯(夫婦のみ、世帯主が65歳以上で無職の世帯)の実収入は月額25万4395円、可処分所得は月額22万1544円、消費支出は月額26万3979円で、差し引き毎月4万2434円の赤字となっています。

また、同じく総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)」の2025年(令和7年)平均によると、世帯主が65歳以上の無職世帯の平均貯蓄現在高は2494万円で、前年(2560万円)から66万円(2.6%)減少し、6年ぶりのマイナスとなりました。物価上昇に年金の伸びが追いつかず、生活費の不足分を貯蓄の取り崩しで補っている実情がうかがえます。

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出所:総務省統計局「家計調査(家計収支編)」「家計調査報告(貯蓄・負債編)」2025年(令和7年)平均結果の概要をもとにLIMO編集部作成

出所:総務省統計局「家計調査(家計収支編)」「家計調査報告(貯蓄・負債編)」2025年(令和7年)平均結果の概要をもとにLIMO編集部作成

  • 実収入(月額平均):25万4395円
  • 可処分所得(月額平均):22万1544円
  • 消費支出(月額平均):26万3979円
  • 不足額(赤字額、月額平均):4万2434円
  • 平均貯蓄現在高(65歳以上無職世帯):2494万円(前年比66万円減、6年ぶりの減少)

ここで注意したいのは、この家計調査の消費支出には、通常想定される食費・住居費・医療費などは含まれているものの、要介護状態になった場合の特別な医療費・介護費用までは反映されていないという点です。

人間の介護と同様、ペットの老いも「平均的な家計」の枠外から突然やってくる支出であり、貯蓄を切り崩す形で対応せざるを得ないケースが少なくありません。

3. 筆者からのコメント

熊谷 良子

私たち人間と同じく、ペットの医療費・介護費は「いつ、いくらかかるか」が読みにくい支出ですね。

環境省が公表しているパンフレット「共に生きる 高齢ペットとシルバー世代」でも、シルバー世代の飼い主に向けて、体調を崩したときや入院が必要になったときに備え、家族・友人・かかりつけの動物病院など「頼れる相手」をあらかじめ探しておくことや、ペットホテル・ペットシッターを一度試しに利用してみることが呼びかけられています。

「最後まで自分ひとりで看る」という覚悟は尊いものですが、それが「誰にも相談できない孤立」につながってしまうのなら、寂しいことです。

年金額や貯蓄額を確認するのと同じように、シニア期に入った愛犬・愛猫の医療費についても、かかりつけの獣医師さんに一度、大まかな見通しを聞いておくことをおすすめします。