4. 請求の前に押さえておきたい注意点が3つある
労災保険は事業主が保険料を負担する制度ですが、請求するのは労働者本人です。押さえておきたい点を整理します。
4.1 請求するのは事業主ではなく労働者本人になる
労災保険の給付は、労働者本人(死亡の場合は遺族)が労働基準監督署に請求します。
請求書には事業主の証明欄がありますが、事業主が証明しない場合でも請求はできます。その理由を記載して提出すれば、労働基準監督署が調査したうえで判断します。
4.2 健康保険で受診してしまった場合は切り替えが必要になる
仕事が原因の負傷や疾病に健康保険を使うことはできません。
誤って健康保険で受診した場合、あとから労災保険への切り替えが必要になります。医療機関で切り替えができないときは、いったん医療費の全額を支払い、労災保険へ請求し直す流れになることもあります。受診する時点で、仕事が原因である旨を医療機関に伝えておくことが大切です。
4.3 請求には時効がある
労災保険の給付を受ける権利には時効があります。療養(補償)等給付や休業(補償)等給付は2年、障害(補償)等給付や遺族(補償)等給付は5年とされています。
体調が落ち着いてから請求しようと考えているうちに期限が近づくことがあるため、早めに労働基準監督署へ相談しておきましょう。
5. 労災かどうかの判断は、自分でしないほうがよい
家計の相談では、労災にあたるかどうかを自分で判断してしまい、請求しないまま治療費を負担している方に出会うことがあります。
業務中の負傷だけでなく、通勤災害や、複数の事業所での労働時間を合算して判断する複数業務要因災害も対象です。長時間労働や強い心理的負荷による精神障害が労災と認められる場合もあります。
労災にあたるかどうかを決めるのは労働基準監督署です。勤務先が労災として扱わない場合でも、本人から直接請求できます。判断に迷う段階で、まず相談しておくことが大切です。
6. まとめにかえて
労災保険は、業務上の事由や通勤による負傷・疾病・障害・死亡について給付を行う制度です。
休業した場合は4日目から給付基礎日額の60%が支給され、休業特別支給金20%と合わせて8割になります。障害が残った場合は等級に応じて313日分から56日分、死亡した場合は遺族へ245日分から153日分の年金が支給されます。
制度に頼りきりにするのではなく、収入が途切れたときに耐えられる預貯金を平時から準備しておくことが欠かせません。そのうえで、仕事が原因の負傷や疾病には労災保険があることを知っておくと、判断を誤らずにすみます。
参考資料
和田 直子